立憲民主党 環境エネルギーPT座長 
田嶋要


 政府は、GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議の取りまとめに向けて、原発の運転期間の延長、次世代型原発への建て替え・新設、安全性を軽視した再稼働の加速といった原発回帰政策に大きく舵を切ろうとしている。これは、東京電力福島第一原発事故後、政府が一貫して掲げてきた原発依存度を低減するとのエネルギー政策を事実上放棄し、ロシアによるウクライナ侵攻の中で原発が武力攻撃の対象になる国家安全保障上のリスクとなる重大な事実を無視するものである。

 原発の40年運転制限制は、中性子照射による脆化の評価等の科学的事実を踏まえ、老朽化による安全上のリスクが万一にも重大事故を招かぬよう、与野党の協議を経た国会の合意である。今回の政府の運転期限の延長方針は、原子力依存から脱却を求める国民の意思にも背くものであり、撤回を求める。また原子力規制委員会は、委員会設置法の目的を再認識し、二度と「規制の虜」に陥ることのないよう厳格に責務を全うすべきである。

 次世代型原発も絶対安全とは言えず、また、使用済み核燃料の処分問題を抱える従来型の改良でしかなく、開発・建設コストも膨れ上がっている。次世代型原発への建て替え・新設は、原発依存を長期に続けることを意味し、「可能な限り原発依存度を低減する」と政府自ら決めたエネルギー基本計画に反し、断じて認められない。今後必要な研究開発や人材育成は原発の廃炉に向けて集中すべきであり、早急に技術者確保に力を入れなければならない。

 ウクライナで顕在化した武力攻撃、テロ等、新たなリスクへの対応が原子力発電所の喫緊の課題となる中で、原子力発電所の再稼働は、こうした様々なリスクを踏まえた実効性ある避難計画、地元合意が大前提であり、より慎重で厳しい姿勢を求める。

 福島の復興は道半ばである。それにもかかわらず、電力需給逼迫、電力価格の高騰などといった利用側面の課題を国民に強調することで、安全軽視に傾く原子力政策の方針転換は断じて容認できない。コストの高い原発によらずとも、省エネルギーの徹底、再生可能エネルギー普及加速とそれを可能にする送電網の整備、蓄電技術の導入などにより、安定したエネルギー供給は十分可能である。国民のいのちと暮らしを守る観点から、地域分散型エネルギー社会の構築に向けて、予算と人材を結集することを求める。

【談話】岸田政権による原発回帰政策の撤回を求める(2022年12月13日).pdf