衆院憲法審査会が4月20日に開かれ、立憲民主党から吉田はるみ、階猛、中川正春の3議員が憲法審査会の進め方に触れ「これまでの議論の経過を踏まえて、国民投票法の改正、議員任期の延長に関する議論を建設的に行っていきたい」と表明しました。

■吉田はるみ議員

 吉田議員は、3月30日、4月6日、4月13日、そして本日20日と、審査会で憲法9条が議論されている点について「いったいどれだけの国民が知っているのか」「国民不在で議論されていることに違和感を持つ」と議論のあり方に疑問を呈しました。

 G7各国の国会のテレビ中継を調べた吉田議員は、「イギリスでは公共放送BBCのパーラメントチャンネルがあり、常時放映し、国会の議論を編集せずに中継している。また、アメリカ、ドイツ、そしてカナダでも、テレビ中継されている」と報告。「やはり、NHKのテレビ中継をし、広く国民にこの議論を開き、見て頂くべき」と提案しました。

 最後に最近の審査会の印象について「自分たちの意見に沿わない発言を冷笑したり、こばかにする雰囲気を感じる」と問題視しました。「互いを軽んじるようなやり方は、この国の最高法規である憲法を論じる、この憲法審査会にはふさわしくない」と述べ、「互いを尊重し、傾聴する姿勢」を全委員に求めました。

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■階猛議員

 階議員は冒頭、同日の審査会が自由討議であるにもかかわらず、9人の発言者中、立憲民主党議員を除く8人が憲法9条を議論した点に触れ、「何か示し合わせて各党が9条の話をしているような気もする。他方、わが党は、これまでの議論の経過を踏まえて、国民投票法の改正、議員任期の延長に関する議論を建設的に行っていきたい」と表明しました。立憲民主党が取りまとめ、3月2日の審査会で提案した国民投票法改正案の背景にある憲法上の論点について説明しました。

 階議員は、ネット社会、デジタル社会によって情報の発信、流通、入手が飛躍的に容易かつ活発になった反面、刺激的なコンテンツがあふれるアテンション・エコノミー、受け手の関心に合わせてコンテンツを配信するマイクロターゲッティング、偏った意見・知識・情報のみに接触することによるフィルターバブル・エコーチェンバーといった事象が生じていると指摘しました。

 その結果、「内心の自由(憲法19条)が知らぬ間に侵されたり、選挙や国民投票など民主主義の根幹たる制度に影響を及ぼしたり、個人の人格的自律が脅かされたり、外国勢力による主権侵害のおそれが高まるなど重大な憲法問題が生じている。また誹謗中傷やフェイクニュースの流通、本人の意思に反した個人情報の拡散など、いわば『悪化が良貨を駆逐する』傾向が強まり、『表現の自由市場』が想定した世界とはまったく異なる状況となっている」と警鐘を鳴らしました。

 これらの問題を解決するため、「自己情報コントロール権」「情報アクセス権」「情報環境権」の3つの権利を保障するべきだと提案しました。「これらの人権の中には、法律で一部保障されているものもあるが、より保障を充実・強化するために、憲法上の権利として位置付けるかどうか、位置づける場合に解釈上の権利とするか、明文上の権利として位置づけるかどうか、を考える必要がある」と説きました。

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■中川正春議員

 中川議員は、「議員任期の延長」議論の前提として「どのような状況であれ、出来得る限りの国会機能の維持は必要だ」と述べました。その上で、「任期が切れた状況で、選挙をすることが困難な状態が生じた時、どのように対応するか」が問われていると指摘しました。

 まず必要になる選挙困難事態の定義に関して、「100%の公平性を前提にした選挙の環境を言うのか、それとも、多少の公平性は犠牲にしても、選挙可能と見なすのであれば、それが具体的にどの程度のことを言うのか、期間・広域性・事態の深刻度などについて決めておかねばならない」と指摘しました。

 次の課題として、参議院の緊急集会に関して、「(1)解散時以外の任期満了時にも類推適用ができないか、(2)70日の期間限定を少しでも緩和する解釈はできないか、(3)審議できる案件が、内閣提出の案件及びこれに関連する案件に限られるとする限定を緩和できないか、等の諸点について検討が必要」だと説き、「参議院での議論や憲法学者の見解も踏まえて、憲法解釈に結論を見出すべき」と提案しました。

 最後にもう1つの重要な論点について、「権力者にとっては、自分に都合のいい理屈をつけながら、このような制度を利用して、恣意的に選挙を先延ばししたり、選挙自体を避けることも出来る可能性が出てくる。これを避けるためには、選挙困難事態の政治部門による認定をチェックする仕組みについて、工夫をすることも大切な議論になってくるのではないか」と強調しました。