衆院経済産業委員会で4月26日、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源推進法案)の採決が行われ、立憲民主党は反対をしました。
採決に先立ち、反対の立場で討論に立った菅直人議員は、2011年の東京電力福島第1原発事故の時、内閣総理大臣としてこの国に暮らす人の命と財産を守る責任を持つ立場の人間だったと当時を振り返り、「刻一刻と変化していく事故の状況の報告を受け、東日本壊滅、日本壊滅を覚悟した。どんなに安全基準を厳しくしてもどんなに事故を起こさないように努力しても、地震国である日本国でこの先何十年にもわたり原発が地震や津波の被害に遭わない保証はない。私は原発事故の恐怖を身をもって感じた。だから私は脱原発に舵を切った」と述べました。当時の菅総理の決断を多くの国民が支持し、自民党も脱原発には反対せず、約2年にわたって原発による発電がゼロだった時期もあったことに、「日本のどこにも大停電は起きなかった。原発ゼロでもやっていけることはすでに実証されている」と強調しました。
菅議員は、東京電力福島第1原発事故を教訓に定められた、原子力規制の柱である(1)重大事故対策の強化(2)バックフィット制度の導入(3)40年運転規制(4)規制と利用の厳格な分離――について、変更を迫る立法事実は存在しないと断じ、「ウクライナ戦争を受け、世界は再生可能エネルギーへのシフトを加速化している。武力攻撃の目標となる原発は存在自体が国家安全保障上のリスクであるとの認識も広がっている」と指摘。今回の原子力基本法改正は、原子力産業への支援が国の責務として詳細に規定され、原発依存を固定化するものになっていると述べ、「地球温暖化は深刻な問題で、再生可能エネルギーを推進すべきなのに自民党・公明党の政権はそれを怠ってきた。そのツケを、原発を再び推進することで払おうとしている。これがこの法律の本質ではないか。子どもや孫に借金を残してはいけないのと同じように、子どもや孫に原発を残してはいけない。私は未来への責任を持ちたい。だからこそ、この法律には反対だ」と表明しました。
同日午後、岸田総理出席のもと行われた質疑では山岡達丸、田嶋要両衆院議員が質問に立ちました。
山岡議員は、(1)原子力利用に関する基本的な考え(2)原子力施設の廃炉を含め、長期にわたる原子力の安全にかかる人材の確保、技術の維持・強化に向けた考え(3)廃炉時に大量に出る低レベル放射性廃棄物の処分先等の課題についての考え――について質問しました。山岡議員は、廃炉時に大量に出る低レベル放射性廃棄物の処分について、「少なくとも24基の廃炉が決まっている中、先行きが十分に決まっていない。廃止措置を進めていくのであれば、早急に進めるべきではないか」と指摘。これに対し岸田総理は、「解体等が今後本格化する見込みであり、それに応じて処分地も決定していくものであると承知している。原子力事業者が廃炉の責任を貫徹できるよう低レベル放射性廃棄物の処分地の決定を含め、国としても事業者へのサポートや指導をしっかり行っていきたい」などと答弁。山岡議員は「これからやっていくということだと思うが、利用することを決めて、一方で国として責任を持って検討すべきことはまだまだあるのではないか。議論は尽きない」と述べました。
田嶋議員は、同日が、チェルノブィリ原発事故発生の日から37年にあたること、その事故当時に中曽根元総理が「日本は心配ない」と断言していたことに触れ、「誰にとっても絶対ということはない。歴史を繰り返してはいけない。歴史の審判は後々下るが、総理にはその覚悟をもってご判断いただきたい」と要請。
その上で、「原発が日本の国土になくても大丈夫なら、ない方がいいと考えているか」と岸田総理に迫りました。これに対し岸田総理は、「世界的エネルギー危機が生じている中、エネルギーの安定供給と脱炭素をいかに両立するかが国家的な課題になっている。わが国が置かれている条件の中で選べる選択肢は限られている。その中で原子力は大切な選択肢」「未来を考えた時に社会のDXを進めていかなければいけない。電力の消費量は格段に拡大していく。こういった未来も考えた時にエネルギーの選択肢の1つ」などと答弁。田嶋議員は「国民には伝わりにくい。(岸田総理は)一方で原子力依存はできるだけ下げていきたいともおっしゃっている。私は明日原発なしと言っているわけではない。今回新増設も含めてのめりこんでいく印象を多くの国民が持っている。原発がなくていい社会を目指しませんか」と提起しましたが、岸田総理はこれには答えず、田嶋議員は「目指すべき社会の方向をしっかりと総理に指し示してほしいがはっきりしない。総理は原発をない社会は目指さないということをはっきり確認させていただいたと私は理解した」と述べました。