4月に行われる衆院島根1区の補欠選挙(4月16日告示、28日投開票)は、旧統一教会との関係、セクハラ疑惑の問題などで説明責任を果たさないまま亡くなった細田博之前衆院議長の死去に伴うものです。自民党派閥の裏金問題、金権政治など政治改革が求められるなか、「国民の声が届く政治の実現を。島根から変える!」と訴え、選挙に臨む亀井亜紀子さんに話を聞きました。

選択肢をつくりたい

 親が政治家だったので政治の話題は身近にありました。ただ私自身は「2世」と言われるのも面白くないし、政治家になる気はありませんでした。

 政治家を志したきっかけは小沢一郎さん。当時(2007年)の民主党代表の小沢さんと面談をして、一度はお断りしましたが、再度一対一でお会いし、いろいろお話をして挑戦してみようという気持ちになりました。

 本当は公募などで多様な人材が出馬できればいいのですが、島根は自民王国でしがらみが多いなか、勝つ可能性の低い選挙に出ようという人はなかなかいません。最初に切り拓くのは、私のような人間かなと思い、また、国政では女性の候補者もいない地域でしたので「選択肢をつくりたい」と決意しました。

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ダメなものはダメ

 細田前衆院議長は存命中、旧統一教会との関係やセクハラ疑惑が指摘されながら公の場で説明をせず逃げ回り、覇気のない記者会見の様子などを見た県民からは「恥ずかしい」「今度は亀井さん頑張って」という激励をたくさん頂きました。

 今回の補欠選挙では候補者は代わりましたが、自民党が今までしてきたことに対してきちんと審判を下す。ダメなものはダメ、悪いことは悪い。島根県民の皆さんには良識、見識を持って判断していただきたいです。

 島根県選出の国会議員は3人で、しかも大物ばかりでしたから、これまで有権者がふつうに会える機会はほとんどありませんでした。地元に帰ってきていることをメディア報道で知る。さまざまな業界関係者とは交流するけれど、それ以外の人はほとんど接点を持てない。他県のことは詳しく知りませんが、島根県の場合、自民党は土木・建設関係の企業と密接な関係にあります。いわゆる土建屋さんは男性社会なので、自民党という組織は男性が力を持っています。女性はたとえ地元の集会に参加しても、出入り口付近に座っているだけで発言しない、という土地柄です。でも女性だけで集まると結構言いたいことを言いますから、やっぱり女性でないと聞き出せない声が必ずある。そういう声を私が代弁できたらと思っています。

開かれた政治で空気を変える

 活動していて特に感じるのは、「女性が疲れている」ということです。先日、保育園に勤めている方から「お母さんたちが疲れていてかわいそうだ」と言われました。働きながら子どもの送迎、食事を作るなど、多くの家事を担っているのが女性なので追い詰められている。ワーク・ライフ・バランスの改善、男女を問わず働き方改革が必要です。

 政府の子育て支援策については、集会に参加してくださる女性たちから「ありがたいけれど、それで子どもが増えるとは思わない」と言われます。子育て支援と少子化対策は別ですから、支援金制度だけで子どもが増える、あと一人産みますとはなりません。結婚して子どもが欲しいと言っていたけれど、学校の先生になった途端に「働きながら子どもは無理」と娘が言い出した、という女性にも会いました。

 地域で暮らす皆さんと直接対話をしたい。屋内での集会に加え、昨年はたまたま通りかかった人が気軽に参加できるようにと、スーパーの駐車場や公園にのぼりやパラソルを立てて屋外で開催する青空集会を始めました。誰もが言いたいことを言える、声を上げやすい環境をつくり、受け止めた声を私が国政に届ける。開かれた政治で空気を変える。そういう道筋を切り拓きたいと思います。国政をもっと身近に感じてもらうことが大事で、それが島根における新しい政治の一歩だと思っています。

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「食」「教育」「平和」が国づくりの基本

 私は「食」と「教育」と「平和」の3本柱が国づくりの基本だと訴えています。国際社会が他国を支援する時、まず紛争を解決し、食料を支援し、学校をつくります。究極的には戦争を起こさず、食料を確保し、教育(人づくり)をすることが、国政の要です。

 例えば食について、夏休みになると学校給食がなくて食事に困るという子どもや、家庭の格差が心の負担になって不登校になる子どもがいる。みんなが格差を感じずに、お腹いっぱい食べて学校に行ける、そういう当たり前の状況を作りたいと思います。

 女性の声を届けるという意味では、「子どもに安全・安心なものを食べさせたい」と考え、食に対する関心の高い女性は多いと感じます。私は学校給食のオーガニック化にも力を入れています。それはぜひ進めたい。「島根の学校給食は安心・安全」だと広く知られれば、食物アレルギーを持つ子どもの親などが「島根の給食で育ててみようかな」と移住してくるケースもあるのではないでしょうか。

 オーガニック化を進めるもう1つの理由はトキです。出雲のトキ分散飼育センターでは、佐渡(新潟県)のトキを預かってふ化させています。これまでは育てて佐渡へ返さなければならなかったのですが、2030年をめどに出雲での放鳥が実現する見込みです。放鳥したあと自然界で餌をとって生きられるようにするためには、有機栽培を広げないといけません。

 また、トキが生息していることを知って全国から野鳥愛好家が写真を撮りに来たり、中山間地で宿泊したりと、観光面で広がりが出てくるのではないかと期待しています。自然を活かしながら持続可能な地域づくりを進めていきたいです。

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自民党国に新しい風を

 島根県は鳥取県の次に人口が少なく、参院は合区ですから衆参の選挙区では3人しか国会議員を選べません。その国会議員が半世紀以上、衆院は1区が細田吉蔵さん・博之さん親子、2区が竹下登さん・亘さんの兄弟、参院は青木幹雄さん・一彦さん親子と、竹下家、細田家、青木家のトライアングルが続いてきました。自民党の男性、3つの家族というカテゴリーからしか国会議員が選出されないと、当然政策にも偏りが出ます。昨今、大物政治家が亡くなり島根県は変動期にあります。

 今回の補欠選挙では、島根が変わるきっかけを作りたい。自民党のスキャンダルが続く中で、県庁所在地がある島根1区で非自民が勝つことは大きな一歩になりますし、旧統一教会や派閥パーティーの裏金問題について象徴的な選挙区です。島根県はずっと自民王国ですが、新しい風を起こしたい。島根から日本を変える。その決意で臨みます。

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