衆院地域活性化・子ども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会が4月18日に開会され、「支援金」という名で事実上の負担増を規定する政府提出「子ども・子育て支援法改正案」に対し、立憲民主党は財源を変更する修正案を提出しました。

【立憲民主党】 閣法「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」 修正案について.pdf
【立憲民主党】「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案に対する修正案」(条文).pdf

■修正案趣旨説明 藤岡隆雄議員

子ども・子育て支援法改正案 藤岡たかお

 藤岡隆雄衆院議員が、立憲民主党の修正案について趣旨説明を行いました。藤岡議員は閣法に関し、「子ども・子育て支援施策を強化する内容については不十分であるものの、かねてより立憲民主党が求めてきた政策が盛り込まれている部分もあり一歩前進と評価」しました。

 しかしながら、その「財源確保」のために新設される、公的医療保険の保険料に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援金制度」については、「深刻な問題を抱えている」と強調。保険料で徴収しながら、保険給付でない事業に拠出するのは「これまでの(政府の)説明を聞いても一線を越えていると評価せざるを得ない」と断じました。

 また、「子ども・子育て支援金制度」では、子育てを担う「現役世代の手取りの減少」を招きかねず、事業主の負担も増加するため「賃上げブレーキ」になるとともに、「正規雇用の抑制」につながる可能性も指摘。支援金制度は、「その名に反して子ども・子育て支援に逆行するなど本末転倒の財源確保策」だと断じました。

 そのため立憲民主党は、支援金に代わる財源として「日銀が保有するETF分配金収入の活用」を提案したと修正案の趣旨を説明。現在、日本銀行が保有するETFは時価総額にして約70兆円とされ、分配金は年1兆円を超えているとして、「国民に新たな負担を強いるのではなく、この日銀が保有するETFの分配金収入を子ども・子育て支援の財源として活用すべき」と提案しました。

 また、審議の際に岸田総理や他党の委員が「すでに国の一般財源として活用されている」と述べたことに対し、「日本銀行からの国庫納付金の積算根拠について、政府は金融政策や金融市場などへの影響を考慮し明らかにしていない」と反論。当初予算における日銀納付金額から推計すると、近年では予算計上額の多くが国債と、現在、市場売却を進めている個別株式の運用損益で説明でき、「ETFの分配金収益があまり考慮されていない」と指摘しました。

 「分配金収入を失うことにより、日本銀行の財務に悪影響が生じる」との指摘については、日銀の植田総裁も「必要な財務上の手当を行っている」旨の答弁をしていると指摘。その上で藤岡議員は、立憲民主党の財源案は、子ども・子育て予算の財源に充てるだけではなく、「株式市場に影響を与えることなく、迅速にETFの処分を可能とするものであり、日本銀行の財務の健全性に大きく寄与するものだ」と説明しました。

 趣旨説明の後、国会法第五十七条の三の規定(予算を伴う法律案又は法律案に対する修正で、予算の増額を伴うもの若しくは予算を伴うこととなるものについては、内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならない。)に基づき内閣の意見を聴取しましたが、加藤鮎子・こども政策担当大臣は「修正案につきましては、政府としては反対であります」とだけ述べました。

■修正案に賛成 閣法に反対討論 早稲田ゆき議員

早稲田ゆき 子ども・子育て支援法改正案

 早稲田議員は、閣法における社会保険料に上乗せする支援金制度は、給付と反対給付の「関係性が薄弱」であり、同制度は「税に他ならない。増税である」と批判。租税法律主義を逸脱する制度で、国民に負担を強いるやり方は「到底容認できない」と断じました。

 また政府がこの間「実質負担はない」との答弁をくり返し、負担が少ないかのように見せる姿勢は、「国民に対し大変不誠実だ」と批判。予算委員会の審議の際から政府に求めてきた「被用者の年収別の支援金の試算」を政府はようやく提示したが、「年収600万円で月1,000円の負担」になるなど、岸田総理が当初、答弁していた「ワンコイン、500円とは全く違う。まさにまやかしだったことも明らかになった」と断じました。

 その上で、支援金は「現役世代の負担がより重くなる制度であり、被保険者・事業主のいずれにとっても増税そのもの」であり、「少子化対策に逆行」すると指摘し、討論を終えました。

■附帯決議 中谷一馬議員

子ども・子育て支援法改正案 中谷一馬

 討論の後、採決が行われ、立憲民主党の修正案は与党などの反対多数で否決されました。採決後、本法案に対する19項目からなる附帯決議が提出され、中谷一馬議員が提出者を代表して趣旨説明を行いました。

子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議.pdf