立憲民主党国会対策委員会は5月9日、水俣市で5月1日に開かれた伊藤環境大臣と水俣病患者団体等との懇談の場で、環境省が強制的に団体側の発言時にマイクの音を切った問題についてヒアリングを実施。同日の懇談に出席していた水俣病不知火患者会・岩﨑明男会長から話を聞き、環境省に状況の報告を求めました。
冒頭、超党派の国会議員でつくる「水俣病被害者とともに歩む国会議員連絡会」の会長を務める西村智奈美代表代行は、すべての水俣病被害者の救済を求める「ノーモア・ミナマタ第2次訴訟」が各地の地方裁判所で争われているなかで起こったことから「岸田内閣が『聞く力』を掲げておきながら、あってはならないことが起きた」と述べ、「よもや環境省は被害者の皆さんの声を聞いていないと思いたくないが、このようなことがあると、そう受け取らざるを得ない」「私たちはもう一度、被害者の皆さんに寄り添い全面解決を図っていかなければいけない」と述べました。
岩﨑会長は、被害が公式確認されてから68年経つものの、実態を明らかにするための健康調査がいまだに行われていないなかでの今回の出来事に「国のやり方がはっきりした。私たち被害者を愚弄していることを何とも思っていない」と激しく批判しました。また被害救済について、司法の場で訴訟が行われているものの、政治の問題として解決してほしいと訴えました。
参加していた渡辺創衆院議員は、(1)マイクを切ることは職員のなかで共通した認識だったのか(2)マイクを切った対応について7日に担当者から伊藤大臣に初めて報告があったということだが、大臣から東京に戻って以降、今回の問題について確認・報告するよう指示はなかったのか――などついて質問。
環境省は(1)について、司会の指示を受けた後、音声を切るという段取りだったが、指示を待たずに切ってしまった。懇談自体は、意見・要望を大臣は聞き取ることができ、ていねいに回答することができ、良い場を持てたとの認識の中で、現場ではマイクが切れた事実確認ができてなかったため、直後に大臣は「認識していない」と発言した。(2)については、式典・懇談について、その後の報道の取り上げられ方を確認している中で、マイク問題がクローズアップされていたことから事実確認し、大臣に報告したのが7日。報道自体については秘書官を通じて伝えていた。事務方が動いているなかで追加の指示はなかった――などと回答しました。
篠原孝衆院議員は、「司法・行政・立法がこの問題に関わっている。日本の高度経済成長の後始末であり日本のガバナンス自体が問われている」「皆さんを責めるのは本意ではない。何がしたいかというと水俣病患者(被害者)の皆さんを一刻も早く救いたい。今後どうするかだ」「(救いたいという)気持ちが欠けているから、ちゃんと聞かなくてはいけないという見通しすらたっていなかったのではないか」と語りました。
川田龍平参院議員は、これまでの環境大臣の中には時間を過ぎても聞く態度をとった大臣もいたとした上で、「(伊藤大臣は)雰囲気を読み取れていない」と指摘。そのうえで、環境省として環境大臣として積極的に水俣病被害者救済に向けた議論をしっかりしてもらいたいと求めました。加えて、環境省(当初は環境庁)が設置された目的・原点は水俣病だとして、「環境省としてやるのは当然。次のチャンスはない」と指摘しました。