衆院法務委員会で5月15日、岸田総理出席で入管法・外国人技能実習法改正案等の審議が行われ、質疑に立った道下大樹議員は(1)永住許可取り消し(2)派遣形態導入(3)家族滞在――等について総理の見解をただしました。

 道下議員は冒頭、「技能実習制度をめぐっては、労働ではなく研修の目的で来日しているはずの外国人を低賃金労働者として扱う実態が広がっていることや、転籍を制約し技能実習生の権利・主張を抑制してきたことなどがあり、各国から厳しい批判を受けてきた」と現行制度の問題認識に言及した上で、今回政府が提出した技能実習制度を廃止して育成就労制度に移行する法案について、「単なる看板の掛け替えに過ぎず外国人の方々に選ばれる国になる内容にはなっていない」と批判しました。

 有識者会議での十分な議論もないまま自民党の提言を受けて突然盛り込まれた永住許可取り消し制度については、立法事実がないとあらためて指摘。永住者の在留資格の取消事由の規定の即刻削除とともに、外国人の方々のために納付の方法や督促に関して分かりやすい説明や周知・広報の徹底を求めました。岸田総理は、永住許可後に一部で公的義務を履行しない場合があるという指摘があることから、適正に公的義務を履行する大多数の移住者や地域住民との間で不公平感を助長することがないよう、永住許可制度を適正化することで共生社会の実現を目指すものだと説明。道下議員は、例えば健康保険料など税金の未納に関しては、国税庁は日本人も外国人も差別なく督促を行っていることから、「現行制度を運用した上で実態に即して、そして調査を行った上で永住許可の適正化に関する法律は別に出すべきだ」と主張しました。

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 派遣形態導入については、育成就労において季節性のある分野での派遣労働形態、特定技能では農業と漁業で派遣労働形態を可能としていることに、「単なる労働者としての扱いでしかなく、育成就労という今回の改正案の趣旨とは全くそぐわない」と問題視。派遣労働と次の派遣労働の間の給与の負担や、その間の期間について誰が面倒を見るのか等もまだ決まっていないことが質疑で明らかになっているとして、「外国の方を単に労働者扱いにしていると海外からの批判も受けることになる」と訴えました。

 家族の帯同・滞在については、政府案では、育成就労制度、現行の特定技能1号で家族帯同を認めず、最大で両制度の合計8年間、家族帯同を認めないことになることから、道下議員は「家族帯同を認めることで外国人労働者の地域定着、定住促進にもなるのではないか」と述べ、立憲民主党の法案にある2年を例に、短縮を要請。岸田総理は「育成制度および特定技能1号の在留資格については、技能等を身につけてステップアップしていかない限り帰国していただくこととなる制度で、その点を考慮する必要がある。現行制度でも人道上の配慮の観点から個別事情に応じて在留資格を付与することは認められている。育成就労制度においても政府として人道的配慮をし、個別具体的な案件に応じて適切に判断する」と答えるにとどまり、道下議員は「日本と欧米とで考える人道的配慮の定義は全く違う。そこを変えないと(日本は)選ばれない国のままだ」と断じました。

 また、日本では来日前初期費用が高いことから借金を背負い、それが失踪率の高さにもつながっていると指摘。「(日本が批准している)ILO(国際労働機関)条約でも労働者からの紹介手数料徴収を禁止している。政府は高額な初期費用を取る送り出し国や機関からは育成就労者を受け入れないと通告し、来日後の送り出し手数料は禁止することを決めるべき。それによって技能実習生や育成就労者を受け入れる企業の負担軽減が図られる。特に企業の負担が軽減されると育成就労者の給与の上乗せにも使われる」と求めましたが、岸田総理は応じませんでした。