立憲民主党環境部門(部門長:近藤昭一ネクスト環境大臣・衆院議員)は5月20日、環境省が5月1日に行った水俣病被害者団体らとの懇談会で、環境省の職員がマイクを切って発言を打ち切った問題を受け、近藤衆院議員を団長に熊本県水俣市を訪れて視察を行い、水俣病患者・被害者団体からヒアリングするとともに、水俣病歴史考証館を見学しました。
懇談会であいさつに立った近藤団長は、「今日は、西村智奈美代表代行、党環境部門の衆参国会議員、地元熊本県から党県連関係者が参加させていただいている」と述べた上で、5月1日にマイクを切られて発言を遮られたことについて、「3分という短い時間も問題だと思うが、さらにマイクを切って発言を遮るということはあってはならないことだ。残念ながら、聞く耳を持とうとしていない。大臣も謝罪したというが、本当に大切なことは、患者・被害者の皆さんが求める全面的な解決に向けてしっかり行動していくことだ」として、今回はしっかりと皆さまからお話を聞かせていただくと述べました。
西村智奈美代表代行は、「今回のことを契機として、水俣病の全面解決を図っていかなくてはならないと強く思っている。これまで長い時間が経過してきたが、被害者の皆さんの思いに寄り添った解決がなされてこなかった。また、環境省がこの問題にきちんと向き合っていないことも明らかになった。この機会を通して、立憲民主党としても対応していきたい」と述べました。
ヒアリングでは、「水俣病不知火患者会」「水俣病被害者の会」「水俣病互助会」「水俣病被害者互助会」「水俣病被害市民の会」「水俣病胎児性小児性患者・家族・支援の会」「水俣病患者連合」「水俣病被害者獅子島の会」(順不同)の8団体からおよそ5時間をかけ、現状についての意見やその思いを伺いました。各団体、被害者の皆さんからは、「5月1日の行為は、まったくもって非人道的なことだが、それは職員の一つの動作であって、考えるべきは総理大臣、環境省幹部の考え方だ。職員一人ひとりを責めても解決する問題ではない」「患者らの平均年齢は75歳を超えている。これ以上は待てない」「これを契機に、被害者を救済するスキームを政治の力で作ってほしい」「私たちは声を聴いて欲しいだけではなく、解決をしてほしい」「3人もの人間がマイクを切られた。これは、環境省の水俣病に対する態度が表現されたものだ」「伊藤環境大臣は問題解決に向けタスクフォースを設置したというが、内容が後退している」など、多くの意見が出されました。
(花山章さんの意見表明・抜粋)
私は、水俣病は自分とは関係ないと思っていました。周りの大人たちもひっそりと息を潜めていました。小学校の時はうまく走れなかったので運動会が嫌いでした。また小学生のころから父の船に乗っていました。形の良い魚は市場に出して、それ以外は自宅で食べる魚が主食の毎日でした。昭和42年、中学を卒業して東京に集団就職しました。就職先は鉄板を作る町工場で、ずっと勤めるつもりで頑張りました。しかし、17歳の頃からだんだん手に力が入らなくなり、そんな時に鉄板を落として大けがをしてしまいました。耳鳴りもひどくなり夜もなかなか寝られない日が続きました。そのころから、私の体は人並みではないと感じるようになりました。仕事にも支障が出て、同僚とも折り合いが悪くなり、自分の居場所がなくなっていく気がしました。長く勤める気持ちでしたが、わずか6年で辞めざるを得ませんでした。地元に帰り、自宅から通えるところで仕事をしましたが、体調を崩し、数年で辞め、職場を転々としました。平成25年に受診した医師から、「しびれなどの長い間の身体の不調は水俣病が原因です」と言われました。その場から立ち上がることもできませんでした。普通の体なら、集団就職した会社で定年まで働いて家庭を持ち、人並みの生活が送れていたのではないかと思うと、悔しくてなりません。私の人生は水俣病に壊されました。このまま泣き寝入りすることはできません。3月25日の判決で、裁判所は私を水俣病と認めましたが、賠償は受けられないという判決でした。腹の底から怒りが湧きます。私は何か間違ったことを、悪いことをしたのでしょうか。この10年の戦いは長く苦しいものでしたが、同じ苦しみを持つ仲間がいたからここまで頑張ってこられました。救済が実現できるまで戦い抜く覚悟です。
視察終了後、記者団からの質問に答えた近藤団長は、「この問題の解決のために、患者、被害者の皆さんとともに進みたいと思っていたなかでこの事件が起きた。あらためて皆さんから話を聞かせていただきたいと訪問させていただいた」と今回の視察の趣旨を述べました。西村代表代行は、「立憲民主党として考えられることとして、議員立法を作り国会に提出すること。他党からも賛同をいただく法案作成のために、当事者団体の皆さんからお話を伺わなければならないと思い、今日水俣を訪問した。いろいろなご意見を伺うことができたが、今後の法案作成作業に必ず活かしたい」と話しました。
議員立法作成に向けたスケジュール感などを聞かれた近藤団長は、「問題解決のため、当事者の声を受け止めたものを形として示さないといけないが、示しただけではなく成立させるために各党と交渉していく。この通常国会中、出来る限り早い時期に提示したい」と答えました。
タスクフォースの設置について、伊藤環境大臣の発言がトーンダウンしているようだとの問いに、「タスクフォースだが、目指すものが明確ではなくあいまいなもの。トーンダウンしている部分は改めて追及していく」と近藤団長は答えました。