衆参両院の正副議長の主催する「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」の第2回会合が5月23日午後、衆議院議長公邸で行われました。立憲民主党からは、野田佳彦・党安定的な皇位継承に関する検討委員会委員長(党最高顧問)、馬淵澄夫・同委員会事務局長、野田国義・同委員会副委員長が出席しました。田名部匡代・党参議院幹事長(党幹事長代理)は参議院の公務のため欠席となりました。
先週の全体会議では、額賀議長から毎週1回全体会議を開くとして、今回は議長が示した「主な論点(案)」の総論部分と女性皇族が婚姻した場合について協議することとされていましたが、急きょ、各党・各会派の意見書や論点整理、前回の会議で出された各党・各会派の意見を概括的にまとめた「「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果」に対する各党・各会派の意見の要点」について、橘衆議院法制局長から説明を受け、前回の補足意見などについて、各政党・各会派から意見を聴取する形で進められました。
野田委員長は、まず会議の持ち方について、中身の議論を丁寧にやることは大事であるとしたうえで、退位特例法の際の協議を例にあげ、論点整理のあり方や議事録の作成と公表、日程の問題、意見交換の行い方について、事前に各党各会派と議論しておくべきだったと発言しました。特に議事録については、前回の全体会議では、一定の結論が出てから公表するというやり方が提案されていましたが、象徴という天皇の立場は国民の総意に基づくものであることから、今どういう議論が行われているかを国民に知らせる必要があり、また次の全体会議までに各党・各会派が建設的な意見を作っていくためにも、全体会議が終わったらすぐに議事録を作って公表するのが筋ではないかと強調しました。
そして、5月17日の全体会議において配付された「主な論点(案)」の「1.総論(検討方針)」の「附帯決議が要請した『安定的な皇位継承を確保するための方策』の検討を今後の検討課題とし、まずは喫緊の課題である皇族数確保のための方策を講じることについて」は、政府有識者会議の報告書が附帯決議の要請である、安定的な皇位継承についての諸課題と、女性宮家等について真摯に受け止めて回答しているわけでないことから、立法府としての安定的な皇位継承についての具体策の検討が「やむを得ずできない」ため「今後の検討課題とせざるを得ない」として、まずは喫緊の課題の皇族方の減少についてなるべく早く結論を出す方向との方針については、基本的には了との立場を表明しました。
「主な論点(案)」の「2.皇族数確保のための第1案『女性皇族の婚姻後の皇族の身分保持』について」は、前回も女性皇族が結婚した場合に、配偶者や子を皇族とするか、皇族としないかについては、両案をきちんと検討するように求めてきましたが、改めて「女性皇族には投票権がないが、配偶者は投票権を持つ一方で、被選挙権もあり、政治団体も作れるし、政党を作ることもできる」「配偶者には信教の自由があるから、何かの教祖になることもできる」「職業選択の自由があるから、女性皇族の子がタレントになってもいい。言論の自由があるからSNSでいろいろ発信してもいい」といった具体例を示し、女性皇族と結婚した配偶者とその子が国民のままであると「憲法の第1章と第3章がぶつかり合う家庭になる」ということについて「そういう家庭が成り立つのかということも含めて議論すべきだ」と訴えました。さらに「女性皇族が摂政や天皇の職務代行をすることもあり得るが、その場合に配偶者や子が皇族ではないことは考えられない」ということも指摘し、女系の話につながるかもしれないという恐れから反対の意見があることについても、皇室典範の1条を改正しなければそういうことにならないとして、女性皇族の配偶者と子を皇族にすることと、女系につながることとは直結しないと述べました。
馬淵事務局長は、「主な論点(案)」の「3.皇族数確保のための第2案『皇統に属する男系男子を養子に迎えること』について」は、そもそも旧11宮家の男系男子の意思の確認をしていかねばならないという課題が残っているという立法事実の問題に加え、憲法14条の門地差別に当たるのではないかということ、また皇族方の中でも旧11宮家の男系男子のみを選ぶこと自体が平等原則に反するのではないかという、憲法の適合性の疑義という課題があるということを、改めて主張しました。養子縁組で皇族となった方の皇位継承資格や配偶者と子の身分および皇位継承資格についても、今後の安定的な皇位継承の諸課題については先送りされて何ら整理がされていないことにあわせて、この先の検討課題として考えると述べました。
そして、「主な論点(案)」の「4.皇族数確保のための第3案『皇統に属する男系男子を法律により直接皇族とすること』について」は、一般国民が突然にその権利を剥奪され、自由を奪われてしまうことから、旧11宮家の男系男子を選ぶことよりもハードルが高い憲法上の疑義が生じる困難な課題であり、すぐに結論を出すということではないと重ねて発言しました。
終了後、野田委員長、馬淵事務局長が記者団に対し全体会議での発言内容を説明し、質問に答えました。
会議の進め方については、野田委員長から、各党・各会派からも拙速な議論の進め方などに異論が出されたことを紹介し、「今後については、次の全体会議がいつに決まったということではなく、衆参議長・副議長が、各党の意見をさらに丁寧に聞いていくというやり方をすることになった」と述べ、前回提案のあった全体会議のあり方、持ち方については、いったん撤回して、両院の正副議長が各党・各会派と個別に様々な議論を重ねていき、それが揃った段階で、また立法府としての考え方を整理するため全体会議を招集することになったことを明らかにしました。馬淵事務局長も、参議院の審議が非常にタイトな状況だということから、全体会議を毎週開くことを今回、全体会議中で修正されたとして、議長が「会期中であるとか、後ろを決めるということに言及されなかった」のは「十分それを配慮された結果」であり、「拙速な進め方ではないということに舵を切られた」との受け止めを示しました。
有識者会議の報告書に沿った論点で議論していくことや、今すぐ皇位継承のあり方について議論すべきだということではなく皇族数の確保の問題と切り分けて議論していくべきという会議の運び方について、各党・各会派でおおむね合意されたのかという質問に対して野田委員長は、有識者会議の整理の仕方で、先送りした課題と、急がなければいけないことを整理しながら進めていくということの方向性は確認され、おおむね合意したと述べました。あわせて、有識者会議報告書以外のテーマでももっと話しても良いのではとの意見が多く出たことも明らかにしました。
附帯決議の女性宮家の定義について質問された馬淵事務局長は、法律で女性宮家の定義はないが、皇室経済法では皇族が婚姻した場合にその配偶者、または子が生まれた場合はその子の全体を宮家と称しており、侍従も含めて扱いが宮家という形で現実に動いていることから、それが女性であった場合も同等に家族一体という形で宮家として見ていることが類推されるとして、法律では決まっていない、法律用語ではないということで、規定がないものを議論するのは無駄だと排除する論は全く当たらないとの認識を示しました。野田内閣や小泉内閣でも女性宮家という言葉を政府として明確に出していることも踏まえ、定義がないとして議論の埒外に置くのは大きな誤りだと重ねて指摘しました。
20240523「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果」に対する各党・各会派の意見の 要点.pdf