参院本会議で5月24日、「出入国管理法案」「外国人技能実習法案」の趣旨説明が行われ、石橋通宏参院議員が岸田総理らに対する質疑に立ちました。

 石橋議員は、外国人技能実習制度について「現代の奴隷制度、人身売買と国際的に強く批判されてきた」と強調。この間の政府の不作為により、「人権侵害の犠牲になってきた多くの技能実習生に対して、真摯に謝罪する気持ちはあるのか」とただしました。

 岸田総理は、「一部の受入れ機関において、人権侵害行為が生じたこと、これを重く受け止めております」と述べるにとどめ、明確な謝罪を避けました。

20240524_103711.JPG

 石橋議員は本改正案で導入される「育成就労制度」について、「技能実習制度の単なる看板の掛け替えであり、これでは構造的な問題は解決できない」と強調。送り出し国と日本の双方で、民間ブローカーが介在する制度が残存することを問題視しました。また、法務大臣政務官が厚生労働委員会での審議において、送り出し機関や監理支援機関は「現行制度と同様に、育成就労生や雇い主からお金をもらって運営する」と答弁したことも踏まえ、技能実習制度と「全く変わらない制度であることを政府自身が認めている」と厳しく指摘しました。

 さらに技能実習生が、労働者の当然の権利である恋愛や結婚・出産の自由が侵害され続けてきたことについて、本改正案では「当然に保障されるという理解でよいか」と小泉龍司法務大臣に質問。小泉大臣は、「日本人労働者や技能実習生を含む外国人労働者と同様に、恋愛や妊娠・出産及び育児等の私生活の自由については制限されておらず、妊娠・出産等による不当な取扱いは男女雇用機会均等法により禁止されている」と答弁しました。

 本改正案には人権尊重の観点で、現行制度から「むしろ後退させる深刻な問題」もあると石橋議員は指摘。その一つが、派遣労働の解禁だと強調。派遣元と派遣先で雇用責任の「押し付け合い」になるなど、育成就労生が派遣労働の「マイナスの影響の実害を受けることになる」と述べました。

 さらにもう一つの問題は、永住権の剥奪を可能にする条項だと強調。自民党内の法案審査過程において、「永住者が増えたら大変だという一部議員の主張で突如もり込まれたと伝えられている」と述べ、「深刻な差別主義、排外主義であり、強く非難されてしかるべき暴論」だと断じました。

 これに対し岸田総理は、「本改正は共生社会の実現のためにも必要なものである」と強弁しました。

 石橋議員は、衆院の審議に際し対案として「外国人労働者安心就労法案」を提出したことを踏まえ、立憲民主党は「外国人労働者を(技能実習ではなく)『労働者』として受け入れて、保護し、生活者としての安心を確保する制度を提案した」と強調。異常な円安にもかかわらず、無策を続ける岸田政権に対し、日本が「稼げない、仕送りもできない、その上、差別や偏見にさらされる」という国であれば、アジアの若者が「他の国に行きたい」と思うのは当然だと訴えました。

20240524_103556.JPG