小川淳也幹事長は、12月3日、衆院本会議にて、石破総理の所信表明演説に対して、(1)外交(2)衆議院解散、選挙の振り返り(3)裏金問題(4)総裁選の公約への取り組み(5)金融所得課税――等について質問しました。予定原稿は以下の通りです。

所信表明演説に対する代表質問

立憲民主党・無所属 小川淳也

 立憲民主党の小川淳也です。会派を代表して総理に質問いたします。

(1)外交

 冒頭、総理の日々の激務に深く敬意を表します。その上総理にはお疲れもあったのでしょうか、先のAPECにおいて席上スマートフォンの操作、海外首脳の挨拶に着座で対応、首脳陣の集合写真に遅れて間に合わない等、一部外交儀礼上批判の声が上がっています。これを擁護する声があることも前提としつつ、まずは総理ご自身の受け止めをお伺いします。

(2)衆議院解散、選挙の振り返り

 先の総選挙では自公過半数割れという歴史的な結果となりました。この際伺います。総理は就任前から衆議院解散を公言。自らその必要性を唱えていた予算委員会を開催せず、否定していたはずの党利党略の批判が強い7条解散に踏み切りました。その時点で何か国民の期待の大事な部分を裏切り、魅力が失せたのではありませんか。一部に発足即末期との酷評も見られます。一連の衆議院解散・総選挙の顛末を振り返り、ご自身なりの反省や総括があればお聞かせください。

(3)裏金問題

 関連して、私は裏金に関与した議員はそもそも議員辞職すべきという立場です。裏金に関与した議員を党公認とした判断は正しかったのか。こうした議員を推薦した連立パートーナーたる公明党の判断も含め、総理並びに国交大臣にお伺いします。
 再選した12名の議員が部会長等党要職に起用されました。既に禊が済んだというご認識でしょうか。無所属で再選した議員も直ちに自民会派に入ったとか。これら含め判断が甘く反省が足りないのではありませんか。総理の見解を伺います。
 非公認候補に2000万円が支給された件について伺います。まず総理は非公認候補党支部に公認候補同等2000万円が振込まれた事実を知っていたのか。その判断は正しかったと今もお考えか。党支部の活動支援と称しながら、候補のいない選挙区支部になぜ振り込まれなかったのか。これらは総じて裏公認料、事実上の選挙資金とのそしりを免れない、と断じざるを得ませんが、総理の反省と見解を伺います。
 総理は先の党首討論において、総選挙で政策活動費支給の可能性をほのめかしました。率直にお聞きします。今般の総選挙で政策活動費は支出したのか。支出したとすれば、昨日分までを含め誰にいくら、何のために支出したのか、事実関係を伺います。
 総理は党首討論で一連の裏金を「不記載」と強弁されました。単なる不記載なら記載してください。できるものならやってください。書けないではありませんか。書けるものを書かなかったのではない。書くつもりも、備えもなかった。それを裏金と呼ばずして何と呼ぶのですか。3月の自民党調査では明確に「裏金の招来を防げなかった」と総括していることを踏まえ、発言の撤回並びに総理の答弁を求めます。
 更に伺います。自民党の政治改革論点整理では、裏金相当額の2倍を党から寄附すると明記しています。なぜ2倍ですか。何の根拠ですか。これは個々の議員から回収するのか、党が負担するのか。税を原資とする政党交付金はこれに充てられるのか、具体的な説明を求めます。
 今回明るみに出た裏金は収支報告公開の5年分のみであり、正に氷山の一角。率直にお聞きします。結局この裏金づくりは、いつ誰が始めたのですか。どのような経緯ですか。途中異を唱える声もあったようですが、なぜ、どのようにかき消されたのですか。そして裏金は、いくら、何に、何のために使われ、どのくらいの金が手元に残っているのですか。本来納税すべき額はそのうちいくらと目されますか。この問いに、どれか一つでも答えられますか。わかるひとが自民党内にひとりでもいますか。それこそが最大の問題ではありませんか。注意だ、非公認だ、2倍の納付だ、すべて後付けで言い訳がましく、アリバイ作りに過ぎないのではありませんか。結局真相解明がないことが最大にして根本的な問題。新たな疑惑も出始めました。改めて徹底した再調査と国民への説明責任を果たすことを要求し、総理の答弁を求めます。

(4)総裁選公約への取り組み

 信認を失った政権が今後、国民生活に関わる政策の推進力を十分に得られるのか甚だ疑問です。党総裁選における石破公約について伺います。
 総理は総裁選で最低賃金を「2020年代に全国平均1500円」にすると掲げました。しかし、今国会での所信表明演説では「最低賃金を引き上げていくための対応策の策定を、関係閣僚に指示しました」と述べたのみ。「2020年代に全国平均1500円」はどのように実現されるのか、ご自身の考えを説明してください。総理の答弁を求めます。
 国立大学・高専の授業料無償化、学校給食の無償化も総裁選公約です。是非とも早急に実現しようではありませんか。これもトーンダウンするのですか。総理の本気度を伺います。
 その他、既に示された防災庁や地方経済・生活環境創生本部以外にも、経済・金融・市場の危機対応組織の創設、価格転嫁対策強化のため下請法改正案の提出、中央省庁の地方移転推進、住宅支援、修学旅行費の支援強化、給付型奨学金の拡充、自衛官給与の早急な引上げ、食料自給率と自給力の早急な引き上げの数値目標化等々、高らかに掲げられています。これらは先日の所信で何も触れらませんでしたが、どうなったのか、どうなるのか、個々に具体の説明を求めます。

(5)金融所得課税

 過去の発言に関してお尋ねします。
 まず金融所得課税です。総理は総裁選において、所得が1億円を超えると所得税負担率が低下する「1億円の壁」を念頭に、金融所得課税強化を「実行したい」と発言。しかし、総理就任後「現時点で具体的に検討することは考えていない」と発言を事実上撤回。この短期間にどのようにお考えが変わったのか。今後、金融所得課税適正化の可能性はあるのか、消えたのか、明確にご答弁ください。

(6)アベノミクス

 アベノミクスについて伺います。安倍元総理はかつて「1ドル300円になれば、あっという間に経済は回復する」と豪語されました。円安は輸出企業の収益を押し上げる一方、激しい輸入物価の上昇が、厳しく家計を圧迫しています。「暖かい風が地方にも中小企業にもやがて届くというが、届くわけがない。うそはいけない。アベノミクスはトリクルダウン。東京が金持ちになれば、地方の野菜が売れるという安倍総理はわかっていない」。これがかつての総理の言葉です。これを踏まえ再度お聞きします。総理はアベノミクスをどう評価し、今後の金融政策はどこへ向かうのか見解をお聞きします。

(7)消費税

 消費税について伺います。総理はかつて「将来10%代後半が不可避」と発言。私にも北欧型の福祉社会が一つの理想との思いがあります。しかし消費税率20~25%の欧州では食料品ゼロ税率、水、燃料の軽減税率等により、実効税率はイギリス・フランスが9%、ドイツで10%、北欧ですら12~3%。これを前提とすれば、少なくとも現行制度を前提に、これ以上の負担の引き上げは負担水準、逆進性双方から極めて困難かつ不適切と思われますが、当時の発言の真意、並びに今後の方向性をお聞きします。

(8)専守防衛、非核三原則の見直し

 「専守防衛、非核三原則は見直すべき」との発言について伺います。この間、防衛費の倍増、敵基地攻撃能力、集団的自衛権など防衛政策の一大転換が強引に推し進められて来ました。昨年のある学会では総理から「核戦争なき世界を作るため核を持つ」との驚きの発言も飛び出しました。専守防衛、非核三原則は将来に向けて堅持すべきと考えますがいかがですか。合わせて総理はかねてより憲法9条2項の削除論者です。確かに現状、国防政策の是非に加え、法的安定性という法治国家の根幹にかかわる問題までが惹起されています。これらを含め持論に沿って、在任中の改憲発議があるのかお聞きします。

(9)「森友・加計・さくら」問題

 いわゆる「森友・加計・さくら」問題も看過できません。「森友も加計も桜も分かったという国民は少ない。文書が改ざんされたり、破棄されたり、検証のしようがない。根本的な問題。説明責任をどう果たすかだ。きちんと責任をとらなければいけない」。これも総理自身の言葉です。与党内野党との批判を恐れず、常に正論を吐き、ついに総理に就任されました。有限実行、これらの真相究明、文書の公開を断行頂きたいと思いますがいかがですか。総理の答弁を求めます。

(10)旧統一教会

 旧統一教会について伺います。自民党総裁と教団最高幹部の面談など新事実が報じられました。従来の答弁ではこれに自主的な点検を、とのことですが不十分です。第三者委員会を設置し、厳正な調査を通じて説明責任を果たすことを要求し、総理の答弁を求めます。

(11)沖縄振興

 沖縄振興についてお訊ねします。総理は所信の中で、沖縄の基地負担の軽減に取り組み、沖縄振興の経済効果を十分に波及、実感できるよう沖縄経済の強化に向け支援を継続すると表明されました。しかし実際には沖縄への交付金は減額続きではありませんか。沖縄からはみせしめ、おどし、との声まで聞こえて来る始末です。関係予算の減額撤回並びに交付水準の回復を要求し、答弁を求めます。

(12)外交

 すべての戦争は外交の失敗。実力行使に傾きがちな昨今、国会に席を預かる人間の一人として、改めてこの言葉を胸に刻みたいと思います。政治家の仕事をたった一つ挙げるとすれば、それは戦争をしないこと。国民を戦争に巻き込まないこと。私はそう固く信じて疑いません。
 混迷を極める中東情勢について伺います。パレスチナでの戦闘が始まって1年余り、停戦と人質解放は今なお完全には実現していません。イスラエルによる国連機関への攻撃が、事態を更に深刻化させています。イスラエル及びイスラム諸国と独自の関係を築いてきた日本こそが、停戦協議や国連機関の円滑な活動推進に指導力を発揮すべきと考えますが、総理の外交方針をお聞きします。

(13)離島振興

 昨年及び本年、国政調査の一環として現地調査を行いました。ここからいくつかお尋ねします。まず離島振興についてです。本年夏、島根県海士町を訪ねました。今や日本で人口減が止まっているのは象徴的には東京都と海士町、そう言っても過言ではありません。住民の2割が島外。島の高校生の5割が島外。役場職員の6割が島外。島民の士気の高さとチームワークに圧倒されました。正に革命は辺境より来る。振り返れば本年亡くなられた前町長の自らの給与半減からスタートした島改革でした。これに幹部職員の給与3割減が続き、何と職員組合は自ら1割の給与削減を申し出、老人会は補助金の受け取りを辞退。むしろ町営バスの運賃引上げを嘆願するという耳を疑うような奇跡が連続したのです。そして大人を含めた島留学が奨励され、新鮮な魚介類の域外輸出を含め、島の振興発展に一丸となって取り組んでいます。もとより永田町も裏金や巨額の政策活動費等に自ら厳しいメスを入れることが、国民の改革マインドに火を灯す唯一の着火点。改めて年内の政治改革実現に向けた総理の決意を伺います。
 加えてもう一点、海士町を始めとした国境離島には、空路や海路の助成が行われています。今後それ以外の内海離島に対しても、正に「航路は道路」との観点から、公共交通予算の重点配分が必要と考えますが、お考えをお聞かせ下さい。

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(14)教育

 鳥取市内の青翔開智高校を見学しました。1組20名前後。少人数で考え、対話し、発表・発信する力を養う教育は特筆に値し、校長先生は40代前半。「正解のない時代の教育」を志す、と言い切る姿に希望を感じます。生徒は地場産業の課題を大人たちと共に悩み、考え、解決策を模索しています。与えられる課題は例えば「明治維新は革命に該当するか」という本質的なテーマ。革命とは何か、フランス革命やイギリス革命とどう異なるのか。あるグループは明治維新を革命に該当すると結論付け、他のグループはそうでないと結論付ける。そしてその理由はかくかくしかじかと。大切なことは両方とも正解ということ。私たちはたった一つの正解に、いかに素早く辿り着かを繰り返し訓練されて来ました。しかし、今後正に「正解のない時代」を生き抜くにふさわしい訓練と資質を、子供たちが身につけ、育まねばなりません。正解を探すどころか、むしろ問い自体を自ら立てる力。自ら調べ、考え、対話を重ねる力を教育課程で養わねばなりません。今後の教育に求められる基本的な指針について、総理のお考えをお聞きします。

(15)洋上風力

 五島列島沖の洋上風力を視察しました。山がちな日本列島で、メガソーラーの設置は限界に近づいており、平地当たりの設置面積は既に欧州を超えたと言われています。また深い海溝に囲まれた日本近海は、欧州のように遠浅でなく、着床式洋上風力を拡大する余地は限られています。となれば深い海に浮かぶ「浮体式」洋上風力が最後の切札。世界第6位とも言われる海洋をフル活用し、浮体式洋上風力を十分整備すれば、現在の供給電力の2倍以上を自国生産できる、との試算もあります。これはもはや民間企業が採算を気にしながら進める類の話でなく、かつて国家が鉄道を敷設し、郵便を整備し、電信電話網を整えたと同様、国策として大規模に進めるべき国家プロジェクトではありませんか。総理の見解を伺います。

(16)温室効果ガス削減目標

 関連して、2035年までの温室効果ガス削減目標は、2013年比60%減にとどまるとの報道が散見されます。これは事実でしょうか。これまでの国際合意等に照らせば、そして現在の温暖化の深刻化、国際社会に占めるべき日本の地位と責任に照らせば、さらに野心的な目標設定が必須ではありませんか。総理のお考えをお聞きします。

(17)介護離職

 昨年夏、スウェーデンの老人ホームと労働組合を訪問しました。スウェーデンの老人ホームは収入と資産に合わせ月額何と1万円台から入居でき、そこで働く介護従事者には全産業平均同等の賃金が支払われているとのこと。私は聞きました。この国に「介護離職」という言葉はあるかと。「聞いたことがない」明快な答えでした。今後更に莫大な介護需要が発生する我が国こそ、国策としてスウェーデン並みの施設整備、抜本的な対策を講じるべきではありませんか。総理のお考えをお聞きします。
 スウェーデンの労働組合には全労働者の7割が参加しています。中央での賃上げ交渉は国の隅々まで拡張適用され、正に同一労働同一賃金が担保されています。日本の労働組合の加盟率は未だ16%。集団的労使関係の枠外におかれる労働者の増加は国家的な課題です。この点、スウェーデンでは労組が企業経営や雇用政策に参画する仕組みが整えられており、口先だけで賃上げを迫るより、はるかに実効性があると考えます。今後中小零細、非正規の方を含め、抜本的に労働基本権を確保し、底上げする法的・制度的環境整備について総理のお考えをお聞きします。

(18)政治、選挙の新たな課題

 さて、ネット選挙解禁から10年余。先の都知事選、衆院選、そして兵庫知事選、名古屋市長選等、ネットの影響力がいよいよ決定的なものとなったことを痛感しています。考えてみれば既にショッピングも、仕事も、家探しも、人との出会いも、さらには結婚までが、ネットが主流ないし大きなウェイトを占めており、政治だけがそうならないはずがない、そういう事かも知れません。
 一方、長年の商取引等に比べると政治空間のネット活用は、まだまだユーザ一の経験やリテラシーが十分とも思えません。通常厳しく規制される虚偽表示や誇大広告対策も不十分。加えて有料での動画投稿募集、広告、さらに視聴回数に応じて投稿者がお金を得る仕組み等が、政治空間の言説にどのようにバイアスを加えているのか。今後ネット上の言論を健全な民主主義の発展につなげて行くために、新たな努力と試行錯誤が求められます。自民党総務会長がこの点、法規制の可能性に言及したことについて、総理の見解を求めます。
 関連して同一党派による候補者の大量擁立、ポスター掲示枠の事実上の金銭売買、自らの当選でなく他者を応援するための立候補など、これまで法が予期していなかった事態が頻発しています。本来法が予定しない、ある種社会規範によって抑止されてきた揺さぶり、法の間隙を縫う行為は、今後民主主義を育むのか、廃れさせるのか、大いに危機感を感じています。この点についても総理の見解を伺います。
 合わせて、そもそもこうした従来考えられなかった行為が容認、黙認、場合によっては歓迎される社会的風潮が一体どこから生じているのか。その背景に迫る総理のご見識を伺います。

(19)格差社会

 現在、国の内外において政治・社会情勢が極めて不安定化し、流動化しています。民主主義も危機にあると言って良いでしょう。なぜ多くの国々で、人々は不満や不安を募らせ、憤りを深めているのか。私には国内外における格差と貧困の拡大、社会的疎外、これらが深刻化していることが最大の要因。そう思えてなりません。様々な格差指数が既に第二次世界大戦前夜に近づいていることは、多くの関心を集めるところです。
 こうした事態がもたらす閉塞感、不公平感、不平等感が人々を絶望させ、将来への展望を失わしめている。場合によっては社会への憎悪を募らせ、ある種の破壊衝動を抱かせてしまっている。それが社会不安の増長・増幅、政治不安と密接に関連している。この点総理はどうお考えか、ご見解をお聞かせください。
 格差や貧困の拡大に関連して、これに直結する経済の低迷、人口減や高齢化に関して、残念ながら我が国は世界のトップランナーです。昭和の時代、日本の人口は毎年100万人程度増加していました。令和の今、毎年100万人近くの人口減少に転じ、これが今後数十年続きます。

(20)高齢化社会

 高齢化率は昭和の時代に5%。今30%。やがて40%の時代に突入します。少子化の進行も著しく、戦後の団塊世代は年間250万人、我々団塊ジュニア世代が年間200万人、今生まれくる赤ん坊は年間わずかに70万人。この超高齢化と超少子化の同時進行が、日本の人口構成を激変、逆転させています。正に昭和の正三角形から、令和の逆三角形へ。その激しい変化の中、日本の社会保障制度が根底から揺さぶられています。しかし、この重大な構造変化に正面から向き合わず、騙し騙しつぎはぎで対応して来たつけ、矛盾が、この国の莫大な財政赤字の正体、まずこの点、総理のご見解を伺います。

(21)物価上昇

 積み上がった莫大な財政赤字が、今度は金融政策の重しとなり、国際市場で円が叩き売られました。アベノミクス前の1ドル70円から、今や1ドル150円、60円。その価値は半減したのです。その安くなった円で、今なお食料の7割、エネルギーの9割近くを輸入していることが物価上昇の主たる要因。この点も合わせて総理の見解をお聞きします。
 なぜこの国はもっと本気で、農林水産業を支援して来なかったのか。食料の国産化に努めて来なかったのか。なぜもっと本気で再エネを中心としたエネルギーの国産化に努めて来なかったのか。安くなった円で、国際的に高くなった食料とエネルギーを買い続けおり、物価が上がるのは当然です。
 もちろん物価上昇は日本だけではありません。アメリカでもヨーロッパでも物価は上昇しています。しかし海の向こうでは、物価が上がるスピード以上に、賃金や年金が上がっているではありませんか。なぜこの国ではそうならないのか。総理の根本的なご認識をお聞かせ下さい。

(22)非正規雇用

 この30年、日本では圧倒的に非正規雇用を拡大して来ました。象徴のひとつが派遣労働です。昭和の時代、多くの人が正社員だった頃、それでも認められていた派遣労働は通訳や速記など、正に特殊技能労働にのみ認められる例外でした。しかしその後小泉・安倍政権の下、一体誰の声を聞いたのか、どなたの利害を慮ったのか、やがて製造現場からサービス業まで、ほとんど全ての仕事に派遣労働が拡大されたのです。
 今や働く人々の4割は非正規。女性は更に深刻です。こうして働く人々のバーゲニングパワーを奪っておきながら、口先だけで賃上げしろ、と言うこと自体、ずいぶん空しく、かつ不誠実、無責任と感じますが総理はいかがですか。お答えください。

(23)失われた30年とこれからの社会

 人口減、高齢化、社会保障の綻び、莫大な財政赤字、金融政策は可動域を失い、円はたたき売られ、それでも海外から輸入せざるを得ない食料とエネルギー。そして物価は上がるが労働市場が弱体化し、賃金と年金は下がり続ける。これが、これこそが失われた30年の正体ではありませんか。総理に反論があればお聞きします。
 これらすべてを逆流・逆回転させる政治を手にしなければ、今後更に社会は行き詰まり、混迷を深め、人々は絶望と憎悪、相互不信、そして破壊衝動を抱き、やがては戦争や革命に至ることすら否定しきれない。そういう極めて不安定かつ不穏当な時代に入ったとの認識が必要と思いますが、この点総理はいかがですか。
 かつて作家の司馬遼太郎氏は作品に、法の支配は豊かさと平和を前提とする、と記しました。まさに民主制も平和と豊かさを前提とする。民主制は平和と豊かさが保たれる限りにおいて存立し、その崩壊と同時に崩れる。こうした緊張感を持つべき時代ではないでしょうか。

(24)現役世代の負担

 その意味で、かつて若者の国民年金保険料は月百円。今1万7千円近く。厚生年金保険料は当時収入の3%。今18%。健康保険と合わせ30%。これを労使折半しています。現役世代の負担は極めて重く、企業は正社員の雇用を控えるようになりました。今、若者はかつての何倍もの重い負担に耐え、しかしそれでも財源は不足。莫大な財政赤字が垂れ流され、この国の持続可能性は崩壊しています。それでも歯を食いしばって、この重い負担に耐え続け、不安と闘いながら生きているのが現実です。
 ここであえて指摘したいことがあります。この現役世代の重く厚い負担は誰一人、自分の親、自分の祖父母のためにだけに耐えている人は一人もいない、というシンプルな事実です。言わば全親世代、全祖父母世代のために、若者はその厚く重い負担に耐え続けています。
 こうしてかろうじて維持された社会保障制度を前提に、今度は形成された資産の多くを高齢者の諸先輩方が保有されています。そしてその保有資産の多くは、やがて今度は決して次世代全体ではなく、自分の子に引き継がれて行くのです。この負担と受益の相関関係は果たしてフェアなものと言えるか。不条理ではないか。これは持続可能なものか。この点、是非総理のお考えをお聞かせ下さい。
 特に人口減の中、毎年の死亡者数、相続財産総額は増加の一途です。しかし、そのうち全次世代に還元されるのは僅か数%。仮にもう数%全次世代に還元されれば、直ちに全国の国公立大学を無償化し、私立大学の授業料を半減させることができるでしょう。もう数%で若者に月額10万円程度、返済不要な奨学金を支給出来ます。
 もう数%で今度は抜本的に農林水産業を支援し、食料の国産化、輸入依存からの脱却を図れる可能性があり、さらにもう数%で本格的に再エネを導入すれば、やがてエネルギー自給国となり、気候変動対策に十分な成果を挙げることも夢ではありません。これは毎年30兆円分もの輸入化石燃料を不要とし、流出する国富を国内で循環させることを意味します。
 加えてもう数%で今度は若者ばかりでなく、なお将来不安におびえる高齢者の皆様に、スウェーデンなみの安価で充実した老人ホームを用意することが出来るでしょう。

(25)税制の見直し

 昨年、私は党税制調査会長として「資産格差が拡大・固定化している現状に鑑み、税率構造や非課税措置の見直し等により、相続税・贈与税の累進性を高める」との党方針をとりまとめました。
 今後、超高齢化、人口減少時代を生き抜くために、言わば、資産の一部を全ての若者に。財産の一部を全次世代へ。そして同世代内の助け合いへ。これこそがこの超高齢化、超少子化時代を生き抜く、恐らくは唯一にして最大の活路となる。私はそう確信します。総理のお考えがあればお聞きします。

(26)社会の再設計に向けて

 今、複数「壁」の議論がなされています。どれも重要な論点です。しかし加えて、もう一歩、今の政治に本来求められるものがあるとすれば、こうした各論、個別論を束ねる全体構想ではないでしょうか。トータルの将来ビジョンであり、国家のグランドデザインです。社会を再設計し、全体観のある国家構想を描く。それこそが今本来政治に求められる機能であり、本質と思いますが、総理いかがですか。
 そしてこのトータルの改革は、やがて日本を世界に冠たるモデル国家として、国際社会で光輝かせることになるでしょう。韓国は既に3年前から人口減、中国も2年前から人口減。やがて世界のあらゆる国々が、日本が苦しんだ超高齢化と人口減に、否応なく直面し、例外なく悶絶するのです。日本こそが世界に先駆けて変貌を遂げるべきです。世界に冠たるモデル国家として。課題先進国がいつしか、世界最先端のソリューション国家となる。混迷する世界に貢献し、世界をリードするのです。
 立憲民主党はこうした全体構想を描き、引っ張る、正に改革の旗手とならねばなりません。新たな社会モデル、国家構想を描き、グランドデザインを示す。国中に満ち溢れる閉塞感を打破し、不安を払拭し、互いの信頼を基調とした、持続可能な社会の再設計、再構築に向け、その改革の先頭に立つのです。この難しい時代だからこその、国民の願い、そして希望に真正面から応えるのです。
 やがて次世代にこの社会を、自信をもって、誇りを持って、胸を張って堂々と引き継ぐ。引き渡す。それこそが私の政治家としての夢であり願いでもある。そのことを強く訴え、高らかに宣言し、質問を終わります。ご清聴誠にありがとうございました。

以上

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