参院予算委員会で5月19日、集中審議(内外の諸課題)が行われ、立憲民主党から打越さく良、森本真治両議員が質疑に立ちました。
■打越さく良議員
打越議員は、(1)コメ問題(2)介護・障害福祉従事者の賃金引上げ(3)年金法案――について取り上げ、政府の見解をただしました。
コメ問題については、消費者、生産者それぞれの立場から「何とかしてくれ」と悲鳴が上がっているとして、政府が5月16日に取りまとめた「コメの流通安定化に向けた対策パッケージ」でコメ不足は解消できるのかと質問。コメの価格高騰は、消費者だけでなく農家の方も米離れが進むのではないかと懸念を示していることに触れ、「コメ農家の収入は長期的に見て減少してきていて、コメ価格の高騰を受けてもまだ30年前の水準に過ぎない。実質的な減反をやめてコメの生産を増やす決断をしてもらえないか。その上で消費者価格を適正なものにしていくという両面の政策が必要だ」と訴えました。石破総理は、「所得補償制度そのものは否定しない」とした上で「どういう方々に納税者のお金を使って補償していくことがこれから先の日本の農業の可能性を広げることになるかについて徹底した議論を行う、今がその機会だ」などと答弁。打越議員は、徹底した議論を行っている間に日本の食料安全保障のためにと責任感をもって頑張ってこられた生産者の方たちが諦めることになりかねないと指摘しました。
介護・障害福祉従事者の賃金引上げをめぐっては、自民党の有志議員が医療・介護・福祉の現場を守る緊急集会を開き賃金を上げようとアピールしていることにも触れ、にもかかわらず立憲民主党などがすでに提出している「介護・障害福祉従事者処遇改善法案」の審議入りを自民党が反対していると問題視。自民党が参院選挙の公約に賃金引上げを入れる動きがあることをただすと、石破総理は「わが党の政策はわが党で責任をもって決める。財源をあわせもった改革、賃金引上げやっていきたい。対策はきちんと打っているが、公定価格であるがゆえに現場で実感していただくまで多少の時間はかかる」などと答弁。打越議員は法案審議をあらためて求め、「多少の時間がかかると待っている間に地域でどんどん介護崩壊が起こってしまう。それでいながら選挙になって『介護・障害・福祉従事者の賃金を引き上げる』というのは欺瞞だ」と断じました。
年金法案については、2040年の高齢化を展望して厚生労働審議会や厚労省が考えていた基礎年金の底上げをわざわざ削除した内容であることに、「就職氷河期世代の不安に応えていない。2057年度には基礎年金の所得代替率が3割も低下してしまうという、基礎年金の給付水準の低下を何とかするのが改革の本丸だったはず。2020年の年金改正法時から就職氷河期世代が低年金に陥ることは分かっていたのに手当てしてこなかったのは政治の責任」だと批判。立憲民主党は、就職氷河期世代や低年金者などを視野に入れた基礎年金の3割減に対する底上げ策の修正案を提出する予定だと述べ、総理らの賛同を求めました。

■森本真治議員
森本議員は、(1)米国関税対策(2)物価高対策について質問しました。
森本議員は「地元の広島に戻って話を聞いた。『トランプ関税をしっかりやってくれ』『物価高が大変』がほとんどだった。私たちは国民の声をしっかり届ける。国民の皆さんに安心を与えていく。わかりやすく国民に説明を」と政府に求めました。
(1)米国の追加関税について、赤沢大臣が今週末にも3回目の訪米と報道されたことに関連して、森本議員は、訪米の予定について確認しました。赤沢大臣は「調整中」と答えました。
森本議員は、米国関税について不安感が高まっていると指摘し、「政府関係者が取材を受けて、政府の方針がどんどん報道される。国会の中では話さなくても報道には話す」「いろいろな情報が錯そうして不安が高まっている。より丁寧なやりとりをさせてほしい」と政府に求めました。
森本議員は「新たな関税措置への方針は撤廃を求めるということでよいか」と確認したところ、石破総理大臣は「その方針」と答えました。
森本議員は「先週、アメリカから新たな措置が出てくることがあるとの発言があった。兆候があるのか」と問いました。赤沢大臣は「米国政府が今、医薬品、半導体について大統領令で調査をしていると承知している。調査の一定の成果が出た後に、新しい関税措置を打ち出したことがある。あるかもしれないという趣旨で申し上げた」と述べました。
森本議員は、「新たな関税の措置、交渉期限、時間を区切ってというよりも、成果を得る。粘り強くやる」と中国を例にあげて手法について問いました。
石破総理大臣は「貿易の内容が全く違っている。中国も貿易構造が違う。期限は念頭に置いて交渉するが、期限に拘泥するあまり国益を害することはしない」と答えました。
森本議員は「交渉が長期化することも十分に想定しながらになる。一方で長期化した場合にわが国に与える影響については、相談窓口を設置。実態を細やかに把握していく。今の実態経済が急激に悪化しているというよりは、先行き不安ではないか。実態経済の影響をどのように把握しているか」問いました。
武藤経済産業大臣は「不透明感、不安が広がっている。十分に認識している」と答えました。影響を見極めた上で躊躇なく行っていく。日本の自動車産業を万全に整っていきたい」と述べました。
森本議員は「業績などの悪化に対応するということ、貸付の要件緩和を行っている。中小企業の資金繰り支援、リーマンショック並の実態経済に合わせて、しっかりと見極めをしていきたい。経済が悪化してからでは遅い」と強調しました。さらに森本議員は「生産台数を維持したい。雇用に関係する。それでも生産台数を維持しようとすれば国内市場の活性化。販売促進を追加の対策として検討してほしい」
武藤大臣は「緊急対策のパッケージにも含まれている。大きく変わる時、蓄電池、国内立地を後押しする等対応していきたい」と述べました。
森本議員は「海外市場の新たな開拓も必要になってくる。1つはマルチの体制、多角的なRCEP、CPTPPの交渉の旗ふり、WTO改革で事務局長は相当、改革の旗振りの役割を日本に期待している。旗振りをやろうとしているのか」と問いました。
岩屋外務大臣は「委員ご指摘の通り」「RCEPの透明性のある履行は課題だと思っている。WTOの改革も日本がイニシアティブを発揮すべきと思う」と述べました。
森本議員は「この間、核兵器の問題でもそうだったが、日本の役割が期待されている」と日本が期待されている役割を果たすよう強調しました。
(2)物価高対策について森本議員は「エンゲル係数が43年ぶりの高水準」「先手先手で、見極める必要がある。立憲民主党は食料品の消費税をゼロにするという政策をまとめた。財源も責任にある根拠を示す」と予定されている党首討論で野田代表が明らかにしていくと党としての意気込みを述べました。
