【参院政倫審】裏金問題の自民党議員に政治的・道義的な責任があることを議決、参院議長へ報告へ
参院政治倫理審査会で5月4日、各党が意見表明を行い、立憲民主党からは吉川沙織参院議員が意見を述べました。そして、昨年の春以降に審査会で弁明した29人の自民党議員について、政治的・道義的な責任があることを全会一致で議決し、関口参院議長に報告書を提出することとなりました。
吉川議員の意見表明は以下の通りです。参議院政治倫理審查会審查意見表明令和7年6月4日 ただいま議題となりました29件について、意見表明を行います。 令和6年2月21日、参議院政治倫理審査会規程第1条及び第2条の規定に基づき、32名の議員について行われた審査の申立てを受け、同年3月8日の本審査会において、 全会一致で審査を行うことが決定されました。その後、申立てを受けた議員のうち3名から弁明の申出があり、同月14日の本審査会において、弁明及び質疑が行われた一方、同日の質疑に先立ち、その時点において弁明することを求めないとの意向を示した29名の議員について、会長から、審査会として全会一致をもって審査すると決定したことに鑑み、その出席を得るべく協議を続ける旨発言があった上、書面による出席の働きかけを行いました。 昭和60年に両院に政治倫理審査会が設置され、本院では初めてとなる実質審査であり、申立てをした野党4会派としては、その趣旨説明でも申し上げたとおり、「この場において個々人についてあげつらうのではなく、冷静な審査を行うことで、今回の問題の構造を明らかにし、二度とこうした事態を発生させないことにつなげたい」との思いを持ち、真摯に事案に向き合い、良識の府たる本院の自浄作用を発揮し、早期に国民の疑念の払拭と、政治不信の解消を図るため、出席を求めたいとの思いでした。 しかし、一向に出席が得られない状態が続き、常会の会期末も迫っていたため、令和6年5月17日には、審査会が審査するため、必要があるときに審査会の機能として認められている手続である規程第17条に基づき、未だ出席を得られていない議員の出席及び説明を求めることを全会一致で議決し、29名それぞれの議員に対し、規程に基づく議決を正式に行った旨、今度は公文書で通知しましたが、それでもなお新たな弁明の申出はありませんでした。幹事会では、いわば審査会の権威を貶めるとも言える状況について、相当厳しいやりとりをいたしましたが、最終的に、被申立議員の良識に期待するほかありませんでした。 ところが、昨年の第50回衆議院議員総選挙を経て状況は一転し、それまでは出席の意向を示してこなかった27名から、そろって一律のタイミングで、出席し、弁明を行うとの、他方で、第一会派の参議院幹部が年内に全員の審査を終えたいと記者会見の場で語るなど、これだけ深刻な問題を起こし、かつ、長期にわたり被申立議員の出席を実現しなかったにしては都合の良い話ばかり伝わってまいりましたが、幹事会は幹事会として、手順を踏み、結果的に、昨年12月18日以来、閉会中や年末年始を含め、1.3回に及ぶ審査会を開会し、27名から弁明を聴取し、丁寧に質疑を行ってまいりました。 被申立議員の出席をなかなか得ることができず、空白の8か月間が生じてしまったことにより、27人目の弁明質疑が行われたのが令和7年4月18日。1人目の弁明質疑が行われたのが令和6年3月14日であることを考えると、その時間の経過に虚しくなります。 この間、3年に一度の本院議員の通常選挙が近づき、与党と野党の違いはあれど、本院において初例となる本審査会の進め方について、法規の解釈をはじめとし、一つひとつ合意形成を丁寧に積み重ねながら誠実に取り組みを行ってきた現在の本審査会幹事会の構成で何らかの結論を出すべきであるとの共通認識に至りました。 昭和60年10月14日の本審査会の申合せによれば、申立てをした委員が委員でなくなっても、事案は残り続けることとなり、今回の事案についてどれだけ丁寧に議論し、合意形成を積み重ねてきたか、そういった経緯や重みについて、委員が変更になればもはや分からなくなってしまうと考えました。今回の事案に際し、野党の立場で申し上げれば、解散がなく半数改選である本院において、事案を残し続けることも選択肢として考えられなくはありませんでした。 しかし、実質的な案件を取り扱った今回の一連の動きは、今後、参照される初例となると考えられることから、将来的に政治倫理審査会が特定の会派により濫用されることがないよう、拙速な議論は避け、全会一致を基本とするという共通認識の下で、相互に歩み寄りながら、調整を行い、一定の結論を出すこととしたのです。 一方で、多くの課題も明らかになりました。例えば、本審査会規程は、第24条で会議録を作成すると規定し、事務局に保存することとされていますが、会議録の提供に係る規程は存在せず、よって公表される会議録もありません。本日の審査会においても、これまでの審査会と同様、公表される会議録はありません。冒頭、審査会を公開する旨の議決を全会一致で行い、また、これまでの審査会のインターネット審議中継についてはその場限りの中継でアーカイブを残さない運用としてきましたが、被申立議員の出席がなく、審査の結果を扱う今回に限り、アーカイブを残すことで合意しました。 しかしながら、法規に規定のある正式な記録である会議録と、そうではなく、あくまで広報の手段であるインターネット審議中継では雲泥の差があります。インターネット審議中継が正式な記録と位置付けられるかどうかについては、令和4年1月14日の議院運営委員会において、インターネット審議中継及びビデオ・オン・デマンドについては法規に規定はなく、会議の記録にはあたらないとされています。 被申立議員の弁明質疑は、その性質上、正式な記録である会議録の公表は難しくとも、今回のようにすべての弁明質疑が公開の下で行われ、その審査結果について被申立議員個人をあげつらうものでもないことから、せめて今回の審査報告について、規程上、同様の解釈が成り立つと解される情報監視審査会のように本会議における報告の実施を強く求めましたが、被申立議員所属会派である第一会派の否定的見解により実現は困難な状況です。 せめて、審査の結果ぐらいは、末尾掲載ではなく、会議の場で正式な記録である会議録に残すべきであるとの点については、先ほどの幹事会で大きな議論となったことは申し添えておきたいと思います。
こうした様々な課題がある中で、今回の結論には派手さはないかもしれません。また、被申立議員それぞれの弁明や答弁の内容に齟齬があつたり、法解釈に誤認があったり、真実とは考えにくい内容があったりしたことから、構造的な問題の解明に至ったかと問われれば、首肯できるものではありません。さらに、一連の弁明等において「秘書が」、「秘書に任せていた」などの発言が延々と続き、更には、まるで示し合わせたかのようにほぼ同様の構成からなる弁明や答弁が繰 り返される様子を国会のこの場で目の当たりにし続けたことは非常に苦しく、そ うした政治を少 しでも変えたいと思つてこの世界に飛び込んだ私自身、忸怩たる思いがないかと言われれば、否定はできません。
しか し、本審査会として事案を中途半端な形にせず、一定の結論を出すこととし、被申立議員に 「政治的 ・道義的責任がある」と認定することについては、被申立議員の所属会派である第一会派も含めて合意が得 られたことから、本日の議決に至ることとなりました。
なお、規程第 1条及び第3条を併せ読めば、今回の事案は「行為規範等の遵守の勧告Jには妥当することから、幹事会において大きな議論 となつた,点 でもありますが、今後の濫用を防 ぐ意味からも、全会一致を基本 とし、「政治的・道義的責任がある」と認定することについて議決することとしました。
今回の還付金をめぐる問題の発生が国民の政治不信を招き、政治倫理審査会等における関係議員の発言が政治不信を更に増幅 したことは想像に難 くありません。他方、国政の重要課題は山積 しています。我々は、世論が分かれる課題にも取 り組まなければなりません。
こうした中で、国会が最終的に出した結論に対 し、できる限 り多くの国民の皆様に納得していただくためには、その基盤 として、政治への信頼が欠かせません。
弁明に臨まれた被申立議員でさえも「こうした不記載のようなことをしていたら、どんなに良い政策を作つても信頼されない」と証言された方もおられました。まさに「信なくば立たず」であり、政治に携わる者全員が、改めて、肝に銘じなければなりません。今後、今回のような問題を二度と起こさず、政治に紺する信頼回復に至るよう、今回の事案の構造的な問題め把握については、引き続き実態解明に向けた取り組みが必要であることを申し上げて、意見表明といたします。
