参院本会議において6月18日、「政策評価等年次報告」の質問が行われ、立憲民主党から岸真紀子参院議員が登壇しました。予定原稿は以下の通りです。
立憲民主・社民・無所属会派の岸真紀子です。
ただいま報告がありました2024年度政策評価等の実施状況及びこれらの結果の政策への反映状況に関する報告について、会派を代表し質問します。
行政監視の年間サイクルにおける本会議報告及び質疑は、今回で6回目となります。本年は久しぶりに総務大臣以外の大臣出席の下で行政監視委員会の質疑を行うことができました。委員長並びに理事の皆さまのご尽力に敬意を表します。
引き続き参議院として行政監視サイクルを形骸化させることなく、真の行政監視機能を充実させる新しいサイクルのスタートとなることを期待し、質疑に入ります。
はじめに、先ほど報告を受けました政策評価を所管する総務大臣として、何のために評価を行っているのか、政策評価の目的や意義をお伺いします。
なぜそのようなお尋ねをするかというと、各府省が自ら行う政策評価は、いわば自己点検となりますが、その評価が適正なのかどうか。各府省自らが企画立案し、予算をつけ遂行している事業等なので失敗したとは言いづらいのかもしれませんが、あまりに評価そのものが形式的に感じます。政策評価は、政策の改善につなげていくことが重要であり形骸化させてはなりません。
評価は政策の立案者や執行者等の批判・非難のためではなく、そこからの知見や経験を政策の改善や今後に生かしていくという視点で行われるべきです。
不正や不適正な事案が生じてしまった場合にも、正直に公表し、積極的に改善させていくことが国民のための行政のあり方です。せっかく評価するなら事務的な点検だけではなく実効性のある評価を行い、どう改善されたのかを説明していくことが重要です。
村上大臣、各府省が自ら行う政策評価を形骸化させないための取り組み、特に、政策の改善にどうつなげていくのでしょうか。さらには国民への説明責任を果たせる評価にすべきと考えますが、如何でしょうか。
行政活動を検証し、その評価を行うには、大前提として公文書の適切な保存と開示が必要です。
2020年、日本学術会議の会員任命拒否事案は、従前の形式的任命との政府解釈を覆し、十分な説明もなく強行されました。この解釈変更の検討過程を記した文書の根幹部分について、本年5月に東京地裁が開示を命じる判決を出したにも関わらず、国は控訴し、日本学術会議法案の審議中に開示されることはありませんでした。
政府は情報公開法第5条第5号の規定を持ち出し「未成熟な記載があり、開示すると誤解や混乱を招く恐れがある」と開示をしませんでしたが、政府に都合の悪いことも含め開示することは、国民や国会による行政監視の重要な基礎となります。
政策のプロセスを透明化することで国民の知る権利の保障、説明責任の履行、公正で民主的な行政を推進することができ、結果として行政の取り組みに対する国民の理解も深まるのではないでしょうか。不十分な公文書であったとしても適正に保存することは、現下の改善だけではなく後世での検証を可能にすることができます。
公文書管理の徹底を求めるとともに、災害時の状況などは日本放送協会をはじめとする報道機関とも連携し、多様な映像記録を収集し、公文書として適切に保存・活用すべきと考えますが、伊東大臣の見解をお伺いします。また、併せて情報公開の徹底を総務大臣に求めます。
昨年6月21日参議院本会議において、2023年度政策評価等年次報告の質疑で我が会派の三上えり議員が質疑しましたが、2020年から各府省が取り組んできた新型コロナウイルス感染症対策を評価する必要があります。
気候変動の中、新たな感染症に備えるには、あの時、何が起き、対策として何をしてきたか、そして、実際の効果も含め感染症対策がどうであったかを政府として検証すべきです。
2020年2月に横浜港へ着港した「ダイヤモンド・プリンセス号」で救命活動に携わった災害派遣医療チームDMATを描いた映画が先週末から公開されています。民間や有識者に委ねるのではなく、政府としての検証は必須ではないでしょうか。
特に、自治体との関わりが重要であり、あの頃は国が方針を決めても実務の多くは自治体が担っていました。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではなく、自治体から証言を集めておくことが重要です。村上大臣、総務省の強みである自治体とのネットワークを活かし、新型コロナウイルス感染症対策をテーマに行政運営改善調査を実施してください。昨年はとても冷たく薄い答弁が議事録に残されていますが、次なる感染症に備えるためにも、国だけではなく自治体の目線で検証することの重要性を認識し、村上大臣に前向きな答弁を求めます。
次に、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)の観点で質問します。
党首討論で石破総理は政権としては検討していないと答弁されていましたが、自民党・公明党が参議院議員選挙で掲げる公約に物価高対策として給付措置を盛り込む方針で一致したと報道されました。
しかも、現金のほか、マイナンバーカード普及のための「マイナポイント」の仕組み活用を検討しているとあります。
簡単にマイナポイントと言っていますが、あの事業がどれだけ自治体に過重労働を強いたか理解しているのでしょうか。現金、口座振込の給付だけでも、すべての住民を対象としているので準備も含めて膨大な業務量であり、そこに、マイナポイントという選択肢を設けることで、事務はさらに煩雑化することになり自治体現場に混乱を来たすことは容易に想像できます。
過去のマイナポイント事業の行政事業レビューシートでも、制度設計の稚拙さや自治体における成果や課題の検証、分析が必要と指摘され、総務省も指摘を踏まえる旨を明言しています。
村上大臣、これまで実施したマイナポイント事業の検証は行ったのでしょうか。また、行政運営改善調査として、自治体から丁寧に聞き取り、検証すべきと考えますが、如何でしょうか。
私は、2020年9月から始まったマイナポイント事業(第一弾)から指摘してきたところですが、1,718市町村の中にはキャッシュレス決済サービスを利用することが困難な「人」や、キャッシュレス決済を使えるお店がない、若しくは店まで数十㎞離れているなど利用できない「地域」があります。マイナポイントだと公平性に欠けると過去の委員会でも指摘してきました。全国あまねく地域経済が恩恵を受けられるように考えることも重要ではないでしょうか。それなのに、結果的にマイナポイントによる地域経済への恩恵は偏ってはいませんか。
村上大臣は、マイナポイントによるキャッシュレス決済があまねく地域経済に行き渡っているとお考えでしょうか。また、マイナポイントをチャージする事業者別の申込人数や付与額は、第1弾の申込人数が全体で2,534万人に対し、上位3事業者だけで1,288万人(50.8%)、第2弾の申込人数が全体で5,022万人に対し、上位3事業者で2,806万人(55.9%)となっています。総務省に照会したところ小売店までは把握できないと回答を得ましたが、事業者別申込人数を見ただけでも、企業に偏りが生じたと考えますが、この指摘をどのように考えますか。
政府は2020年4月以降、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」としての1人10万円支給の「特別定額給付金」から始まり、2021年には、半分現金・半分クーポン券と言って自治体に混乱を生じさせた「子育て世帯への臨時特別給付」や「低所得者への10万円給付」、2022年の「低所得者への5万円給付」、2023年の「低所得者への3万円給付」、2024年の定額減税のハザマの方々への給付など、毎年、自治体が本来は裁量をもっているはずである「地方創生臨時交付金」等から支出せよと国が一方的に決定し、実務を自治体に担わせてきましたが、臨時的な各種交付金の効果検証は行っているのでしょうか。伊東地方創生大臣にお伺いします。
併せて、今後の行政改善につなげるには、行政運営改善調査のテーマにすべきと考えますが、村上大臣の答弁をお願いします。
何の検証もせずに、膨大な予算と自治体職員の業務量をつぎ込むことは如何なものかと考えます。政府が政策決定する際には、予め自治体の意見を聴取して決定することを徹底していただきたいと強く申し上げます。
4月14日の行政監視委員会質疑でも要請したところですが、就職氷河期世代への国の支援策を行政運営改善調査のテーマに選定していただきたいです。6月9日の参議院決算委員会においても、国会法第105条の規定に基づき、「就職氷河期世代支援施策の実施状況等について」会計検査院へ要請してはいますが、総務省による評価としても実施すべきと考えます。
就職氷河期世代への支援は与野党問わず重要と捉えています。行政監視委員会でも前向きな答弁をいただいているところではありますが、この場においても、村上大臣の力強いご答弁をお願いします。
今年は、関東大震災から102年、阪神淡路大震災から30年、東日本大震災から14年となります。震災により犠牲となられた全ての方々の御冥福をお祈りします。
総務省は昨年8月に「地域における住民の防災意識の向上(災害教訓の伝承)」の調査結果を公表しました。防災の基本は、災害に備え日頃からできる対策を講じることであり、災害発生時にご自身で安全を確保し、被害を最小限に抑えることが重要です。国や地方自治体といった行政も対策は必要ではあるものの、やはり重要なことは、住民の主体的な避難行動や備えです。命を守るには住民一人ひとりの行動が必要で、災害教訓への伝承は欠かせません。
今回の結果に「住民による災害教訓の伝承活動を取りやめる地区が増えている市町村がある」「どのように支援を行えばよいか分からないとする市町村がある」といったことが指摘されています。
坂井防災担当大臣は、指摘を踏まえ災害教訓の伝承に向けて具体的にどのように取り組むのかお伺いします。また、災害教訓の伝承の取り組みについても、政策評価や行政事業レビュー等でのモニタリングの対象に組み込んでいただきたいと考えますが、如何でしょうか。
科学が発展した現在もいつどこで災害が起こるかはわかりません。日本は地震列島とも言われています。首都直下型地震や南海トラフ巨大地震は、広範囲に甚大な被害を受けることも想定されています。
先日、政府は、南海トラフ巨大地震について、今後10年間の減災目標として死者数を概ね8割、全壊・焼失する建物を概ね5割、それぞれ減らすと方針を固めたと報道されました。
しかし、個人の建物等への対策は進んでいないのが実情です。巨大地震に備え、災害後の対策だけではなく、個人等への防災・減災対策に本気で取り組むことが必要です。減災目標に向け具体に何をするのかも含め、坂井大臣にお伺いします。
石破政権が看板政策に位置付ける地方創生の推進に向けた「地方創生2.0」に居住地以外で継続的に関わる自治体を登録する「ふるさと住民登録制度」を創設すると発表されました。これはどのような制度なのか、村上総務大臣に伺います。
また、地方創生という意味だけではなく、首都直下型地震などを勘案すると東京の過密状態を緩和することが重要ではないでしょうか。そういった意味からも、地方滞在でテレワークをするなど、防災の観点からも過密緩和が重要と考えますが、坂井防災大臣の見解をお伺いします。
結びに、行政の不適切な活動を国会で質すことには与野党の別は関係ありませんし、国民にとってより良い行政とするために改善していく努力を重ねていくことは重要です。引き続き、たゆまぬ努力を行い、行政監視機能を強化していく決意であることを述べ、質疑を終わります。
以上
