16歳のときに自殺未遂で車いすユーザーになった豆塚エリさん。「とにかく生きてほしい」と力を込めて語りかけます。今の社会をどう見るか、今を生きる若者へのメッセージを語っていただきました。
罪悪感は社会からの刷り込み
――コロナ禍で女性の自殺者数が増えました。
日本の女性は元々自己肯定感低めに育てられていると思います。自分も実感しますが、働きにくいし、子どもを抱えたら男性は逃げられるけれど女性が逃げられないということがままあります。世の中の構造として女性自身が罪悪感を持ちやすい状況があると思います。
一方で、フェミニズム運動や、長年にわたって女性の権利を勝ち取ってきた人たちがいて、その人たちの教えがあるわけです。心の拠り所になる教えというか、フェミニズムにぜひ触れてみてほしいと思います。生き方が変わるのではないかと思います。
自分が自分に一番厳しく罪悪感を持ってしまう、自死ってやっぱり何よりもそこじゃないですか。でも、それは社会から刷り込まれているものだから変えられるんですよ。身体は本当に生きたかっているはずなので、そういう思い込みをどうにかとっぱらっていく、そこにフェミニズムは絶対重要だと思うし、そこを学べばもっと人を頼れるようになると思います。
みんなで支えあって生きていこうよ
――今の社会をどう感じますか
当時と比べると、今はユニバーサル、インクルージョンは進んでいるかのように言われていますが、根幹の部分はもっと冷たくなっているような気がします。障がい者の中でも格差が広がっているイメージですね。富める人は富めるし、貧しい人は貧しい。それを全部自己責任だからと、障がい者の世界も同じようになっているような気がします。せっかく日本にはまだ地方の共同体が残っているのですから、「みんなで支えあって生きていこうよ」というのをもっとやってほしいです。
答えを早急に求めずに、粘り強く関係を
――政治に求めることは
「ちゃんとしてくれ」しかありません。とにかく「ちゃんとして」「嘘つかないで」と。野党に対してあえて言うこととすれば、野党共闘路線で多様性を保ったまま同じ方向で戦うということをしてほしかった。
政治に求めるものは、誠実さですし、どうしても数字となりがちですが、人が生きるということは一体何なのかっていうところですよね。野党同士でもこれだけ喧々諤々になってしまうということは、格差によってそれくらい層が完全にパキッと分かれていて、いる場所が全く違うから分かり合えないのだと思います。一緒にならなくていいのですが、共感の気持ちを持つこと、寛容になること。答えを早急に求めずに、粘り強く関係していくことを政治に求めたいです。分かりすいものが求められていますが、そんなに分かりやすいものじゃないと思うんですよ、人間って。そこに耐える力を政治が持ってほしいです。
とにかく生きてほしい
――若者へのメッセージを
とにかく生きてほしいんですよ。つらいとは思うんですが、それしか言いようがなくて。大人になればもっと生きやすくなります。とにかく生き抜いてください。大人になったら多分生きていけると思います。
「もう生きている価値なんかないんだ」「リセットしたい」とか思っちゃうんだけど、まあまあどうにかなるんですよ。決して思い通りにはならないですが、どうにかなるっていうことを信じること。それを自分に許すこと。
政治も、主義主張はありますが、理想だけではどうにもならないんですよね。でもどうにかしなきゃいけない。もっと地に足をつけるべきだと思います。理想は持っていていいのですが、頑なにならず、どうにかしていかなければいけないということを忘れないでということですよね。それが生きるということだと思います。