現在、日本の小中学校の学習指導要領では、「妊娠の経過は取り扱わない」とする、いわゆる「はどめ規定」があることから、学校現場で性に関する包括的な知識を得る機会や環境が不足しています。子どもたちが性被害を認識できない、正確な知識の不足から望まない妊娠、中絶に至るといった深刻な影響を受けていることが指摘されています。

 日本での人工中絶の件数は、年間で約12万6千件。その内18歳未満は約2500件(2021年度)でした(※1)。

 また、特にコロナ禍以降、性感染症の梅毒が急増し、ニュースでも取り上げられるようになってきました。梅毒は早期の薬物治療で完治が可能ですが、放置すると脳や心臓に合併症を起こす危険な病気です。梅毒の報告数は2010年には621件だったのが2022年には1万件を超えました(グラフ参照)。そのうち15歳から19歳の報告数は2014年までは2桁でしたが、2015年以降、特に女性の感染が急増し3桁で推移し、2021年には168件でした(※1)。背景には性感染症に関する知識不足があり、包括的性教育の必要性が指摘されています。

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 厚生労働省「性感染症」「梅毒(ばいどく)が拡大しています。」

 性教育を行うことを、「寝た子を起こす」「性的に積極的になってしまうのでは」と揶揄されますが、多くの研究で、きちんとした性教育を行う事で子どもたちの早熟な性体験を遅らせる結果になったことが証明されています(※2)。 ユネスコなどが2009年に作った性教育についての指針「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の中で「包括的性教育」という用語を使い、「ジェンダー」「暴力と安全確保」など8つのコンセプトに基づく性教育を提唱しています。

 立憲民主党は「はどめ規定」を撤廃し、包括的性教育が実践できる環境整備などに取り組んでいきます。

・立憲民主党は、すべての人のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の実現を目指します。
・女性が、子どもを産む・産まない、性的指向・性自認(SOGI)等にかかわらず、また人生の段階に応じて、健康保持・向上のために必要な支援を受けられるよう施策を拡充します。
・望まない妊娠や中絶を減らし、性犯罪の被害や加害を防ぎ、本来の自分の意思に基づいた自己決定ができるよう、自己決定権を尊重する包括的性教育を行います。性暴力・性虐待被害者や若年妊娠等について、迅速に必要なサービスにつながるよう、他の行政機関や民間団体との連携を強化し、包括的な支援を提供します。
・アフターピル(緊急避妊薬)を処方箋なしで薬局で購入を進めます。セーフアボーション(中絶経口薬)が速やかに承認されるようにします。

※1 令和3年度 衛生行政報告例概況(厚生労働省)

※2 Are young people who get sex education more likely to be sexually active?