立憲民主党「子ども・子育てプロジェクトチーム(PT)」は24日、国会内で会議を開き、日本の少子化対策について中央大学文学部教授の山田昌弘氏から話を聞きました。

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 同PT座長の大西健介衆院議員は冒頭のあいさつで、麻生財務大臣が18日の衆院財務金融委員会で、少子化の原因について「一番は、『結婚して子どもを産んだら大変だ』ばかり言っているからそうなる」などと発言したこと、児童手当のうち高所得世帯向けの「特例給付」について、政府が縮小、廃止を検討していることに触れ、こうした立場とは異なる、立憲民主党としての議論を進めていく考えを示しました。

 山田氏は、「日本で少子化対策はなぜ失敗したのか―コロナ後の家族は変わるのか?―」と題してリモートで講演。日本は合計特殊出生率1.5以下が25年以上続き、少子化が進展していることに「短期的なリスク回避して長期的リスクを考えないのが日本社会の特徴」だとも問題提起しました。

 その上で、日本の少子化対策失敗の原因としてまず、「未婚者の心に寄り添った調査、分析、政策提言ができていなかったのではないか。多様な未婚者の生の声を聞くことを怠っていたのではないか」、特に「『大卒、大都市居住、大企業勤務』に偏った政策が行われ、『非大卒』『地方居住』『中小企業労働者、非正規雇用者、自営、フリーランス』の声が届いていないのでは」と指摘。日本での従来の調査、分析、政策提言の問題点として(1)欧米に固有の慣習や価値意識を、日本にあてはまるものとして前提にしたこと(2)日本人に特徴的な慣習、価値意識を考慮しないこと――の2つの観点から説明しました。

 具体的には、欧米固有の「若者の親からの自立志向」や「仕事は(女性)の自己実現であるという意識」「恋愛感情を重視する意識」「親の子育て責任は成人までという意識」と、日本人に特徴的な「『リスク回避』傾向」「世間体重視」と、前提となる慣習、価値意識が考慮されないため、例えば、欧米では自立志向が高いため「結婚や同棲は経済的に楽になる手段」である一方、日本では「結婚して新しい生活を始めることは、(親との同居生活よりも)生活水準を下げるイベント」になっていると解説。結果として、欧米では、子どもを育てながら働き続けられる「女性の両立支援」が効果を持つが、日本では、仕事による自己実現よりも豊かな生活をし、子どもを立派に育てること、恋愛感情よりも経済生活を優先する傾向にあることから、「両立支援」を中心とした少子化対策は「空振り」に終わると評価しました。

 さらに、日本社会のリスク回避(安定)志向と世間体意識により、結婚に対し「独身時代の生活と比べて、結婚後の生活がよくなるかどうか」「自分が育った以上の環境を、子どもに提供できるか」という2つの意味を求めており、経済的な心配はなかった1980年代までは結婚が容易にできたが、1990年代以降、中流転落といった経済的な不安から結婚難になっていると分析。あわせて、出会いの減少や、恋愛へのあこがれの消失もあり、このまま進むと親同居未婚者の中高年化が20年後の最大の問題になるのではないかと指摘し、若者が結婚しやすい条件を整えるためには、どんな仕事に就いていても、誰と結婚して子どもを育てても、将来中流生活が送れる保証「経済的安心」が必要だと説きました。

 講演後、若者が結婚しやすい条件として雇用をはじめとする社会保障制度のあり方をどう考えるのか等について意見を交わしました。

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 会議の後半は、税制改正要望等について全国学童保育連絡協議会から「学童保育の現状と課題」についてヒアリング。同協議会の西田隆良会長は、学童保育の課題としては(1)深刻な指導員不足(2)施設の問題点(国の省令基準を満たしている施設は全体の60%にとどまるなど)(3)制度上の問題点(保護者の負担軽減と、市町村負担の軽減が必要)――を挙げ、新型コロナウイルス感染症対策に関する政府への要望事項についても報告しました。

 出席議員からは、民間による学童保育経営に関する現状や課題、学童保育の現場でのコロナの集団感染の有無、学校施設との連携などについて質問があり、施設や指導員の質と量の向上に向けて連携して取り組んでいくことを確認しました。