政府は15日、2020年度COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策予備費から7418億円を支出することを閣議決定しました。各都道府県が、営業時間の短縮(時短)要請に応じた飲食店への協力金の支払いに活用できる「協力要請推進枠」として地方創生臨時交付金に充てる方針です。

 これを受け同日の衆院予算委員会理事懇談会では、政府から予備費の執行に関する説明を受け、質疑が行われました。終了後、予算委筆頭理事の辻元清美議員、次席理事の奥野総一郎議員らが審議内容について記者団に報告しました。

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 冒頭、辻元議員は、同日閣議決定した予備費の執行7418億円に関する質疑に加え、12月11日に閣議決定したGoToトラベル事業関連の追加予算3119億円、同月25日に閣議決定した医療機関に病床を確保する費用など約4800億円の予備費の執行状況等について確認したと報告。同日の政府の説明では、12月11日の時点でGoToトラベル事業よりも医療支援を先にすべきと求めていた野党の指摘通り、25日に付けた病床確保名目の予算での申請はわずか5件にとどまっていることが明らかになったと述べ、政府の対応と、その予算を追従するだけの与党の姿勢を問題視しました。

 2020年度第3次補正予算案をめぐっては、GoToトラベル事業関連費1.1兆円が計上されていることから、第1次補正予算のときには閣議決定後に予算を組み替えたことにも触れ、与党に「了とするのか」と生活支援のための予算への組み替えを迫ったが、与党議員から明確な回答はなかったと発言。「内容的にコロナ禍の今の時期に組む予算として不十分であり間違っている。財政法上的にも本予算を小さく見せるために本予算に入れるべきものをねじ込んでおり、改めるべきだ」と指摘しました。

 理事懇談会ではまた、通常国会開会での審議にあたり、第3次補正予算案の十分な審議と、「桜を見る会」前夜祭の問題をめぐり安倍前総理の証人喚問と明細書・領収書の提出、「日本学術会議」の会員任命拒否問題に関与したとされる杉田官房副長官、大手鶏卵生産会社の元代表からの現金授受の疑いがある吉川・元農林水産大臣(13日に自民党を離党)の参考人招致を求め、与党側は検討する旨応じたと報告しました。

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 奥野議員からは、理事懇での、(1)予備費7418億円の時短協力金(2)病床確保支援金の執行状況(3)GoToトラベル事業予算の執行状況――についての質疑の主なやりとりを紹介しました。

〇時短協力金

奥野)菅総理は「営業時間の短縮など緊急事態宣言対象地域と同様の対策を取る場合には、宣言対象地域外でも同等の措置をする」と表明したが今回の予備費には含まれていない。どう対応するか。
政府)西村経済再生担当大臣が「緊急事態宣言対象地域に準ずる地域」だと認定すればそうした措置がとられる。
奥野)自治体からの要請はないのか。
政府)現時点では、要請はあるかもしれないが、「準じる地域ではない」と判断している。
奥野)時短営業に協力している飲食店と直接・間接の取引のある事業者への40万円、個人事業者への20万円の一時金が支払われると報道されているが、予備費に入っていないが、この財源は。
政府)財源は、今日で打ち切られる家賃支援の予算数千億円を振り替える。予算規模については精査している。この積算根拠は年間の固定費をベースにし、その2カ月分にあたるもの。
奥野)持続化給付金と同じ積算根拠であり、そうであれば2カ月では短い。再支給の可能性はあるのか。
政府)必要があれば再度の支給はあり得る。
奥野)小出しにするよりも長期的な視野で、また一時金では全国一律でなく範囲も狭い。売り上げが減ったところは持続化給付金にしてはどうか。
政府)回答なし

〇病床確保支援金

奥野)年末の12月25日に「できるだけスピーディーに(対応するように)」と申し上げたところ、「国が直接執行するので2、3週間でお金がおりるはず」とのことだった。今日はちょうどその3週間目だがどうなっているのか。
政府)申請は21件で(2700億円もの予算を付けておきながら)、実際にお金がおりたのは5件でわずか2.5億円。

〇GoToトラベル事業関連予算3119億円

奥野)当時の説明では年末年始の需要に応えるためとの話だったので、このお金を医療支援に回すべきではないか。
政府)(一時停止により発生した)キャンセル料が発生したので、そこに充てたい。キャンセル料については、数字を持っていない。未使用な部分はいずれ使うことになるので、残っていたとしても回す気はない。

 奥野議員は、今回の時短協力金について菅総理の発言と食い違いがあることや、医療支援が進んでいないことなどを批判。GoToトラベル事業の対応をめぐっては「まったくナンセンスだ」と断じました。

 予算委理事の共産党の藤野保史議員は、病床確保の予算の執行が2700億円のうち2.5億円とまったく執行されていないことに、「1000分の1であり、本当に目詰まりしている。『病床』という名前に象徴されるように、ベッドや人工呼吸器といったものに着目した支援のやり方が破綻している。病院経営全体を支えるという視点がないことが、この結果に表れている」と指摘。また、第3次補正予算案そのものが緊急事態宣言前のものだとして、「宣言を受ける前後で国民の生活は大きく変わっているにもかかわらず、予算は変えないことに大変違和感がある」と述べました。

 同じく理事の国民民主党の西岡秀子議員は、時短協力金を地方創生交付金の枠内で対応していることに、場当たり的な対応で地域によっても不均等が生じると批判。今後、感染状況次第では時短要請から休業要請になる可能性もあるなか「予見性をもって予算をつけてもらいたい」と注文を付けました。