「感染の再拡大の予兆を掴むには、無症状者に対する検査が欠かせない。そうであれば、もっと気軽に検査を受けられる体制を」――青木愛議員。15日午後、参院の予算委員会で内外の諸課題(デジタル社会・情報通信行政、ワクチンの接種体制等)についての集中審議が行われ、青木愛議員が質問に立ちました。青木議員は、緊急事態宣言解除等を見据えた感染拡大防止策やワクチン集団接種の見通しなど、主にCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)への政府の対応に関連したテーマを取り上げました。

■緊急事態宣言の解除

 質問の冒頭、青木議員は緊急事態宣言について取り上げ「はじめから『解除ありき』ではありませんか」と菅総理をただしましたが、菅総理は、これまで通り「客観的数値に基づき、専門家の意見を伺った上で、最終的には私が判断する」という答弁を繰り返しました。青木議員は政府に対しできるだけ慎重な対応を求めました。

■今後の感染拡大防止について
  1. 「もう一歩踏み込んだ感染拡大防止策」とは何か

     新規感染者数の下げ止まりや、変異株の拡大などが報じられる中、今後、感染拡大を抑え込むための「一歩踏み込んだ対策」は何か、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長に尋ねました。尾身会長は「感染拡大を抑えるには、国・自治体と市民、両方の協力が必要。現状は、ここまで下がってきてから微増の状態。クラスターが多様化し、感染拡大は、これまでの飲食中心から職場や、感染経路の実態が『見えない拡大』に変化しつつある。なぜここに来て再び増えてきているのか、その原因に関する共通の理解を皆で共有する必要がある」と述べました。その上で、今後の感染拡大を抑え込むには、(1)しっかりとした現状把握(検査体制の充実)(2)重症化へのしっかりした対応(3)変異株の拡大加速を前提とした対応(4)どこに感染が集中するかについて、国民に向けたはっきりとした政府メッセージ――が必要だと述べました。また「そうしたメッセージを発して初めて市民の協力が得られる」とも述べました。

  2. 無症状者への検査

     尾身会長の答弁を受けて青木議員は一般に感染症予防の3原則として知られる(1)感染源の特定(2)感染経路の特定(3)個人の(病気に対する)抵抗力の増強――を取り上げました。その上で、(1)の感染源の特定に必要な無症状者に対する検査(モニタリング調査)を、今後どのように進めていくのか、また、そのためには欠かせない民間機関との協力をどのように進めていくのかただしました。これに対し西村康稔経済再生担当大臣は、「無症状者への検査を繁華街や団体の協力の下で進めていく。少なくとも1日あたり1万件を目指す」と答弁。また民間機関との協力について尾身会長は「以前と比べ、少しずつ増えてきている。重要な時期に差し掛かっているので、民間の善意に頼るのではなく、国が率先して大きな方針に基づき指示を行う必要がある。例えば検体の内『何割は変異株の検査に充てる』等、明確なメッセージを打ち出す必要がある」と答弁しました。

■ワクチンについて

 感染症予防の3原則の「(3)個人の(病気に対する)抵抗力の増強」に対応する政策として、ワクチン接種について政府の対応をただしました。

  1. 日本は「集団免疫」を目指しているのか

     まず青木議員は、導入予定のワクチンは「感染しても発症しなかったり、重症化を防げるという効果はあっても、感染自体を予防したり、他人への感染を防ぐ効果はないと聞いている」と述べた上で、それでも日本政府は、いわゆる「集団免疫」の獲得を目指しているのかと田村憲久厚生労働大臣をただしました。田村厚労大臣は「(ワクチンの効果については)その通りだ。『感染しない、させない』効果に関しては未確認だ。その意味では、集団免疫の獲得は考えていない」と集団免疫獲得の意図については否定しました。

  2. いわゆる「ワクチン・パスポート」について

     イスラエルなど一部の国が導入している、いわゆる「ワクチン・パスポート」(※)について、自民党幹部が週末のテレビ番組で「日本もいずれそうなる」と発言したことについて、田村厚労大臣らをただしました。田村大臣は、ワクチン接種があくまで訓示規定に基づくもので「本人が決めることだ」と説明。また河野太郎ワクチン担当大臣は「国内での(ワクチン・パスポートの)使用は考えていないが、国際的に議論になれば、日本としても検討せざるを得ない」とは述べたものの、その場合でも「国内で使う事は考えていない」と答弁しました。
    ※ワクチン接種についての公的な証明書。取得者にはジムや映画館やコンサートホール、ホテルの自由な利用や、旅行等を認める内容。

  3. 集団接種計画の見通しについて

     新型コロナワクチンの国内での接種完了の見通しについて、河野ワクチン担当大臣をただしました。河野大臣は「EUの輸出承認が前提だが、高齢者については6月一杯までに約3,600万人に2回ずつ接種するだけの供給が入って来る。あとは自治体の接種スピードに合わせて供給していく」と答弁しました。

■国民への一律現金再給付など、その他のテーマ
  1. 国民への一律現金再給付

     国民への一律現金再給付について、青木議員は「やはり国民の皆様の安心は現金にある。こういう時にこそ、国民の心に潤いを与えてほしい。現行の支援策の実態は、公平な支援にはなっていない」と述べた上で、一律現金再給付について菅義偉総理の見解をただしました。菅総理は既存の生活困窮者に対する政策を引用した上で「全国的な現金の再給付は考えていないが、困窮者への対応はしっかりやっていく」と、述べるに留まりました。

  2. その他のテーマ

     青木議員はこの他、(1)コロナ向け病床の増強見通し(2)コロナ禍における大学教育のあり方(3)救急隊員や介護士への特別(危険)手当――等のテーマを取り上げました。

 最後に、青木議員は「この議論や尾身先生のお話を総合すると、やはりこのモニタリング調査(が最も重要)かなと。検査を広げて、感染源をこれ以上拡大させないように抑え込むことが肝要なのだと思う。早期発見で重症化を防ぐ意味では国民の利益にも資する所もある。もっと気軽にこういう検査を受けられる体制を作って頂きたい。そして国民にさらに要請する時には一歩踏み込んだ、さらなる十分な補償と合わせて頂き、感染症対策の3原則をしっかりと進めていただきたい」と要望し、この日の質問を結びました。

20210315_134436_rsz.JPG