東日本大震災・原発事故から 10年を超えて それぞれの「あの日」から
小沢一郎 衆院議員(岩手県3区)

 災害は忘れたころにやってくる。自然の力を人間の力でもって完全にコントロールすることは不可能。災害が必ずくることを念頭において、人命や貴重なものが失われることのないよう処置を講じておくことが大事だ。防災、災害復興で政治家が肝に銘ずべきことを小沢一郎議員に聞きました。

災害は必ず起きることを念頭に置いた備えが一番大事

――復興再生、防災で政治家が肝に銘ずべきことについて 二点大事なことがある。まず第一に、用意周到な備え。災害そのものは避けられないし、それに完全に打ち勝つことも難しい。だから災害が起きた時、被害を最小限に食い止め、何より「人命」を守る方法を考えなくてはならない。中でも、住居の高台移転は極めて重要。大津波が来た場合、地域民にすぐに知らせ、円滑に避難させるための用意周到な訓練、備えを常日頃からしておくこと。災害は必ず起きるということを常に念頭に置いた準備が一番大事だ。

 東日本大震災の際、岩手県では、大きな津波が押し寄せたにもかかわらず、ほとんど被害のなかった地域がある。明治時代に大きな津波に襲われ、ほぼ全家屋が被害に遭ったその地域は、自らの被災体験から、居住地域を全て高台に移す大胆な決断をし、そのおかげで10年前の大震災で津波が来ても無事だった。教訓を活かすことの大切さを教えてくれる。

 また、10年前の東日本大震災は津波・地震の災害だったが、沿岸では最近、大規模豪雨災害も起きており、海岸線の津波対策と同時に、河川対策についても根本から考え直さなくてはならない。つまり、津波や豪雨災害など、起きた災害に合わせて総合的な対策が必要である。結局は、繰り返しになるが、自治体、地域住民を含め、常日頃から備え、訓練しておくことが何より重要だ。

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地域に防災の予算、権限と実行を与え任せること

 もう一つは、地域にもっと防災の予算、権限と実行力を与え、任せることが大事。これは国全体の行財政の大改革になるが、それをやらなければ、ただ予算だけを使っても成果が上がらないだろう。現に今も被災地は、復興がまだまだ道半ばだ。人口減少も止まらない。そういうことも含め、何が地元で一番必要なのかを考えることが大切。中央官庁に任せていたのではだめだ。

 例えば、復興にあたっては、当面の住まいを建てたり、上下水道の設備や電気、その他のインフラ整備もしなくてはならない。震災後、私の地元岩手県にも相当数の仮設住宅が建設されたが、ほとんど東京の建築業者が受注し、中央の家屋仕様のままに建ててしまった。寒冷地の事情を何も知らなかったから、建付けや水道設備などが北国仕様になっていなかった。当然冬になり修繕したが、全くの無駄、二重の投資になった。

 また、「土地がない」という理由から、仮設住宅の建設がものすごく遅れた。当時、東京から業者が来たが、土地探しは思うように進まなかった。暫定的でもいいから、財源を全て地方に渡して任せていれば、県庁、市町村、地元業者達は、自分たちで仕事を行うということになるわけだから、土地なんかすぐ探してくる。当然、北国の寒さも知っているから、それに合う仕様で建設する。地元にも予算が落ち、復興そのものが円滑かつ早急に進むということが十分できたはず。 

 東日本大震災からの復興こそ、官僚主導の縦割り行政を改革し、地方に「予算」と「権限」を与えるという民主党の主張を実現する上で、一番良い機会だった。だが、残念ながらその機会を逃してしまった。政権を担っていた時の政治家の責任は大きい。

 民主党のマニフェスト全体について言えることだが、選挙で訴えたことは、政治家はできる限り実現しなくてはいけない。もちろん人間だから、100%できるとは限らない。100%できなくたっていい。それでも国民との約束を愚直に守り、努力することが何より尊く、その姿が国民からも理解される。いつでも私はそう思っているし、周りにも言っている。我々国会議員は、そのことに改めて考え思いを馳せなければいけない。これが将来に渡っての一番の教訓だ。

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原発は事故になったら、どうしようもないことを肝に銘ずべき

――原発事故災害被災地域の復興を、政治はどう進めるべきか 原発は沿岸部につくるものだから、地震による津波が当然想定される。現在、フランスでも原発の臨時発電機の取り付けを全基におこなっていると聞く。うまく行くかどうかは別にして、前もって最悪の事態を想定して、日頃から周到に準備しておくことを第一に考えなければならない。

 だが、基本的に原発事故は、ひとたび深刻な事故に至ったら、もうどうしようもない。特に国土の狭い日本では致命的な事態になる。ところが、福島原発の事故後、それを教訓として原発を止めると決めた国はドイツだけだった。

 原発事故の当事国であると同時に原爆の唯一の被爆国である日本は、未だその結論を出せぬまま、原発依存の社会を継続している。現在ドイツは原発を年に原則1基以上廃棄している。ただし、高レベルの放射性廃棄物の処分場がないから、それが悩みの種。他人事ではなく、日本も一日も早く核のゴミの処理施設をつくって、原発を廃止していくべき。太陽光でも地熱でも風力でも、新しいエネルギーはいくらでもあるし、関連技術も進んでいる。

 電力会社は相変わらず原発ゼロに反対と言っているが、気にする必要はない。彼らは基本的に会社が立ち行けばいい。つまり、「原発の処分一切合切全部、会社でやれ」と言われたら、それはかなわないというだけの話。それで現在、電力会社、官僚、学者、政治家――の4つの利権集団、原発マフィアが原発廃止に反対しているというのが真相。その利権の岩盤を打ち破らなければいけない。

 そのためには、何より国民の幅広い理解を得ると共に、電力会社をはじめ関係者を納得させる必要がある。説得のポイントを簡単にいえば、今後の放射性廃棄物の処理等、廃炉に関わる全てについては、政府が前面に出て、責任をもって行う。また、電力会社の経営の新しい柱となる新エネルギー開発に国を挙げて取り組む。予算も大胆に注ぎ込むと。それなら電力会社も文句はないだろう。いずれにせよ、日本の将来を考えれば、原発は速やかに廃止すべきあり、そのためには何より政治が決断して、思い切ってやらなければダメだ。