東日本大震災・原発事故から 10年を超えて それぞれの「あの日」から

木戸口英司 参院議員(岩手県)

 被災時、岩手県知事の政務秘書を務めていたという木戸口英司議員。県庁時代、そして国政に転じてからも一貫して災害対策の強化に取り組んできた木戸口議員に震災当時の対応、国会での取り組み、今後の課題などについて聞きました。

オール岩手の体制で震災対応に取り組む

――発災時の様子について 達増拓也岩手県知事の政務秘書を務めていた時に被災しました。県庁舎の外にいたのですが、駐車場から車を出せなくなり、走って県庁まで戻りました。達増知事がすぐに災害対策本部を立ち上げたので、その体制作りや情報収集のサポートにあたりました。盛岡市内は停電していましたが、県庁に補助電源があったので、唯一電気がついていました。ニュース映像も情報もなかなか入らない中、岩手県警のヘリが飛び、被災地の映像を県庁の内線に伝えてきました。町が海に浸っているなど、非常にショッキングな映像でした。

 災害対応で岩手県は、被災自治体の首長や県内の各種団体、各界各層の代表者からなる対策会議を設けました。そこでさまざまな意見を汲みあげて対策を練ると同時に、各種団体が役割分担し、復旧復興にあたりました。他県では東京から有識者を招いて組織をつくり対応したという事例もありましたが、岩手県ではオール岩手の体制を構築しました。フェイス・トゥ・フェイスで会議運営したことによって、地元のニーズを正確に把握できたので、国に対して具体的な提案をおこなうことができました。

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制度の枠を超えた提案を、国に積極的におこなう

――災害対応における県と国との役割について 例えば、仮設住宅の建設については、公的な土地に建てることが国のルールになっていました。被災者はふるさとから遠く離れることを望みませんので、沿岸付近で探さなければなりません。ところがリアス式海岸の土地柄、沿岸付近に平地が少ない。公的な場所の中で津波の被害に遭わないような安全な土地を見つけることは、ほとんど不可能でした。国の制度に適う場所が見つかりませんでしたので、民間の土地でも仮設住宅建設に適した土地を岩手県で都合し、それを後から政府に容認してもらうという対応を取らざるを得ませんでした。その結果、比較的早く8月11日までに被災者全員が仮設住宅に入居できました。

 それから特に深刻だったのがガソリン、燃料不足の問題でした。政府とのやりとりの中で、当時一番苦労したことを思い出します。政府は「ガソリンがある」というのですが、県内のガソリンスタンドまで届かない、よって県民に届かない。道路が寸断されていたり、鉄道が不通だったりで、ガソリンを運べなかったからです。そこで岩手県庁から政府に対して、日本海側のこのルートを通れば運べますと提案し、その通りにしてもらいました。被災地から国に提言をしながら共同で復旧復興を進めていきました。政府にさまざまな提案をしたのは、岩手県のためだけではなくて、被災地全体にも役立つだろうとの思いからでした。

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避難指示の改定、制度の柔軟な見直しに取り組む

――参院議員に転じてから、国政でどのようなことに取り組んでいますか 県庁での経験が震災からの復旧復興の歩みとほぼ重なっていますので、もちろん復興を前に進めることが私自身の大きなテーマです。被災地で必要なことを国会で審議し、制度改正につなげていきたいと考えました。当選後、すぐに災害対策特別委員会に所属しました。これまでの経験を伝えながら東日本大震災からの復興を進めるとともに、全国各地で起きているさまざまな災害にも対応できる政策、制度の立案に取り組んできました。

 例えば今、力を入れているのが、「避難指示のあり方」です。豪雨災害が続いています。岩手でも観測史上、例のないような台風があり、高齢者施設で多くの方が亡くなるという悲しい事態がありました。大震災を経て、岩手県や自治体でも避難指示のあり方を改定したのですが、それでも分かりにくい面がありました。それで委員会で「避難指示をもっと分かりやすくすべきだ」と何度も提案してきました。私とすれば、大きな災害が起きても、一人として命を落とさないことを目指すべきだ思うからです。まずは命を守るため、老若男女、障がいの有無にかかわらず、誰にでも分かるように避難指示のあり方を不断に見直していくことが重要です。

 また、復興事業が何年にもわたることから、被災地のニーズを踏まえ、途中段階での見直しを可能にすることが必要だと思います。相当集中して事業を進めてきましたが、それでも10年かかり、やっとかさ上げした宅地の引渡しが終わりました。ところが、そこに戻ろうと思っていた人たちが、再建をあきらめてしまったり、違う場所で再建してしまったりというケースが続いています。現在の住民や自治体のニーズに沿うよう制度を見直したり、あるいは町が自立していけるよう、財政を含めてさまざまな支援をしたりすることが必要だと思います。

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