参院本会議で16日、内閣提出法案「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」の趣旨説明がおこなわれ、「立憲民主・社民」会派を代表して川田龍平議員が質疑しました。

 本法案は、医師の長時間労働等の状況に鑑み、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するため、医師の労働時間の短縮及び健康確保のための制度の創設、各医療関係職種の業務範囲の見直し等の措置を講ずるとともに、外来医療の機能の明確化及び連携の推進のための報告制度の創設、地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組に関する支援の仕組みの強化等の措置を講ずる必要があるという理由で提出されました。

 川田議員は、(1)医師の働き方改革と過労死(2)医師不足(3)薬漬け・検査漬けの是正(4)予防医療等の重要性(5)統合医療(6)医療崩壊が起きた理由について検証の必要性(7)新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項の医療計画への位置付け(8)いわゆる436リストの再検証の必要性(9)医療機関への支援――等について質疑しました。

 川田議員は、本法案が勤務医の時間外・休日労働の上限を原則年960時間としつつ、地域医療の確保の特例として年1,860時間とすることを2035年まで認める内容となっていることに触れました。いわゆる過労死基準とされる時間外・休日労働時間が、月100時間超または2-6カ月平均で月80時間を超えると健康障害のリスクが高まるとされていることと比べると、「医師の時間外・休日労働の上限の原則でさえ過労死基準ぎりぎりであり、地域医療確保の特例に至っては過労死基準のほぼ2倍まで認めることを意味する」と指摘。過労死を招きかねないため、「安易に特例申請に走らないようにすることが重要」、「36協定における上限時間が適切かについて監督する必要がある。そのためには、労働基準監督署に届け出るだけではなく、労働基準監督署に医師の働き方改革に精通した人員を配置し積極的に関わっていく必要がある」等の提案をしました。

 また、厚生労働省が、将来的に医師の供給が過剰になることから医師の偏在対策での是正を図るとしていることに触れ、「これまで将来医師が余ると言われ続けてきたのにも関わらず、現在も不足していることについてどう捉えているのか」と質問しました。さらに「医師の働き方改革について、医師数を増やすことで労働時間を減らす選択をどこまで議論したのか、なぜそれを選択しなかったか」とただしました。

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大に対する日本の医療体制について、「わが国は欧米などの諸外国に比べ、新型コロナウイルス感染症患者は少ない一方で、病床数は多いにもかかわらず医療崩壊が起きた」と指摘。医療崩壊が起きた理由を政府がどう考えているのか、2度と繰り返さないための対策について見解をただしました。田村厚生労働大臣は、「国としては医療崩壊について明確な定義を示していない」と述べつつ、「医療提供体制の全体の中で課題があった。こうした課題に対応していくとともに医師の偏在対策や医師の働き方改革を着実に進める」と答弁しました。

 川田議員は病院経営の状況について、「昨年11月からの新型コロナウイルス感染症の第3波により、再び病院経営の厳しさが増している」と述べ、「求められているのは、コロナ対策で通常医療を縮小せざるを得なかったことで生じた減収、これに対する直接的な補償、補填ではないか」と減収分を国費を投じて補填することを提案しました。

 最後に川田議員は、「医療に携わる全ての人になる法律を作り、全ての人の命を守るために審議を尽くしたい」と述べ質疑を終えました。

良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案.pdf

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