参院憲法審査会で28日、「憲法に対する考え方について」、各会派による意見表明と意見交換が行われました。「立憲民主・社民」共同会派を代表して、小西洋之議員が意見を表明しました。
 小西議員は(1)立憲民主党の憲法に対する考え方(2)衆・参憲法審査会のあり方(3)憲法審査会が開かれなかった3年間(4)与党の国民投票改正案――について説明しました。

 憲法審査会のあり方について、平成26年の国民投票法改正の際に与党も賛成の上で議決された当審査会附帯決議を引用し、「参院の合区廃止、衆議院議員が任期満了した後の大震災等での国会機能の確保について、憲法改正に拠らずに国会法及び公選法の改正によって解決する方策の議論もある」と指摘しました。
 また、参院憲法審査会では、「違憲の解釈やそれに基づく立法などの調査審議」について、憲法・国会法上の法的責務を負っていることを共有させていただきたい」と主張し、林憲法審査会会長に過去3回の民進会派からの要求、(1)集団的自衛権行使容認の検証(2)憲法9条の基本法制である日米地位協定下の権利侵害の検証(3)立憲主義及び平和主義に係る各党各会派の見解の議論(4)国民投票法のCM規制等に係る参考人質疑の実施――などについて、改めて幹事会協議事項とすることを申し入れました。

 与党の国民投票法改正案について、「自主規制の前提が根底から覆るのであれば、インターネットも含めCM規制のあり方を議論し必要な措置を講じることが必要不可欠であり、これを放置しての国民投票法改正は許されない」と強く主張しました。また、平成28年の公選法改正を単純に並行移入した与党案は、国民の投票環境を後退させる欠陥法というべき問題があるとし、本法案は撤回修正を行う必要があると強く主張しました。

 小西議員は最後に「国難のコロナ禍において、憲法13条の尊厳尊重、25条の生存権確保がなされず、今日明日の衣食住に事欠く国民、必要な検査・医療等が受けられない国民、自宅療養等で投票権が行使できない国民――等が多数生じています。国難下の国会議員の役割は、必要火急の『改憲の立法事実』が認められない『不要不急の改憲論議』を行うことではなく、憲法の理念、規範を具現化し、国民を救う立法の実現等に全力を挙げることである」と結びました。

 委員間の意見交換で、打越さく良議員は「感染症拡大の危機的状況にある今こそ、緊急事態における憲法のあり方について議論を深めるべき」という主張に対して、「政府の後手後手の対応で憲法第25条の義務を果たさないことによって起こった状況を奇貨として憲法改正の議論の契機とすることは断じて許せない」と反論しました。

 石川大我議員は「同性婚は改憲しないと同性婚制度はつくれない」という主張に対して、「13条や14条を考えれば、同性婚は現憲法下で要請されている。札幌地裁では法の下の平等に反し違憲であるとの判決が出た。すみやかに民法を改正し、『婚姻における平等』『同性婚』を法制化すべき」と主張しました。

 白眞勲議員は自民党の憲法改正案について、「平成28年11月に当時の中川雅治委員より、平成24年の憲法改正草案は平成17年の新憲法草案を踏まえてまとめた。今後もバージョンアップしていく必要があるとうかがった」と述べ、現在の「憲法改正4項目案」と平成24年に発表された「憲法改正草案」との整合性や現在の位置づけについて説明を求めました。

小西議員の意見表明全文は以下のとおりです。

■立憲民主党の憲法に対する考え方
 2020年9月の党綱領において、「立憲主義と熟議を重んずる民主政治を守り育て、命とくらしを守る」と宣言し、「自由」、「多様性」、「共生社会」等からなる基本理念を掲げ、「『国民主権』「基本的人権の尊重』『平和主義』を堅持し、立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行う」と定めています。そして、この参院では、「平和・自由・平等・共生」の理念を党宣言に掲げる社会民主党と会派を共にしています。
 この立憲主義の深化のため、昨年11月に「憲法論議の指針」を取りまとめ、そこでは、論議の基本姿勢として「立憲主義に基づき権力を制約し、国民の権利の拡大に寄与するのであれば、憲法に限らず、関連法も含め、国民にとって真に必要な改定を積極的に議論、検討する」、「検討に際しては、立法事実の有無を基本的視座とする」等と定めています。
 そして、集団的自衛権行使容認を違憲と断じると共に、それに基づく自衛隊加憲論を退け、更には、臨時国会召集義務違反、衆院解散権の濫用等々の安倍政権下での重大な違憲行為の列挙とその防止策等を論じています。
 また、国民の人権保障のために、LGBTの方々等の社会のあらゆる場面での差別の解消、高等教育の無償化、地方自治の推進、コロナ禍を含めた緊急事態における国家の役割とその立憲的統制について、既存の法制度の改正で対処できることを念頭に、立法事実の有無について検討を行うなどとしています。
 そして、これら「憲法論議の指針」の記載事項の多くは、本年3月に取りまとめた党「基本政策」において、情報アクセス権等の「知る権利」の保障の強化、「プライバシー権」の基本的人権の明確化、「共謀罪」の廃止及び「取り調べの可視化」、参議院の合区解消、各種選挙の被選挙年齢の拡大、ジェンダー平等などの理念に基づく国政選挙でのクオータ制の導入等々を明記すると共に、この間、野党共同による選択的夫婦別姓法案、婚姻平等法案、LGBT差別解消法案などの立法行為を積み重ねています。

■憲法審査会のあり方
 最初に、平成26年の国民投票法改正の際に与党も賛成の上で議決された当審査会附帯決議の第1項から第3項において、「立憲主義及び憲法の定める国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義に基づいて、徹底的に審議を尽くす」、「立法措置によって可能とすることができるかどうか、徹底的に審議を尽くす」と明記されていることの共有を呼び掛けたく存じます。
 特に、第3項は、憲法改正の必要性及び合理性に係る「立法事実」がないものは改憲論議の対象としないことを意味しますが、参院の合区廃止、衆議院議員が任期満了した後の大震災等での国会機能の確保について、憲法改正に拠らずに国会法及び公選法の改正によって解決する方策の議論もあるところです。

■参院憲法審査会のあり方
 参院審査会のあり方は、当然、憲法及び国会法の規律も受けます。
 憲法99条は当審査会に集う全ての議員に憲法尊重擁護義務を課しています。そして、国会法102条の6は「日本国憲法及び憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行う」と定めています。憲法とその基本法制に係る調査に、最大の憲法問題である「憲法違反」が含まれるのは当然の理であります。
 すなわち、私たち憲法審査会は「違憲の解釈やそれに基づく立法などの調査審議」について、憲法・国会法上の法的責務を負っていることを共有させて頂きたく存じます。
 そして、まさにこの実践として、平成28年11月、29年12月、30年2月の本審査会においては、当時の民進党会派委員より、昭和47年政府見解の中の「外国の武力攻撃」の文言の曲解による政府の9条解釈の「基本的な論理」の捏造という、法解釈ですらない不正行為による憲法違反である集団的自衛権行使容認の検証、憲法9条の基本法制である日米地位協定下の権利侵害の検証、立憲主義及び平和主義に係る各党各会派の見解の議論、国民投票法のCM規制等に係る参考人質疑の実施等々の「幹事会協議事項」が提出されております。
 林会長におかれては過去3回の民進会派からの要求について改めて幹事会協議事項とすることを御願い申し上げます。

■憲法審査会が開かれなかった3年間 
 他方、その後の約3年の間も、本審査会で調査審議すべき重大な憲法違反が生じています。平成30年の国政調査権の妨害たる決裁文書の改ざん。31年の圧倒的多数の県民投票を無視しての辺野古埋め立て続行の地方自治の本旨の蹂躙、令和元年の準司法官たる検察官の違法な定年延長等による三権分立の毀損、昨年の学問の自由を侵害する日本学術会議の違法な任命拒否等々であります。
 憲法が拠って立つ原理たる立憲主義及び法の支配が破壊され、途切れることのない違憲行為で国民の自由・権利が奪われ議会政治が破壊されている状況下で、何故にそれらに関知することなく、われわれ国会議員がこの憲法審査会の場で改憲議論を行うことが許されるのでしょうか。それは、憲法、国会法、附帯決議に反する行為であるとともに、主権者国民に対し責任ある態度と言えるのでしょうか。

■与党の国民投票改正案について
 平成19年、26年の本審査会の附帯決議では「CM規制はメディア関係者の自主的な努力を尊重する」とあります。すなわち、国民投票法の立法者である船田元先生が先週22日に「CMの自主規制を条件に法案を作った」と発言されているように、わが参院憲法審査会でも自主規制を前提に繰り返し法案が審議・可決されているのであります。その前提が根底から覆るのであれば、インターネットも含めCM規制のあり方を議論し必要な措置を講じることが必要不可欠であり、これを放置しての国民投票法改正は許されません。さらに、両附帯決議には重要な複数の宿題事項があることを付言します。
 また、平成28年の公選法改正を単純に並行移入した与党案は、国民の投票環境を後退させる欠陥法というべき問題があります。繰り延べ投票の告知期限の短縮では「台風襲来の日曜日の翌日の、月曜日の国民投票実施の周知を全主権者に徹底できる。場合によっては平日に国民投票を実施する」との誠に苦しい説明がなされ、期日前投票所開設の規制緩和では現にその後の各地の国政選挙で投票機会の減少が見られるところです。本法案は撤回修正を行う必要があることを良識の府の存立に懸けて強く申し上げる次第です。

■結びに
 国難のコロナ禍において、憲法13条の尊厳尊重、25条の生存権確保がなされず、今日明日の衣食住に事欠く国民、必要な検査・医療等が受けられない国民、自宅療養等で投票権が行使できない国民等が多数生じています。国難下の国会議員の役割は、必要火急の「改憲の立法事実」が認められない「不要不急の改憲論議」を行うことではなく、憲法の理念、規範を具現化し、国民を救う立法の実現等に全力を挙げることであることを申し上げ、私からの意見表明をさせて頂きます。

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