枝野幸男代表は19日、自著『枝野ビジョン 支え合う日本』の出版(20日発売)記者会見を国会内で開きました。
枝野代表は今回の出版について、2014年初めから書き始めたもので、3分の2程度はその当時できあがっていたが、仕上げる前の段階で旧民主党の幹事長に就任するなどさまざまな政治状況があり、考えを深めながら現在に至ったと説明。「2017年の衆院選挙で最大野党の党首となり、次期衆院選挙で政権の選択肢を目指さなければならないなかで、私がどういう社会を目指すのか、一度しっかりと整理し、国民の皆さんに問う必要があった。参院選挙や野党の結集の話もあり、思った通りのスピードで進まなかったが、結果的になんとか総選挙に間に合わせて出版することができた」と話しました。
その上で、内容については「いま日本が問われているのは、例えば選挙において、あるいは政党間の政策の競い合いについて、個別の政策ももちろん大事だが、特に足元ではCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)にどう対応していくかという、短期的かつポイントが絞られた各論が大変重要な局面である一方、大きな意味でおそらく150年ぶりくらいの大きな転換点に立ち、その先のこの国のあり方、あるいは社会のあり方について国民の皆さんに選択してもらう視点が大変重要な局面にあると思っている。そうしたことについて、まとまって世に問うことができたのを喜んでいる」と述べました。
質疑応答では、著書のなかでも触れている、小泉政権下での格差の拡大やアベノミクスの従来型財政出動の問題について質問があり、枝野代表は「ミクロに部分的な数字を見れば、いろいろな評価があるかもしれないが、多くの国民の皆さんの生活実感として、明らかにこの30年ほどのあいだに格差は拡大していることは否定できない。否定するミクロな部分的なところを取り上げてもまったく説得力がない話。格差の拡大は小泉改革によるものだけでなく、日本の社会が先進国に追いついたことと人口減少のなかで構造的に格差が拡大しやすいなかでアクセルを踏んだと指摘している」などと述べました。
衆院選挙での政権政策との関係性については、「機関決定したものではなく、あくまでも枝野幸男個人の名前で発表させてもらっているもの」だと言及。「党の代表の立場で、党のこれまでの綱領その他を踏まえており、党内で私が把握している議論状況を一定程度踏まえたものになっていることは申し上げられる。政党としてどういったものを示していくかは、機関を通じて決まっていくことになり、次元が違う話だ」と述べました。
入管法改正案が取り下げとなったことなどを踏まえ、終盤国会の対応を問われると、「われわれは何でも反対ではない。賛成の法案はできれば会期内に成立させるべきだと思っているし、部分的に違いはあってもそれが審議での確認答弁や、修正に応じてもらえることがあれば成立させた方がいいと思う。まさにケースバイケース」だと発言。
また、COVID-19ワクチンの大規模接種予約システムに不備があると指摘した報道機関に対し、岸防衛大臣が抗議、安倍元総理も「悪質な妨害愉快犯と言える」とツイートしたことへの受け止めを聞かれ、「少なくとも欠陥と言われて仕方のないシステムで予約を始めたことは間違いない。しかも、それを事前に知っていたという報道もある。そうであれば、先に自ら示すことが当たり前だ。そうでないのであれば問題点を報道機関が調査報道的に確認をして報道をするのは当然のこと。報道機関を責める、しかも欠陥と言われて仕方のないシステムを作った当事者が言うのは見苦しい責任転嫁だ」と非難しました。
東京五輪開催の是非については、「政府は五輪の開催よりも国民の命と健康を守ることが最優先。本当に国民の命と暮らしを守る観点で大きなマイナスを与えることなく開催できるのか。政府は何ら発信、説明ができていない。どうしても開催するのであれば、こういう状況だから大丈夫だと明確に示す責任が政府にはある。現場では示されていない」と断じました。