「医療の現場における『医療崩壊』という言葉があったが、言うならば『行政崩壊』の状態だ」(飲食店等に対する協力金等の支援が滞っていることについて、泉健太政調会長)。

 泉健太政務調査会長は3日、国会内で定例会見を開きました。会見の中で泉会長は(1)LGBT法案の国会提出に関する下村政調会長の与野党合意発言は事実無根(2)郵便投票法案についての与野党協議の現状(3)東京オリンピック・パラリンピック開催の是非(4)新型コロナ対策関連の追加支援の必要性――等について触れました。

■LGBT法案の国会提出に関する下村政調会長の与野党合意発言

 泉政調会長は冒頭、いわゆるLGBT法案(LGBTへの理解増進を求める法案)について、「自民・立憲両党間で今国会での提出見送りに合意した」との下村博文・自民党政調会長の発言に関し、自民党が「事実誤認だった」と訂正コメントを出したことに言及。「下村自民政調会長からは、安住淳国対委員長に対し謝罪の電話もあったともうかがっている。議員連盟で法案がまとまり、そして各党で手続きをしているという状況の最中であり、院の方にはこの法案が上がっている段階ではない。そもそも国対間で、このテーマについて協議をするということはないというのが国対からの回答だった。昨夜からわが党幹部がそれぞれ『そういったことではない』という内容を発信してはいるが、今日、改めてお伝えをさせていただきたい」と述べました。

■郵便投票法案についての与野党協議

 郵便投票法案について泉政調会長は「これまで(国会における交渉の)現場では、真摯(しんし)な協議を進めてきた」と指摘した上で、もうこれ以上自民党が譲歩しそうにないという状況の中で、一つのまとまった成果物が出来上がり、その内容について篠原孝政治改革部会長と検討を進めてきたと説明。その結果、篠原部会長と対象者に対する周知が一定期間必要であるとの認識で一致したことを明らかにしました。「やはりこの法律の施行日について、これまでの公職選挙法関連の法律や選挙制度にかかるさまざまな周知期間と比較すると、極めて例外的に短いもの(5日間)になっている。改めてわれわれとしては、従来に比べれば短い期間である3カ月という期間を再提示させていただいた。残念ながら自民党からは前向きな回答をいただけなかったということで、協議はそこで一度物別れに終わっているという状況だ」と現時点での状況を報告しました。

■東京オリンピック・パラリンピックの開催等について

 4月から5月16日までの間に、すでに五輪選手とその関係者1,604名が入国しており、またその87%にあたる1,432人が2週間の待機を免除されていたことが、委員会で取り上げられた点に言及。「ルールというものを定めながら、さまざまな便宜を特例的に図ってしまっているということがあり、結局『なし崩し』になっている」と指摘しました。その上で「オリンピックに入ってしまえば感染拡大の可能性が十分にあるし、医療に対するリスクも高まる可能性があることから、われわれは(開催自体に)反対をしている」と改めて五輪開催に反対する考えを示しました。

 五輪開催については「繰り返しになるが、われわれは現時点では『中止すべきだ』という意見だ。いまの政府の姿勢では対策も不十分であることから、開催をすることに危険性を感じている」と、開催に反対する姿勢を強調しました。その上で、政府が開催に固執するのであれば、国民の命と健康を守るために、開催条件として(1)入国者数にさらに制限を加えること(2)選手や関係者の行動管理をもっと厳格にすること(3)競技は無観客で行うこと――の3点を挙げました。

 また、仮に政府が開催を強行する場合でも「政府には出来る限りリスクが少なくなるような要求、要望は続けていきたい」「来月には選手団らの入国もピークも迎える。やはり徹底した検証と対策を求めていきたい」と述べました。

 東京で一部中止する運びとなったパブリックビューイングについても「東京では取りやめということで動きがあったようだが、人流を極力減らすべきであり、各地でのパブリックビューイングなどありえない。また大会会場に小学生たちを参加させるという話が、まだ生きているやに聞いている。そういったものはやはり中止をしていくべきだ」との見解を示しました。

■新型コロナ対策関連の追加支援と補正予算の編成

 政府が9都道府県の緊急事態措置を再々延長したことについて、泉政調会長は「(宣言の)延長という文脈だけで言えば、立憲民主党の『zeroコロナ』戦略に乗っていると思う」と述べつつも「ただその中で欠けているのは、その延長に伴う追加の支援だ」と指摘しました。いま飲食店の中には、徐々に夜のお酒を提供し始めたり、「もう協力金はいらないから営業させてくれ」と言う店舗が出てきていることや、休業の基準が曖昧であることから、自主的に営業を始めるような業界が出ていることに触れた上で、「要は、お店が営業の再開を考えなければいけないような支援しかしていないからだ。延長の考え方についてはギリギリ『zeroコロナ戦略』に乗ってはいるが、事業者と生活者に対する支援、追加支援ということで言えば、『全く足りていない』ということだ」と指摘しました。

 その上で「この追加支援や補正予算もやらないということ、あるいは国会延長もしないということを与党は言ったようだが、本当にとんでもない誤り、選択の誤りだ」と、政府の姿勢を厳しく批判しました。

 さらに「改めてこの『追加支援』をしっかりわれわれとして訴えていきたい。その一環として、いま政調では、補正予算の考え方をまとめている最中だ。今週末、あるいは来週の週明けの党首討論までのどこかで、皆さまにわれわれの考え方を公表できるようにしていきたい」と、補正予算案について現在党内で検討中であることを明らかにしました。

 記者団とのやり取り中で飲食店等に対する支援が遅れていることについて意見を求められると、「医療の現場における『医療崩壊』という言葉があったが、言うならば『行政崩壊』の状態だ」と述べるとともに、「何度も何度も申請しなければいけないような制度状況を作っていたのは政府だ。しかも支払いが遅いので、本当に話にならない。もう(世間は)怒りに満ちあふれていると思う」と語りました。そして解決策としては(1)民間からの出向も含めた都道府県における事務体制の強化(2)事務体制強化のための財政支援(3)申請手続きの簡素化(4)何らかの「みなし払い」のような、一時的な環境をしのぐための支払い――の4点を挙げました。

■領域警備法とイージスアショア代替案について

 立憲民主党の「領域警備法案」を本日午後、国会提出予定であることに触れた後に、イージスアショアの代替案の検討について触れました。イージスアショアの代替設備について、艦載をさせる場合には、導入コストも、ライフサイクルコストも、「イージスアショアを大きく上回る」という党内部でおこなった試算の結果について言及しました。

 その上で「日米関係の中での『爆買い』によって、わが国が必要とする防衛予算が、むしろ削られることにもなりかねないということもある。やはりそこはしっかりとシビリアンコントロールや財政民主主義の観点に立ち、高額で重要な装備品については、データをしっかり明かして国会で議論をすべきだ」「もちろん全てのデータを明かすというのは難しいところがあるかもしれないが、建設的な議論がおこなわれることを前提とした上で、可能な限り、やはり国会で議論するということも大事だ」との見解を示し、国会での議論の重要性を強調しました。

■菅原一秀議員の辞職願について

 自民党の菅原一秀議員が選挙区における寄付を巡り辞職願を出したことについては「非常に不透明、不可解なタイミングだ」と表現。「そもそも大臣を辞任したのが2019年の10月であり、その時点でご自身のやった事、何を配ったのか、どこに配ったのか、分かっておられるはず。それがうやむやなまま、いままで歳費をもらい続け、またボーナスも貰い続けた」と指摘しました。そして「極めて不誠実な今回の身の処し方だ」と菅原議員の責任の取り方を厳しく批判しました。

 また歳費返還法案(※)について記者から問われると「自民党の方でなかなか案が出ないのであれば、公明党案とわが党案がある。自民党の部会等に呼んでいただき、そこで両案を説明し議論をしていただくというのが、速やかにおこなっていただきたい次のステップだ」と訴えました。

※「特定犯罪行為に係る刑事事件に関し起訴をされた国会議員等に係る政治倫理審査会における審査の特例及び歳費に係る納付義務等に関する法律案」「政党助成法の一部を改正する法律案」の歳費返納関連2法案。選挙買収などの罪で国会議員の有罪が確定した場合、歳費の返納を義務化することなどを柱としています。

 最後に記者とのやり取りの中で「対案なしはデマ」という枝野代表の会見での発言に関し「野党が提案を示しているのだとしたら、それがなぜ伝わらないと思うか」と問われると、「伝わっているところもある。一定のご理解をいただいていると思うし、増えつつあると思う。まだ足りないところについては、誠実な発信を続けていきたい」と回答しました。