衆院厚生労働委員会は4日、閉会中審査がおこなわれ、立憲民主党の4番手として山井和則議員が質問に立ちました。山井議員は政府が新型コロナウイルスの中等症の患者を原則在宅療養とする方針転換をおこなった問題、コロナ禍の困窮世帯への給付等を取り上げました。

■政府の中等症患者の療養に関する方針転換

 山井議員は、政府が中等症患者について入院療養から原則在宅療養へと方針を転換したことについて、「国民皆保険の放棄、自宅放置。戦後日本の医療の最大の危機だと思う」と強く非難しました。中等症は肺炎が広がり、多くの人にとって人生で一番苦しい症状だと説明し、「その時に救急車を呼んでも来ない。あるいは入院ができない。国民の命が守れない。そのことについて方針転換をご理解いただきたい言われても、残念ながらそれは理解できない。多くの医師の方々、保健所の方々が、この方針転換によって入院ができなくて、自宅で亡くなる方々が確実に増える、人の命がこの方針転換に失われるとおっしゃっている。非常に重大な状況」と訴えました。

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 山井議員は、厚生労働省が3日夜に都道府県宛に発出した事務連絡に触れ、「宿泊・自宅療養の患者等の症状悪化に備え、空床を確保することを要請しているが、症状が悪化した時には、空床があって確実に、すぐに入院できるということを厚生労働大臣が保証して下さるということでよいか」とただしました。田村憲久厚生労働大臣は、(1)病床がひっ迫しておらず、余裕がある地域では従来どおりの対応でよい(2)息が苦しい症状ではなく、そうなる可能性も比較的少ない方については在宅で療養していただく(3)在宅療養していて悪化した場合は病院に入っていただく(4)感染が急激に拡大している中で、限りある医療資源を有効に活用して、救われる方をしっかり救っていくために、今回、療養に関する見解を変更した――と説明しましたが、重症化した患者が必ず入院できるかについては言及しませんでした。

 山井議員は、多くの医師が新型コロナウイルス感染症は急激に悪化、重症化すると指摘していることに言及し、「今回の見直しによって入院できなくなり、自宅で亡くなる方がもし出たら田村大臣は責任をお取りになるか」と迫りましたが、大臣から責任の所在に関して回答はありませんでした。

 山井議員は、「2カ月も3カ月も前から、7月、8月には感染爆発すると言ってきたのに、菅総理は『安全安心の大会が来る』とおっしゃったではないか。今は安全安心か。不安でいっぱいだ。国民皆保険の日本において、肺炎症状の中等症の方が入院できないことは許されない。全国知事会長も中等症の重症化リスクの方を誰がどうやって判断するのか、基準がなかったら判断できないとおっしゃっている。いったんこの方針転換を撤回すべきではないか」と求めました。

 田村大臣は「中等症Ⅰであっても肺炎症状のある方は入院していただく」と答弁したのに対し、山井議員は「それは机上の空論だ」と反論し、重症化するリスクのある方を判断する基準ができていないのだから、今回の方針転換を撤回し、原則入院に戻すよう重ねて求めました。

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 山井議員は今回の方針転換について感染症対策分科会に意見を求めていなかったことを取り上げ、政府の方針転換について尾身分科会長の考えを尋ねました。尾身会長は、最近では入院している患者では40代から50代で呼吸困難があり、高濃度酸素が必要な中等症Ⅱの方が増え、医療のひっ迫につながっていること、自宅療養者も40代、50代が増えており重症化するリスクが若い人よりも多いと説明しました。その上で、いま求められるのは入院か在宅かの議論ではなく、現在の感染状況に応えるためには一本足打法ではなく、(1)病院だけでなく地域の医療資源(開業医、往診、訪問医療、訪問看護)をさらに強化する(2)国による宿泊療養施設の強化(3)自宅療養の患者が重症化した場合にすぐに医療に結び付けるようなシステム――の3点を総合的に進めることが必要だと述べました。

 また東京都内の新規感染者数の見通しについて最悪の場合には「1日1万人になる可能性もある」「来週にはもう少し低い6,000とか7,000、8,000」との見解を示し、人々の意識と行動の変化、オリンピックが終了することなどの要素により幅はあるが、デルタ株がまん延していることから「急に下がることはない」と説明しました。緊急事態宣言の全国拡大とそれに伴う対策の内容についても議論していくべきだとの考えを示しました。

■子どもの貧困問題

 山井議員は、自民党議員が子どものいる低所得世帯への5万円給付の再支給、低所得者約3,000万人への10万円給付を打ち出しという報道に触れ、立憲民主党はそれらについてはすでに、6月3日に「子育て世帯給付金」再支給法案、3月1日にコロナ特別給付金法案を提出しており「自民党が審議に応じていないから成立していないだけだ」と訴えました。自民党の提案のように補正予算に盛り込むのを待てば実施が12月か1月になってしまうと述べ、予備費を活用し、衆院選挙後ではなくすぐに実施するよう求めました。

配付資料_厚労委_山井議員.pdf

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