枝野幸男代表ぶら下がり会見(アベノミクス検証委員会報告)

2021年9月21日(火)
発行/立憲民主党役員室

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://youtu.be/L5YSUaeUzvw


■冒頭発言

■質疑


■冒頭発言

○アベノミクス検証委員会報告「アベノミクスの検証と評価」を受領

【代表】
 アベノミクスの検証委員会を設置して、江田代表代行を中心に、落合事務局長を初め皆さんに短い期間で鋭意検討をいただきました。もちろん我が党の経済政策をつくり上げていく中でこれまでも検証を積み重ねてきた、そのことを改めて今の時点でアップデートして再整理をしていただいたものでありますが、先ほど正式に私のところに報告をいただきました。
 改めて言うまでもなく、アベノミクスは、お金持ちをさらに大金持ちに、強い者をさらに強くした。しかし、いわゆるトリクルダウン、それが普通の暮らしをしている人、厳しい生活をしている人たちのところに滴り落ちるというようなことは全く起きず、格差や貧困問題の改善にはつながっていなかったと改めて確認をいただきました。
 一方で、実質賃金は下がり続け、2度にわたる消費増税が追い打ちをかけて、GDPの半分以上を占める消費の低迷が続いている。このことが日本経済が低迷から抜け出せない最大の要因であると認識いたします。
 いわゆる3本の矢は、「大胆な金融緩和」、確かに円安誘導やゼロ金利あるいはマイナス金利によって輸出産業を中心に収益増となり株価は上昇しましたが、インフレ期待に働きかけての消費増には全くつながらず、物価安定目標2%も達成できていません。そもそも、こうした緩和、異次元緩和はいわゆるカンフル剤であり、打てば打つほど効果が減殺され、副作用も起きています。地方銀行の経営悪化や官製相場の形成といったところにあらわれている。何よりも、いつまで続けるのか、出口戦略が全くなく、その見通しも立っていないという大変深刻な問題をもたらしています。
 「機動的な財政政策」についても、消費を喚起させなければならないにもかかわらず、裏側で行われた2度にわたる消費増税でGDPの半分以上を占める消費を腰折れさせて、そして、必要な投資や税制改革が進まず、インフラ投資も従来型のものが中心で経済波及効果はあまり得られず、何しろ消化不良で使い残しも目立っています。累次の経済対策、補正予算と称する中で設立された約200にわたる基金も、需要の見通しの甘さから大幅な使い残しが目立っております。それらの国庫返納も十分になされていないなど、問題ばかりであります。
 3番目の「成長戦略」は、金融緩和などのカンフル剤が効いている間に進めるべき体質改善でありますが、製造業の労働生産性はOECD37カ国中16位にまで落ちて、潜在成長率は0%まで低下しております。行き過ぎた株主資本主義が労働分配率の低下や設備投資の減少につながっており、結果として企業の内部留保を膨らませ戦後最高の475兆円となっておりますが、企業の成長につながるようなところにむしろ回っていないことのこれは裏返しとなっております。原発輸出やカジノ、オリンピックなど、目玉政策もいずれも失敗し、あるいは功を奏していないという状況でございます。  こうした状況を改めてデータに基づき確認をさせていただき、これを抜本的に変えない限り日本経済が低迷を抜け出すことはできないと改めて確信をいたしました。こうした最新のアップデートされたアベノミクスに対する検証結果を踏まえて、そう遠くなく、政権政策としての経済政策についても発表をさせていただけると思っています。
 まとめていただいた江田委員長から、後ろにつけております参考データ、皆さんにとっても非常に役に立つデータだと思いますので、若干ご説明をいただければと思います。お願いします。

【江田憲司アベノミクス検証委員会委員長】
 参考でお配りしたグラフ、一言ずつご説明させていただきます。
 まず冒頭の、「物価、名目賃金、実質賃金、消費支出の推移」でございますが、ここで見ていただきたいのは、まさに賃金。実質賃金が2012年を100として下がり続けて95.6。アベノミクスの期間中、5%近く減っている。それに伴いまして世帯消費が全然伸びていないどころかどんどん低下して、2012年に比べて10ポイント近く減っているということでございます。
 2枚目でございますが、この格差というか、一つの象徴的な指標として、「年代別貯蓄ゼロ世帯の割合」。特に若い世代、20代・30代、2012年と比べまして1.5倍から2倍近く貯蓄ゼロ世帯がふえている。これは如実に格差の広がりみたいなものを象徴しているのではないかと思います。
 一方で、「お金持ちをさらに大金持ちにした」と代表から申し上げました、その証左が、次の「純金融資産保有額が1億円以上の世帯数と資産額の推移」という表がございまして、何とこれ2011年から比べますと世帯数で1.64倍、資産額で1.77倍までふえているということで、これがまさに「お金持ちをさらに大金持ちにした」という証左でございますし、ミリオネア、億万長者の人数も2012年に1万3609人がほぼ1万人ふえて2万3550人になっております。
 次に、アベノミクスの成長戦略が本当に見事に失敗した証左としては、もうこれ数字が語っていると思います。潜在成長率が2019年にはもうゼロ近くまで落ち込み、実はこれは書いておりませんが2020年にはリーマンショック以降10年ぶりにマイナスになった。これが、幾ら安倍総理がいろいろ言いわけされても、結局潜在成長率というのは中長期的な日本経済成長の実力を示すものですから、もうこれがゼロだと、成長しないんだということが、これ日銀の統計ですので、証明されていると思います。
 それから、格差の問題でジニ係数というのがございますが、このジニ係数の改善、すなわち分配による格差是正がどのくらい進んだかという国際比較を見ましても、ごらんのように欧米と比べまして日本は改善率が極端に低い。OECD諸国平均で見ても4分の3から3分の2低いということで、もう格差是正が全然進んでいないということでございます。
 それから、成長戦略の中でよく言われる研究開発力。これは特に国立大学が担う役割が大きいわけですが、運営費交付金というものがどんどん減らされてきて、結果的に言うと国立大学の運営費交付金、これは共通経費を除いた分が研究開発に充てられるのですが、この研究開発に充てられる金額がどんどん減っている。一方で、競争的資金というのが伸びていまして、この競争的資金は申請して競争でとる、そこに研究者の皆さんの手間暇がとられている、研究時間も減っているということなので、これではもう日本の研究開発力がどんどん諸外国に比べて遅れていく。先駆的な論文の論文数にしろ、それを引用していただく引用数にしろ、どんどん下がっているというのは皆さんもご承知のとおりだと思います。
 そして、この株主資本主義。我々は「公益資本主義」というものを今度訴えようと思っているのですが、株主偏重、これ米国流ですね。これをどんどんガバナンス改革と称して導入してきた結果、明らかに配当がぐっと上がっている。株主配当がぐっと上がっているにもかかわらず、従業員の給与はもう横ばいというか、ふえていない。結果、内部留保、ここでは(1997年度を100として)297と、ちょっと古い2018年の数字が出ていますが、ご承知のように直近では475兆円、戦後最高の内部留保を抱えているということでございます。
 最後に、株主偏重の資本主義、ガバナンス改革の結果、労働分配率。まさに賃金を反映させる労働分配率。ごらんのように大企業ほど分配率が低いということです。大企業ほど、将来を見込んだ設備投資もせず、従業員の給料も上げず、ため込んでいる。そして、先ほど申し上げたように、配当はどんどんふやしている。こういうことを是正していくのも我々立憲民主党の責任だと思っております。
 以上がグラフの説明でございます。


■質疑

○「アベノミクスの検証と評価」について

【記者】
 枝野代表に伺いたいが、「総合評価」の中で、貧困や格差の問題の改善につながらなかったと記載があるが、格差は広がったという認識ではなく横ばいとかそういったご認識ということでよろしいか。

【代表】
 いわゆるジニ係数に基づく格差は横ばいであるというふうに思っています。ただ、江田さんからご説明いただいたとおり、例えば大変多くの金融資産を持っている世帯や、そこに偏在している資産の額、そして、いわゆる億万長者の数がふえている、そして貯蓄ゼロ世帯がふえているということでは、ジニ係数にあらわれない実態としての格差の広がりというのは、これもまた否定できないものだろうと受けとめています。

【記者】
 総体としてアベノミクスは失敗だったという認識か。

【代表】
 はい、失敗でした、間違いなく。何が結論として一番正しい数字かというと、結局、潜在成長力を伸ばしていない、むしろ結果的に最終的にはマイナスにしているということは、明らかに失敗です。

【記者】
 先ほど代表は、過去の消費増税について、GDPの半分以上を占める消費を腰折れさせたと評価されたと思うが、特に2014年のほうは三党合意に基づく増税だったと思う。改めて過去2回の増税に関する評価を伺いたい。

【代表】
 私は、あの2014年のときも、あの時点の経済状況を踏まえれば、特に消費動向を踏まえれば予定どおり行うべきではないというのが、私自身が当時所属していた政党の公約でもあったと記憶しています。
 したがって、経済にかかわることですから経済の実態を見た柔軟な対応が必要だし、そのこと自体、制度をつくったときから指摘されていた、指摘していたにもかかわらず、まさに経済の実態を見ずに強行したということがこうした結果を招いたと思っています。

【記者】
 関連して。将来的な消費減税の必要性について改めてお考えをお聞きしたい。

【代表】
 特に、現状の(新型)コロナによる消費の低迷状況と生活困窮の状況を踏まえると、少なくとも時限的な消費税5%への減税、これは間違いなく必要だということで、既にお約束しているとおりであります。中期的には、特に富裕層に対する金融所得などを中心とした所得税、それから超大企業に対する優遇税制によって、むしろ中堅企業よりも税金を納めていない、こうしたアンバランス(の解消)を全体を見直すことの中で視野に入れていきたいと思っています。

【記者】
 格差が拡大したという話があったと思うが、この間、普通の働く人にとっては必ずしも悪い環境ではなかったという評価もあり、例えば雇用者は500万人近くふえ、正社員が200万人くらいふえており、雇用者報酬が30兆円くらいふえている。有効求人倍率や失業率の数字はご存じのとおりで、パートやアルバイトや派遣の賃金なども2倍近く上がっていて、働きたい人が働ける環境というのはあったと思うが、それについての評価を伺いたい。

【代表】
 実際には労働分配率が大きく下がっていて、そして家計消費も下がっているという、この客観的な全体のトータルとしての結果の前には、もちろん安倍政権ができる前の段階で仕事が見つからなかったが安倍政権ができたことで見つかったという方はそれはいらっしゃるでしょうし、それは働き方の分野やその方の待遇によってはいろいろあり得ると思いますが、トータルとして、しっかりと労働力、人に投資をしてこなかった。そのことによって消費を冷え込ませている。労働分配率も下がり、1人当たり賃金も下がっている。この客観的な事実は否定できない。今の数字はいずれも政府の都合のいい説明に過ぎない。トータルとしての結果は、きょう、今、江田さんから詳細ご説明していただいたとおりだと思います。

【記者】
 財政政策について伺いたいが、総裁選で、国と地方の基礎的財政収支、プライマリーバランスの黒字化について議論になっているが、岸田氏は2025年度の黒字化達成について年限ありきではないというような話をされている。この件について、御党の公約第3段を見てもなかなか公的支出をお考えのように見えるが、今後、2025年度の政府目標を守るなど規律を守るべきかどうか伺いたい。

【代表】
 きょう発表した、この約9年の経済運営の結果だけでも言えると思いますし、加えて、この2年近くに及ぶコロナによって、日本の経済と暮らしそのものが緊急事態の状況にあります。これを立て直すだけでも数年単位の時間がかかると思います。緊急事態においては、私も財政規律は重要だとは思いますが、財政規律よりも経済をしっかり立て直し、暮らしをしっかりと守ること、そこを優先せざるを得ません。したがって、基礎的財政収支の見通しについては一旦凍結せざるを得ないと思っています。

【記者】
 金融緩和は出口戦略が見えていない、財政政策はインフラ投資など消化不良に至った、成長戦略はあまりうまくいっていないと、3点それぞれ指摘されたわけだが、詳しくはまた次回以降経済政策でということになると思うが、そういった課題を立憲としてはどう解決していきたいとお考えか。

【代表】
 詳細はそう遠くなく発表できると思いますが、全体としては「適正な分配」と「あすの安心」がなければ消費はふえず経済は回復しない、成長しない。したがって、適正な分配と安心を高めることこそが何よりもの経済対策であると。こういう明確な転換を示していきたいと思います。

【記者】
 この結果を受けて、消費減税と富裕層への金融課税強化を目玉政策として打ち出していくと理解していいのかと、この結果を全国各地でプレゼンあるいはシンポジウムで発表するようなお考えはあるのか伺いたい。

【代表】
 前者については、そのとおりであります。
 後者については、もうまさに選挙戦が事実上始まっていますので、その選挙戦などを通じて全国各地の仲間がこれをうまく活用して、我々の政策をわかりやすく伝えていく。そのことに生かしていきたいと思っています。