枝野幸男代表ぶら下がり会見(#政権取ってこれをやるVol.5)
2021年9月24日(金)10時00分~10時50分
発行/立憲民主党役員室
★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://youtu.be/kHbqaS1xlNA
■冒頭発言
■質疑
■冒頭発言
○「#政権取ってこれをやる」第5弾 平和を守るための現実的外交
【代表】
おはようございます。きょうは「#政権取ってこれをやる」バージョン5ということで、外交・安全保障関連、「平和を守るための現実的外交」と題して発表させていただきます。
お気づきの方も既にいらっしゃるかもしれませんが、自民党政権ではできなかったと、ここまでのバージョン4までつけていた部分を外しております。外交・安全保障には継続性が重要であるという側面もあります。むしろ安倍・菅政権の9年近くの間に壊されてきたものを従来の我が国の外交・安全保障の王道に戻すという側面も含まれています。もちろん、一方で、我々だからこそ進められるということも含まれておりますので、全体に、自民党政権ではできなかったという部分を外しております。
1点目は、「健全な日米同盟を基軸とした現実的な外交・安全保障政策」ということです。日米同盟が基軸であるということは、従来の我が国の基本政策・基本方針を変えるつもりはございません。そして、専守防衛に徹し領土・領海・領空を守る、そのことのための現実的な対応を進めてまいります。特に、尖閣防衛を視野に、領域警備と海上保安庁体制強化の法整備を進めてまいります。我が国の防衛力整備の基本方針で南西方面の島嶼防衛を重視する方針に変えたのは北澤防衛大臣の際であります。また、私どもはいわゆる安保法制の整備の際に、尖閣防衛を視野に入れた現実的な安全保障という観点から、特に民間を装った尖閣地域に対するさまざまなアタックに対して現実的に対応するには、領域警備の体制、そして海上保安庁の強化ということが必要であるということで、法案もそのときから提出しております。私たちこそが現実的な尖閣防衛を進めていけると確信をしております。北朝鮮の核・ミサイル開発に対する対抗、そして拉致問題の早期解決に取り組んでまいります。竹島問題、そして北方領土問題の問題解決に全力を注いでまいります。
二つ目として、「地球規模の課題への積極的な取り組み」、これを加速します。一つは、核軍縮や国際的な平和構築にさらに積極的に貢献してまいります。特に核兵器禁止条約の締約国会合に対してオブザーバー参加を目指してまいります。国連などの枠組みに基づいて、気候変動など地球規模の課題に積極的に取り組んでまいります。SDGs推進基本法を制定して、政策立案や評価にSDGsの目標とターゲットを活用し、国全体で進めてまいります。さらに、さまざまな分野での各国間会合、特に人権外交、平和創造外交を展開し、国際社会において人道支援、経済連携、復興支援の観点で特に貢献してまいります。
三つ目。「対等で建設的な日米関係」を構築してまいります。沖縄県民の民意を尊重して、辺野古新基地建設を中止し、沖縄における基地のあり方を見直すため、アメリカと粘り強い交渉を開始し進めてまいりたいと思っています。抑止力を維持しつつ、特に沖縄を中心とする米軍基地の負担の軽減を図り、日米地位協定の改定を進めてまいります。私自身、経産産業大臣として通商分野での日米交渉を実際に最前線で行ってきた経験からも、我が国は必ずしも米国と対等な日米関係を進めてこなかったと思っております。もちろん相手方に配慮し柔軟に対応しなければならない部分があるのは間違いありませんが、そもそも我が国の立場・主張というものを明確に米国側に伝えてこなかった、粘り強い交渉をしてこなかったと受けとめております。こうした考え方を転換することが、米国にとっても健全な、建設的な、意義のある日米関係へと進展させていくことができると思っています。
4番目として、「経済安全保障・食の安全保障の確立」をいたします。我が国は今なお先端技術の相当部分では優位性を確保しています。この優位性を維持し、一方で、経済活動におけるルール形成の戦略を強化いたします。国益を重視した貿易ルールの形成や、農地・担い手の確保などによって、食料自給率を向上させてまいります。
こうした4点を柱に、平和を守るための現実的な外交を展開してまいります。
■質疑
○「#政権取ってこれをやる」第5弾について
【NHK・佐久間記者】
日米地位協定の改定について言及があったが、具体的にどこをどう変えていくのか。現状何がおかしいと思うのか伺いたい。
【代表】
実はかなり片務性の高いものになっておりまして、相手方もあることですので、どこから対等な関係に戻していけるのかというのは相手方の意向も踏まえながら戦略的に進めてまいりたいと思っています。一般論として、例えばドイツなどが類似の関係にある。そうしたケースを参考にしながら対等な関係に進めてまいりたいと思っておりますので、ここを優先するということは、今申し上げるよりも、全体的に対等性を確保していくということに向けて、あえて申し上げれば獲得しやすいところから進めていくということになっていくと思います。
【NHK・佐久間記者】
現在Quadが開かれているが、「自由で開かれたインド太平洋」という概念は安倍・菅政権で進められてきたものであるが、トランプ政権が進めて以降バイデン政権でもこの概念に言及があるなど継続の動きがある。立憲民主党政権ができた場合、この「自由で開かれたインド太平洋」という考え方は継承されていくか。
【代表】
そもそもが、インドあるいはオーストラリアなどを中心としてインド太平洋地域を広い視野で見た外交・安全保障戦略というのは、これも北澤防衛大臣などの時代にスタートさせたものだと思っております。したがって、どういうキーワードや概念であらわすかということについてはその時々で判断していきたいと思っておりますが、今のQuadを初めとする、日米同盟を基軸としながらインドやオーストラリアなどの国と「自由」「法の支配」「民主主義」といった共通の概念のもとに戦略的な連携関係を強化していくということは、むしろより積極的に進めてまいりたいと思っています。
【NHK・佐久間記者】
辺野古に関してのところだが、中止にした上であり方を見直すという交渉をしていくのか、それとも、中止措置にした上で交渉するのか。つまり、中止というものが交渉に入っているのか、中止に政府としてした上であり方見直しの交渉をしていくのか、どちらか。
【代表】
まず、一旦工事をとめることは国内問題だと思っておりますので、工事をとめます。その上で、普天間の危険除去のために、これは相当な時間がかかることを覚悟していますが、粘り強く米国と交渉してまいります。米国あるいは我が国にとっての抑止力にマイナスの影響を与えることなく現実的な解決を図ることは、粘り強い交渉の中で可能だと思っています。
【読売新聞・田村記者】
今の辺野古の関連で、代表としては普天間基地の機能をどうすべきとお考えなのか伺いたい。辺野古基地に確かに軟弱地盤など問題があるのは間違いないが、辺野古を中止にした場合に普天間が固定化されるおそれもあると思う。普天間が固定化してもよいのか、沖縄にそもそも海兵隊は要らないのか、それとも普天間の機能を本土のどこかに移転するのか。現時点でどうお考えか。
【代表】
普天間を固定するということは、これはこれでまた、普天間の周辺住民の皆さんの安全などを考えるときにはこれは容認できるものだとは思っておりません。
一方で、そもそも今、普天間基地にあり、辺野古への移設がずっと問題視されている米国海兵隊の、アジア太平洋地域における役割。そもそもこの問題が発生した20年(前)、あるいはさらに前の、それより以前の状況と、この10年間だけを見ても、大きく役割と機能は変化をしてきています。そうした原点から、この地域にアメリカの海兵隊の機能が、どういう役割が必要なのか。そして、そのためには我が国の領土の中にどういう機能が必要なのか。そこを一からしっかりと議論することで解決策を図っていく。したがって、これはまさに米国の世界戦略にも影響することでありますので、初めから結論ありきで私が申し上げれば交渉にはなりません。
【読売新聞・田村記者】
今の関連で、代表がおっしゃったとおり、そういったゼロベースで考えるとなると相当な時間がかかると思うが、10年前の鳩山政権のときに辺野古の基地移設問題に関してアメリカとの同盟関係が揺らいだというのは間違いない事実だと思う。そういう交渉をすることによって日米関係が揺らぐという懸念はないか。
【代表】
今も申し上げているとおり、明確に、アメリカにおける、特に太平洋地域におけるプレゼンス、極東アジアにおけるプレゼンス、その重要性についての認識は全く従来の日本政府の見解と変わりはないということは明確に繰り返し申し上げてきておりますし、過日、駐日米国臨時代理大使にもそうした考え方は改めて確認的にお伝えしてきているところでございます。
そして米国も、軟弱地盤問題などもあって、実際に辺野古に本当に基地がつくれるのかどうかということについては大変な疑問を持っているし、仮にできたとしても10年単位の相当先であることもわかっています。
したがって、基本姿勢が揺るがないということと、粘り強い時間をかけた交渉をするという姿勢があれば、日米同盟に影響を与えることはないと思っています。
【フリーランス・安積記者】
「竹島、北方領土の問題解決に全力を注ぐ」というところについて伺いたい。この問題解決の最終的な着地点というか目的というのはどういうふうなものになるか具体的に教えていただきたい。例えば竹島については日本の領土であるということを韓国に認めさせ返還させるまで至るのか、北方領土については四島返還まで至るのか伺いたい。
【代表】
北方領土については、まず、最終目的をお互いに出したら、これは国際間で平和的な解決はあり得ません。まずは北方領土については、東京宣言にあるように、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する。この四島の帰属は、我が国としては四島とも歴史的にも法的にも我が国の領土であることは明確だと。そういう主張に基づき四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということが日露間での問題だと思っています。
竹島についても、歴史的にも法的にも我が国の領土であることは明確だという我が国の認識と、現在の竹島の現実的な状況等を踏まえて、我が国の考え方をしっかりと国際社会と現実の状況に対してどう近づけていくのかということが当面の目標だと思います。
【「フランス10」・及川記者】
40年前、フランスがミッテラン大統領のとき、親ソ連の共産党が連立のパートナーだったので、当時副大統領だったお父様のブッシュさんがいらっしゃったときに、外交顧問で後に5年間外務大臣を務めるユベール・ヴェドリーヌさんは「同盟すれども同調せず」というアメリカに対する立場を明確にした。何か立憲民主党の外交姿勢・外交哲学を一言であらわすような用語はあるか。
【代表】
逆に一言であらわすといろいろな意味で誤解を招くと思っています。
私は、日米同盟、まさに我が国の外交・安全保障の基本的な理念は健全な日米同盟を基軸とするということに尽きると思っています。「健全な」というのは、一方的に日本が米国に忖度するのではなくて、お互いの理解も重要でありますが、まず我が国としての立場をしっかりと米国に伝える。そして米国にも、米国の国益や世界戦略と矛盾しない範囲内では最大限我が国の立場というものを認めていただく。これが「健全な」ということの意味です。健全な日米同盟が外交・安全保障の基軸です。
【「フランス10」・及川記者】
オブザーバー参加のことだが、核兵器禁止条約に批准することは目指すのか。
【代表】
まずは現実問題として、オブザーバー参加すらここまでの日本政府・外務省はしようとしてきておりません。我が国が日米同盟でいわゆる核の傘が本当に実効性のあるものなのかどうかは論争がありますが、まずその論争に入る前にオブザーバー参加をして、特に唯一の戦争被爆国としての経験、それから被爆者の皆さんに対する支援、こうしたことについて、核兵器禁止条約の締約国会議での重要な課題でありますので、そこに唯一と言っていい当事国である我が国がオブザーバー参加すらしないというのは国際社会における責任を果たせないと思っています。これについてであれば米国の理解は得られると私は思っています。
【「フランス10」・及川記者】
最後に、きょうのテーマとは違うが、公明新聞が、立憲には任せられないというシリーズを組んでいて、旧民主党時代の批判をしている。一つが、16.8兆円の財源捻出、全くめどが立たない。子ども手当、児童手当に逆戻り。最低保障年金も実現せず。高速道路無料化も実現せず。八ッ場ダム建設再開。ガソリン税の暫定税率廃止も実現せずと。そして、菅直人内閣のときに官房長官だった枝野さん、官房副長官は福山さん、行政刷新担当大臣が蓮舫さん、今は代表代行、そして菅直人さんが最高顧問と。立憲の支持が広がらないのは、党の看板がいまだに旧民主党、そして今述べたことについて反省をしていないと。そう批判しているが、それについてはどうお答えになるか。
【代表】
特定の政党の機関紙が特定の一政党を、それだけターゲットにしていただくというのは、よほど我々も脅威になる存在まで成長できたということから、喜んでおります。
我々、私も09年からの非自民政権で一定の役割を果たさせていただきました。そういうメンバーが多いのは間違いありません。そこで期待に応え切れなかった反省を踏まえて、この10年間、我々はさまざまなアプローチをして、そして、それを克服するための準備を進めてまいりました。鳩山政権や菅政権でうまくいかなかったということについていろいろおっしゃるのであれば、公明党さんも、例えば麻生政権や第1次安倍政権や菅政権で公明党さんのさまざま閣内でなさってきたことについての反省をしっかりとお示しいただきたいと思っております。私どもは、この9年の間、繰り返し「こうしたところが問題だった」ということをさまざまな機会に申し上げて、それを踏まえて、そうした教訓を踏まえて、しっかりと政権の運営ができる準備を整えております。
【フリーランス・宮崎記者】
1996年の橋本・モンデール合意に関して、普天間基地返還と辺野古新基地ということになるが、アメリカの臨時代理大使に会われたということだが、江田憲司さんは怒るかもしれないが橋本・モンデール合意に関してどれだけの実効性があるのか。つまりアメリカにとっても、海兵隊というものに関して、国防総省のほうで沖縄や座間やグアムで海兵隊がもっと頑張れるようにしたいなという、そういう将来像はあまりないと思う。これはモンデールさんが大使をやめる直前にできた文書だが、橋本政権にとっては大変な功績として当時は受けとめられていた。ところが25年間、全く何も進んでいない。この橋本・モンデール合意をそのまま基軸として、とりあえず辺野古新基地の中止だけをして、日米の交渉を再度始めるということか。
【代表】
私は、橋本・モンデール合意は、その時点においては一定の価値があったものだと思っております。ただ、まさに25年たっています。25年間、普天間の返還が実現していない。そのことについては鳩山内閣が一定の責任がある。そのことも認めた上で、しかし、この25年間の間に沖縄を含む極東アジアの安全保障情勢や、例えば軍事技術その他も大きく変化をしております。もちろん国際合意ですから、そのことを現時点で前提にしなければならないとは思っております。ただし、米国側も、あるいは国際的な軍事状況も変わっておりますので、一旦工事をとめた上でゼロベースで議論するということについてアメリカは理解いただけると私は思っています。
【フリーランス・宮崎記者】
この25年間、橋本・モンデール合意の見直しに言及した政治家は与野党ほとんどいなかったと思う。もちろん今、アメリカは民主党バイデン政権ということで、バイデンさんにとっては当時既に上院議員で、先輩のモンデールさんが大使という形でやったという認識をひょっとしたら持っているかもしれないが、場合によっては橋本・モンデール合意に関してかなり白紙に戻して海兵隊や国務省の人も含めて話し合いを再度するというところぐらいから見直すということはあり得るか。
【代表】
国際合意ですし、私は、その時点で一定の意味のあった、大きかった、橋本さんの一つの功績だと歴史的に認めていいと思っています。そして国際的な合意ですから、一方的にそれを見直すとかという話ではなくて、国際状況が変化していますから、さまざまな議論の中で、結果的にそういったこともあり得るだろうと。ただし、初めから結論ありきではなくて、そうした橋本・モンデール合意が現状の安全保障環境等の変化の中でどう状況が変化しているかなども含めた議論をしていく。その中で結論は、そのアメリカとの協議の中で出てくると思います。
【共同通信・小野塚記者】
北朝鮮のミサイルに対してどのように対峙していくお考えかというのが一点と、敵基地攻撃能力の保有について総裁選でも議論になっているが、この保有についての賛否についてと、もしこれについて反対なり慎重であるということであるならば、どのように対峙していくべきとお考えか伺いたい。
【代表】
北朝鮮のミサイルは、我が国だけではなく、地域の安全を脅かす深刻な脅威であります。また、事前通報もなくEEZ内の水域に着弾させたりしております。航空機や船舶の安全確保の観点からも極めて問題のある、危険な行為であります。明白な安全保障理事会決議違反でもあります。引き続き必要な情報収集・分析及び警戒監視を行い、ミサイル防衛体制の向上を含む、脅威に対処できる防衛体制を着実に構築してまいります。また、北朝鮮の完全な非核化、あるいはミサイルに関するさまざまな暴挙を食いとめるためには、我が国単独ではなく、日米そして日米韓三国を初めとする国際社会と緊密に連携しながら、安保理決議の完全履行に向けて国際社会と連携した圧力をかけていく。こうした必要があると思っていますし、また、そのように進めてまいりたいと思っております。
いわゆる敵基地攻撃能力についてでありますが、近年のミサイルは移動式発射台や潜水艦から発射され、発射寸前のミサイルを叩くことは非常に困難で、能力が本当に獲得できるのか。また、それに対する費用がどれぐらいかかるのか。自衛隊が自前で獲得する能力としては現実的でないというのがリアリズムに立った専門家の圧倒的な指摘であると思っております。まさに日米同盟が我が国にとって不可欠な基軸であるというのは、アメリカのいわゆる盾と矛の役割分担も含めて、日米同盟をしっかりと基軸として、弾道ミサイルを含む空からの脅威から国民の生命と安全を守るために、新たな先端防衛技術の開発も含めて、ミサイル防衛能力を強化してまいりたいと思います。
【共同通信・小野塚記者】
別件だが、対中国政策について伺いたい。対中国の政策をどのようにしていくかという点だが、TPPへの加盟を最近中国が申請したが、これについての対応と、尖閣諸島について、現状変更の試みということでやっているかと思うが、ここにも「領域警備と海上保安庁体制強化の整備」ということがあるが、そのほか何らか具体的に対応方針があれば教えていただきたい。
【代表】
日中関係は、地理的な関係を考えても、重要な二国間関係の一つであることは否定できません。両国は地域と国際社会の平和と繁栄に大きな責任を共有していると思っています。安定した日中関係が本来望ましいというふうには思っております。しかしながら、尖閣諸島など東シナ海を初めとする海洋問題、安全保障問題については毅然とした対応が必要であり、中国が国際社会のルールにのっとり、大国の責任をしっかり果たし、国際社会の期待に応えていくことを強く求めてまいりたいと思っています。日米同盟を基軸としつつ、国際社会と連携しながら、中国とも地域の平和と繁栄のための建設的な関係が築けるよう、中国に対してはさまざまな形で国際社会と連携したアプローチを進めてまいります。
尖閣諸島周辺における中国の独自の主張に基づく力による一方的な現状変更の試みが継続しております。この行為は国際法違反であり断じて容認できないという姿勢で厳しく臨んでまいります。こうした行為を防ぐためにも、領域警備に関連する法制、海上保安庁の強化、そして海上保安庁と自衛隊の連携というものをしっかりと強化させてまいりたいと思います。
【共同通信・小野塚記者】
中国のTPPへの加盟についてはどのようにお考えか。
【代表】
中国がTPPで今合意されているさまざまなルールをそのまま受け入れていただけるのであれば、国際社会にとって望ましいことだと思っております。中国が加盟することのために、既に決められているルールを変更することは認めることができない。したがって、中国は大幅な経済貿易政策を転換する、その意思があるのかどうかが問われていると思います。
【朝日新聞・吉川記者】
台湾有事について、どういった備えが必要かというお考えと、万が一起きた場合の対応についてお聞きしたい。
【代表】
台湾は日本と非常に近接しておりますし、日本との経済関係だけではなく人間関係も大変深い関係にあります。あるいは、日本の東日本大震災など困難なときに最も親身になって我が国を支援していただいたのは台湾の皆さんだと感謝いたしております。
台湾海峡の平和と安定は我が国にとってとても重要です。米国バイデン政権が、台湾海峡の平和を守るという明確な姿勢をとっていることを歓迎いたします。我が国は、我が国のさまざまな制度で許す範囲の中で、このバイデン政権の台湾海峡に対する姿勢・行動をサポートしてまいりたいと思っております。
【朝日新聞・吉川記者】
今回の発表で安保法制については特に直接的な言及はなかったかと思う。「市民連合」との政策合意では違憲部分の廃止ということを掲げていたが、改めて安保法制についての考え方と、先ほど自民政権からの継続性という話もあったが、安保法制の違憲部分を廃止した場合、継続性の観点からどうなるのかお聞きしたい。
【代表】
安保法制において集団的自衛権の一部行使容認をしておりますが、日米同盟を初めとする我が国の外交・安全保障の観点から、集団的自衛権の一部行使容認という憲法を無視した論理構成をすることなく現状の日米同盟や我が国の安全保障は維持できると考えております。したがって、憲法に反する安保法制の違憲部分については撤回するということは、外交・安全保障政策ではありません。内政問題、憲法問題です。
【フリーランス・横田記者】
辺野古新基地建設は軟弱地盤で工期もかかるし欠陥基地になるおそれがあるということで、莫大な税金の無駄になるおそれがあるという理解でよろしいかということが一点。
河野行革担当大臣は沖縄振興も担当し、税金の無駄撲滅が役割のはずなのに、菅政権が発足した直後に沖縄を訪問して玉城デニー知事から辺野古見直しの要望書を受け取ったのに一言も触れなかった。こういうアメリカに物を言わず税金の無駄に切り込まない姿勢についてどう思うのかということと、あわせて、河野氏については、脱原発を封印したり、ワクチンの供給減を2カ月間黙っていたり、いろいろ資質として問題があるような気がするが、枝野代表の見解を伺いたい。
【代表】
まず前段については、もちろん多額の税金がかかり、その上でも完成しないのではないかと言われているのは、税金の無駄という観点からも重要ですが、まず何よりも沖縄の民意ということから現実性がない。その上で、いつになったら完成するかわからず、本当に完成するかわからないというようなものに、アメリカと真摯に交渉すれば、アメリカの理解は得られる。そういう意味で、その今の現状というのは重要だと思っております。 後者については、現職大臣としてのワクチン大臣のさまざまな言動については野党の立場で行政監視をするという観点からコメントいたしておりますが、個別の自民党総裁(候補)についてコメントいたしません。
【東京新聞・我那覇記者】
辺野古基地の関係で幾つか確認も含めてお尋ねしたい。今、若干言及があったが、中止する理由というのは、つまり県民投票で反対の意思が示されているからと。「民意」というのは主にそこを指していると理解してよろしいか。
【代表】
もちろん外交・安全保障ですので、例えば我が国の安全あるいは外交の観点から致命的な問題を起こすという状況であれば、その矛盾をどう解決するのかという課題を政治は現実的に対応しなければなりません。しかし、その点については、何度かきょうだけでも繰り返しておりますとおり、粘り強い交渉をすることによってアメリカにも理解を得ながら工事をやめるということは十分可能であると。それが可能である以上は、民意に従った対応をする。しかも、これだけ繰り返し強い民意が示されているということを考えれば、その民意に従うことは政治の責任であると思います。
【東京新聞・我那覇記者】
県民投票も踏まえてという理解でよろしいか。
【代表】
県民投票などを含めて、繰り返し強く示されてきた県民の民意ということです。
【東京新聞・我那覇記者】
関連で、先ほど交渉事だからというお話もあったが、新基地を中止したことに伴う普天間の代替策というか、普天間をどういう扱いにしていくのか。当面は継続使用ということかもしれないが、将来的な展開も含めてイメージを持っていらっしゃるかお聞きしたい。
【代表】
まず、どちらにしても、今のまま強行しても、辺野古が完成して普天間の基地の(危険)除去ができるのは、10年たってもできるかどうか、20年たってもできるかどうかという現実にあります。その間に、粘り強い交渉の中で代替策というのは結論が出ていくと思っておりますし、代替が必要なのかということを含めてゼロベースで米国と、現状の、そしてこれから見通せる東アジア太平洋地域における安全保障環境を踏まえた交渉を進めてまいります。初めから結論ありきでは交渉にはなりません。
【東京新聞・我那覇記者】
基地関係だが、沖縄防衛局がことし4月に沖縄県に提出した設計変更承認申請書では、埋め立てに使う土砂の採取地として、沖縄戦の遺骨が多く残っている糸満市なども候補に挙がっているが、これについて代表のお考えを伺いたい。
【代表】
工事をとめるわけですから、当然それもとめるということに。これも沖縄の皆さんを初めとするまさに国民感情を無視する暴挙であると思っておりますので、工事をとめることによってそれもとめることができると思っています。
【日本経済新聞・中村記者】
経済安全保障について伺いたい。「経済活動などにおけるルール形成戦略を強化する」とあるが、政権をとったときにこういう政策に取り組むというところをもう少し詳しく伺いたいのと、自民党総裁選で担当閣僚を設けるとか推進法を制定するなど、重要技術の海外流出という脅威にどういうふうに立ち向かうのか議論になっていて、代表として重要技術の海外流出という脅威にどういうふうに対応されていくのかに関してご見解を伺いたい。
【代表】
まず、後者の流出の問題ですが、これは二つの面があって、混在させて議論してはいけないと思っています。一つはまさに犯罪あるいは犯罪的な手法でスティールしていくという話をどうやってとめるかという話と、実は日本における研究開発環境が余りにも弱くなってしまっているがために優秀な頭脳が海外に流出している。この二つは切り離して議論しなければいけないと思っています。
一つ目は、頭脳の流出という観点については、特にすぐに成果に結びつくかどうかわからない中長期的な視点に基づく研究開発、あるいはそれを担うべき研究者の皆さんの雇用環境、こうしたものを充実させていくことが結果的に頭脳流出を食いとめていくことになると思っております。これはまさに我が党の教育・科学技術政策の大きな柱だと思っておりますし、広く捉えれば国立大学の運営費交付金を大幅に増額して、いわゆる競争的資金ではなくて、ベースとして安定的に研究にいそしんでいただける、国立大学においてだけでもまずはすぐにこれを取り戻したいと思っております。
いわゆる犯罪あるいは犯罪的な方法に基づく流出ということについては、さらに我が国の法制上厳しくできる余地があるのかどうかは常に検討していかなければなりませんが、むしろ、やはり国際ルールが重要であると思っております。特に、IT環境の変化ということの中で、いわゆるサイバー攻撃のようなところで流出するケース、あるいは従来の商慣行とは違う中でさまざまな取引が行われているということについて、やはりそれはお金の面でのGAFA規制ということにとどまらず、公平・公正なルール、そして各国の安全保障という観点などをしっかりと見据えたルールづくりをしていかなければならないと思います。
担当大臣を置くことが果たして合理的なのかというと、私は必ずしもそうは思いません。やはり貿易通商ルールは経済産業省と経済産業大臣がいずれにしても担うし、担当大臣を置いたからといって、結局、通商交渉を担ってきた経済産業省の人間がやってきているという実態をよく存じ上げていますので、経済産業大臣と外務大臣と官邸とでしっかりと連携してやっていくことが一番実効性が上がると思っています。
【北海道新聞・袖山記者】
対ロシア外交、平和条約についてもう少し伺いたい。安倍前政権は2018年11月のシンガポール合意で、1956年の日ソ共同宣言を平和条約交渉の基礎に位置づけ、四島返還から二島返還の方針に事実上の転換をした。菅政権も安倍政権の対露外交を継承していたが、北方四島での共同経済活動を含め、交渉は現在行き詰まっている状態だと思われる。
その上で3点伺いたい。1点目は、安倍政権以降の対露外交をどう評価していらっしゃるか。
2点目は、先ほど言及されたが、四島返還とおっしゃっていたので、安倍・菅政権の方針を転換されるということでよろしいのか。
3点目は、行き詰まった状態の北方領土問題を具体的にどのように解決していこうとお考えか伺いたい。
【代表】
結論から申し上げて、安倍政権、それを引き継いだ菅政権の北方領土外交は明らかに失敗だと思っております。二島先行返還という、我が国としては大幅な妥協と言わざるを得ない、そうしたアプローチをしたにもかかわらず、結局何が行われたかといったら、択捉島や国後島に軍事設備が増強され、経済開発が進み、実効支配が強化されてきました。北方領土における共同経済活動を安倍前総理が提案したわけですが、信頼醸成どころか、海外から北方領土への投資を促す経済特区をつくる口実にされ、実効支配を内外に示すことに一役買っている。一方で、二島先行の話だけでも進んだのか。それすら全く進んでいない。明らかに、こちらから先にお土産を出したけれども何も得られていない、こういう状況であります。
東京宣言、これは有効なわけですから、東京宣言に基づいて四島の帰属問題を解決しなければ平和条約は締結できないと、毅然とした姿勢をとるべきだと思っています。
【産経新聞・田中記者】
敵基地攻撃能力のところで伺いたい。先ほど、技術的に現実的ではないという趣旨のお話だったと思うが、新たな先端技術の開発も含めて対応していくというお話があったと思う。先端技術というと例えば人工衛星の監視能力の強化であるとか電磁波とかサイバーとかいろいろ考えられると思うが、そこのところでもう少し具体的に伺いたい。
【代表】
先ほど申しましたとおり、いわゆる敵基地攻撃能力の問題については、まさに日米同盟を基軸とするとしていることの一つの大きな意味で、やはり盾と矛の役割分担というのがある。これは米国が矛の役割を担うというのが日米同盟の一つの大きな柱だと、現実的な柱、実態的な柱だと思っています。アメリカのさまざまなそうした技術について、日本が協力できることは協力すべきだと思っています。
一方で、いわゆるミサイル防衛について、逆に発射の場所が移動する、それからミサイルの種類によってはいわゆるミサイル防衛をかいくぐるという、これは軍事競争というのは守る側を強くすれば、盾を強くすれば矛も強くしようと相手がするということですので常にイタチごっこではありますが、いかに相手から打たれたミサイルを我が国の国民・領土に影響を与えずに途中で食いとめるのかということについては、ご指摘の点なども含めて、それは最大限、最先端技術の開発ということについては努力をするという姿勢です。
【産経新聞・田中記者】
別件だが、安保法制の違憲部分を廃止するということは、存立危機事態や重要影響事態を廃止するということは、ほぼ安保法制そのものを廃止するのに近いと思うが、実際安保法に基づいて米艦防護など幾つか共同の日米のオペレーションが行われており、あるいは同盟関係の片務性の是正という意味でも意義があるという、防衛省の制服組も含めて政府関係者のそういう意見は多いと思う。そういう中で、強固な日米同盟を維持できるという、変わらないという理由がよくわからないが、そこのところをもう少し伺いたい。
【代表】
私は、その自衛隊の制服組の見解もよく理解をいたします。しかしながら、我が国の国内法である日本国憲法の解釈の問題として、集団的自衛権という説明の仕方をしなくても、今、安保法制に基づいて米軍などと進めている共同行動、そこで想定されている事態は、いわゆる解釈の一方的な改悪の前の解釈のもとでも十分に可能であると思っています。つまり、必要のない解釈変更をしていると思っています。
【フリーランス・宮崎記者】
TPPに関して改めて伺いたい。イギリスが交渉に参加したいと。そして中国が来て、台湾が来た。アメリカはもちろん離脱している。きょうの新聞に、政府の誰かが話していることで、イギリスと交渉してアメリカに帰ってきてもらいたい、そして中国と台湾に関しては台湾と丁寧に交渉することによって中国との間で時間をできるだけ稼ぎたいという趣旨の、政府の誰かの認識があり、そのとおりかなと思った。先ほどご指摘あったように中国のルール変更というものはTPPの枠組みでは認められないが、このイギリス・中国・台湾の今後の交渉についてどのようにお考えか。
【代表】
台湾は既にTPPの大枠としてのルールをそのまま受け入れるという方向だと私は認識しています。もちろん個別の数値目標などについては交渉が十分には必要です。ですので、台湾のTPP参加の意向は大歓迎であります。
イギリスについても、そもそもトランスパシフィックというところを超えてしまいますが、それは同じ共通のルールで、より幅広い皆さんが経済活動を促進するということは望ましいことだと思っていますので、アメリカへの呼び水ということの前に、まずイギリスが参加されること自体が歓迎すべきことだと思っています。イギリスも基本的な大枠の方向性、ルールについては基本的には受け入れる前提だと思っていますので、こちらも私は、むしろできるだけ早く交渉を進めることで、台湾にしてもイギリスにしても現状のルールのもとにTPPに入っていただけるのであれば歓迎をいたします。
【「フランス10」・及川記者】
アフガン戦争、イラク戦争はどう総括されるか。
【代表】
イラク戦争については、そもそもの根拠というものが間違っていたのではないかという指摘もあります。ただ、もはや我が国の外交・安全保障あるいは日米関係を規律する上では、リアルな現場の政治の問題というよりも、歴史の評価の問題に既に入っているのではないかと思っています。
アフガニスタンについては、やり方、特に撤退プロセス、その他、問題もたくさんある一方で、少なくともこの間、全く人権も教育も受けられなかったアフガニスタンの女性が、一定の期間とは言いながら、一定の教育を受ける機会を得ることができていたなど、女性を初めとする人権を守ることのために汗を流し血を流してこられた皆さんに敬意を表したいと思っています。民主主義は一度なかなか開いてしまうと閉じにくいという歴史的な現実がある中で、何とタリバンも、この間の一定の人権がいい方向に前進してきたことをしっかりと踏まえた対応をして、特に女性の人権、特に教育を受ける権利などについて認めるように、国際社会の中でプレッシャーをかけていく。そのことによって、この間の努力がどれぐらい、あしたに向かって意義を持つかということにかかわってくるのだと思っています。
○地方行脚について
【毎日新聞・宮原記者】
きょうの発表以外のところで申しわけないが、代表はきのうも宮城県に行かれるなど地方行脚を活発にされていると思うが、その手応えと、今後地方行脚をする上で、例えば衆院選で接戦区になりそうなところとか、あるいは受け入れ態勢等もあると思うが、どういった基準で今後行脚に回っていくか、衆院選までにやっていくかというところを伺いたい。
【代表】
この間の祝日・月曜日の千葉は、本当に想像を超える、よい手応えを受けました。取材に来られた方は同じような感想を持っていただいたようでございますし、きのうも、特に(宮城)3区の新人のところが、落下傘ですから、たぶん現地で受け入れてくれた自治体の皆さんが頑張っていただいていることのあかしだと思うのですが、2カ所とも地域事情を考えると大変たくさんの人に集まっていただいていて、そうした意味では想像していたよりも手応えを感じているところであります。
今後についてなのですが、実は明確に重点区をやるとか接戦区をやるという、こういうのはそういう単純なものではない。もちろん接戦区にテコ入れをしたいし、弱いけれどもここから頑張れば伸びていく期待のできるところをやりたいし、でも、弱いところも、だからこそテコ入れをしておきたいし、ということをどうバランスをとるかというバランス感覚が問われる話なので、どれかみたいな形で戦略を立てるというよりも、私だけではなく、地域ごとに適正というか向き不向きもあります。そうした意味では、いわゆる執行部だけではなく自主的に最高顧問の皆さんが既に回っていただいたり各地に応援に入っていただいたりしていることも含めて、面として全体としてやっていきたいと思います。