立憲民主党法務部会の真山勇一部会長は12日、法務省の出入国在留管理庁を訪れ、「入管行政の抜本改革を求める要請」を佐々木聖子長官に手交しました。
真山部会長は、岸田内閣が発足したものの予算委員会すら開催せず衆議院を解散するとしており、今回の申し入れは政府が至急取り組むべき課題を部会として取りまとめたものであると説明しました。
要請の第1項目である名古屋入管のビデオ開示について「保安上の理由とウィシュマさんの尊厳、個人情報ということで公開していただけない。一部はご遺族に開示されたが、弁護士の立ち合いも認めていただけなかった。これを何とか全編公開してほしい。また私たち国会議員も開示を求めているので対応していただきたい」と強く求めました。
要請の第2は、国会からの調査・説明要求に対し真摯かつ積極的な対応を行い、国会の議論を十分反映した法改正を検討すること。第3は、2019年改正の入管法の検討条項における見直し期限が既に到来しており速やかな法改正を検討すること。第4は、集団送還の実態調査と被害回復を求めるものでした。
会派法務部会は、これに先立つ8日、駒井知会、高橋済の両弁護士から「強制送還の高裁違憲判決およびウィシュマさんビデオ開示」についてヒアリングしました。駒井さんはウィシュマさんご遺族の、また高橋さんは強制送還国賠訴訟の代理人として活動してこられた弁護士です。
駒井さんは、10月1日に視聴した約90分のビデオの内容を、自身が描いた挿絵を使いながら報告しました。法務省が取りまとめた最終報告書では事実は絶対に見えてこないとして、「映像を見ないと真実はわからない。ビデオを見て本当に深刻な様子が分かった」と指摘しました。また、名古屋地裁に証拠保全の申し立てが認められ、裁判官とともに9月24日、名古屋入管に証拠調べに入ったものの、そのわずか3日前に名古屋地検がほとんどの書類を押収していたことが判明。そのタイミングの良さにも疑問を呈しました。
高橋さんは、入管庁がスリランカ人2人に裁判を受けさせず強制送還したとして賠償を求めた訴訟で、東京地裁が20年2月27日、合憲適法判決を出したものの、東京高裁が2021年9月22日、逆転の違憲判決を出したことを報告。政府はこれまで集団送還について回答を拒否することがほとんどで、今回違憲とされた手口と同様の送還の実態は不明であると説明しました。
部会終了後、階猛副部会長は部会で取りまとめた要請書を古川禎久法務大臣に手渡しました。
佐々木長官との意見交換で真山部会長は、「ビデオを開示し、こうしたことが二度と起きないような入管体制を議論していくのに役立てたい」と改めて要請するとともに、野党6党が第204回国会に提出した入管難民保護法案について「日々いろいろ動いているので、それを加味しながら現実に沿った修正を加えて出し直したい」と述べ、野党案をブラッシュアップして次の国会に臨む考えを示しました。また集団送還についても、「高裁の違憲判決が出たので、これについても対応をお願いしたい」と要請しました。