参院本会議で13日、岸田総理の所信表明演説に対する代表質問が行われ、「立憲民主・社民」会派を代表して立憲民主党の森ゆうこ副代表が登壇。参院予算委員会の野党筆頭理事を務める森議員は「私たちは、オリンピック開催下で感染爆発し、医療が崩壊の危機に瀕している状況から国民を救いたい。国会を開き、必要な予算や、私たち野党が既に提出している法案などを審議し、予備費を支出するなどして、迅速に対応することを強く求めてきた」と主張し、応じなかった政府・与党の姿勢を強く非難しました。そのうえで、「第6波は必ず来る。そして苦境にあえぐ生活者・事業者は限界を迎えようとしている。今、審議をして、予算を決め、対応をスタートしないと間に合わないのではないか」と警鐘を鳴らし、 岸田総理に予算委員会の開催を求めました。

■ 新型コロナウイルス感染症対策

 臨時医療施設の開設について、森議員は「なぜオリンピックのために医療従事者が7000人も集めることができて、自宅で放置されているコロナ感染症患者を救うために医療従事者を集めることができないのか」岸田総理にただしました。

 地域医療構想について、森議員は「安倍・菅政権は、コロナ禍で病院のベッドを増やさなければいけないなか、ベッド数を削減するという支離滅裂な政策を進めてきた」と指摘し、岸田総理に同政策の中止を進言しました。

 エアロゾルによる空気感染を前提とした感染症対策について、森議員は「WHOも認めている。昨年の予算委員会から指摘してきたが、厚生労働省は認めなかった。8月18日に、38人の日本の科学者が空気感染を前提に対策をとるように提言した」とこれまでの厚労省の姿勢について苦言を呈しました。そのうえで、岸田総理に科学的根拠に基づいた合理的な感染症対策に転換するよう進言しました。

 岸田総理は今後のコロナ対策について、全国の自治体と連携しながら、病床と医療人材の確保に取り組んでいく考えを示しました。

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■経済政策・産業政策の失敗

 森議員は代表質問で岸田総理がアベノミクスについて、「『六重苦と言われた旧民主党政権の経済苦境』や『民主党政権の失敗から学んだ』などと繰り返し、まるで安倍元総理が乗り移っているように見えた。自民党は9年経っても、まだ民主党の悪口を言わないと自分たちを正当化できないのか」と強く批判しました。そのうえで、岸田総理に「アベノミクスは成功したのか、失敗したのか」明確な答弁を求めましたが、岸田総理は「効果はあった」と述べるにとどめました。

 また、過去20年主要先進諸国が時給を60%以上増加させている一方、日本だけが時給が上がらず、9%も下落していると指摘しました。

 新自由主義からの転換について、森議員は岸田総理に(1)新自由主義から決別するのか、しないのか(2)新自由主義の旗振り役であると国民が認識している竹中平蔵氏と決別することを勧める(3)規制改革推進会議、国家戦略特区WGなどの官邸会議を改めるべきではないか――と進言しました。

 真の「分配」政策について、森議員は 岸田総理に減税の実施と負担増(後期高齢者の窓口負担増、児童手当特例給付の削減等、インボイス制度の導入)の撤回を求めました。 立憲民主党は消費税5%への時限的減税、所得税の減税を提案しています。岸田総理は「消費税増税は当面考えていない」と答弁し、その他の負担増の撤回を否定する考えを示しました。

 クリーンエネルギー成長戦略について、森議員は岸田総理に「昨年12月に『2050カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』は策定済みだが、クリーンエネルギー成長戦略とグリーン成長戦略はどのように違うのか」見解をただしました。岸田総理は明解な回答は避け、気候変動政策として、再生エネルギーのみならず、原子力や水素などのエネルギーを活用していく考えを示しました。

■子育て政策の失敗

 森議員は岸田総理の所信表明には「人口減少」という言葉がなかったと指摘し、2020年の出生数は84万人で、これは国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計より、3年も早いペースだと説明。12年前の民主党政権で創設した子ども手当について、当時の野党自民党から「子育ては自己責任だろ」「バラマキだ」と猛烈な批判を受けたと振り返りました。そのうえで、「出生数を増加に転じさせることは極めて困難だ。国の存続の危機を招いたのは自民党の責任ではないか」と強く批判しました。

 森議員は立憲民主党は「チルドレン・ファースト――社会全体で子どもの育ちを支える」という理念のもと、子ども・子育て予算の倍増、「子ども省」の創設、出産費用の無償化、児童手当の所得制限撤廃と対象の拡大、義務教育の学校給食の無償化、高校授業料無償化の所得制限の撤廃をおこなっていく考えを示しました。

 そのうえで、岸田総理に「子ども政策に対し、従来の自民党の考え方を転換しないと、大胆な政策は実現不可能だが、岸田総理にできるのか」見解をただしました。

 また、地域に根差した農林水産業、中小・小規模事業者の後継者不足などが深刻な状況になっているとし、立憲民主党は、地域の潜在力を活かした自然エネルギ―立国、多面的機能を十分に発揮できる農林水産業・農山漁村など、地方が活力に満ち溢れるような産業政策を実現していく考えを示しました。

■ジェンダー平等

 森議員は「岸田総理は『多様性が尊重される社会を目指す』と言いながら、選択的夫婦別姓、LGBT、ジェンダー平等について、自民党の選挙公約に入っていない」と述べ、野田聖子国務大臣に「どうなっているのか、これでいいのか」と強く迫りました。野田大臣は岸田総理をはじめ政府全体として、全力でジェンダー平等を進めていく考えを示しました。

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■憲法改正

 森議員は「昨年1月29日、武漢からチャーター機で初めて邦人が帰国した時から、政府対策本部の設置に始まり、法律の適用、現金給付の立法など。野党が政府のお尻を叩きながら、何とか対策を実施してきたのが実情だ。しかし、自民党からは、事あるごとに『憲法に緊急事態条項がないからコロナ対策が上手くいかない』と言われた」と痛烈に批判しました。そのうえで、岸田総理に「総理ご自身として、憲法改正、特に緊急事態条項の創設をどうしても進めたいのか」ただしました。岸田総理は憲法改正について、明言を避け、緊急事態の備えは必要だと答弁しました。

■拉致問題

 2002年9月17日に北朝鮮が拉致を認め、5名の拉致被害者の方々が帰国されて以来、19年が経過しました。森議員は「2005年に横田めぐみさんのご両親と一緒に、韓国の故・金泳三(キム・ヨンサム)元大統領のご自宅で、金正日総書記のナンバー2で北朝鮮から亡命した黄長燁(ファン・ジャンヨプ)氏と会談し、拉致被害者の皆さまが生きていることを確信した」と振り返りました。

 そのうえで、岸田総理に今後の打開策について、見解をただしました。岸田総理は総理就任後、バイデン米大統領、習近平中国国家主席と電話会談をおこない、北朝鮮の金正恩総書記との会談も目指していく考えを述べました。

■民主主義の危機

 森議員は「政治家がだれも責任を取らないことは民主主義の危機か、という辻元衆院議員の極めて具体的な質問に対して、岸田総理の答弁は意味不明だ。このように国会において内閣総理大臣が質問にまともに答えない、これこそが民主主義の危機ではないか」と岸田総理に見解をただしました。岸田総理は「自分の言葉で、丁寧な対話を重ねていく」と述べるにとどまりました。

 森議員は「河井案里前参院議員の裁判の過程で、河井克行元法務大臣が業者を雇い、架空の人物を名乗ったブログ記事で、対立候補のイメージ悪化を狙った投稿をするなどのネット工作を行ったことが分かった」と驚くべき事実を報告しました。そのうえで、「河井陣営に渡った政党交付金を原資とする1億5千万円がネット工作に使われていなかったと断言していただけるか」岸田総理にただしました。

 また、「小西・杉尾両参院議員の調査により、野党を攻撃してきたツイッターアカウントの運営者が法人であることが判明した。お金を使ってネット工作を行い、選挙の結果を不当に歪めるような卑劣な行為を自民党の議員におこなわせないとお約束いただけないか」と迫りました。岸田総理は公職選挙法に抵触するような選挙活動があってはならないという考えを示しました。

 森議員は「結局は今だけ、金だけ、自分だけ。一部の人だけが得をする忖度政治が続いています。今こそ政治を変えましょう。総選挙を目前に控え、政治を変えることができるのは、この国の主権者である国民の皆さまだけである」と訴え、質問を結びました。