立憲民主党は21日、札幌市内のホテルで代表選挙の候補者討論会をおこないました。テーマを「コロナ対策、農政を含めた地域活性策」として、逢坂誠二、小川淳也、泉健太、西村ちなみ各候補が政見を述べ、候補者間討論をおこない会場からの質問にも答えました。
候補者政見
■西村ちなみ候補
西村候補は農業について、「地域の農村で生計を立てている人は、年々先が見えにくい状況になっているのではないか」と問題提起。新型コロナウイルスの影響で飲食、宿泊、観光業が打撃を受けたために、コメの消費が減りコメの値段が下がって深刻な状況であることに言及しました。西村候補は、コメの値段が暴落をしないためにも「政府が備蓄を整えるのが一時的対策。中長期的には戸別所得補償制度を復活させないといけない」と解決策を示しました。食の安全保障の重要性にも触れ、「世界的に見れば食糧争奪戦が起きる状況が極めて高い。その時に安心安全なものを私たちはいただいて、それによって命をつないでいるから、生産をこれからも続けていけるように担い手をつないでいけるようなそんな所得補償の政策が必要だ」と述べました。林業についても「アメリカで木材の需要が多くなっている。日本になかなか輸入材が入らないので、北海道の広大な土地を活かした林業の活性化で、国産材を使うのが可能になってくる」と述べました。
新型コロナウイルス対策については、自民党政権が小さな政府を追求してきたことで、保健所の体制が弱くなったことに触れました。そのうえで、「感染症は終わったと30年くらい前から生活習慣病(対策)に保健所の仕事がシフトした。感染症の医者も足りない、感染症のベッドは(新型コロナ)ウイルスの感染が起きる前は1800くらいしかなかった。このことを契機に見直していく。一にも二にも検査、隔離、治療。こんなウイルスで治療を受けずに亡くなる方を今後は一人たりとも生まないように、医療体制をしっかり立て直していきたい」と訴えました。
■逢坂誠二候補
逢坂候補は、「一次産業は他の製造業と違う」と農政について触れました。他の製造業は収益を得ることでさらに投資をしモノを売ることで事業を拡大していき、売れなければ撤退をすることができるが、一次産業の性質は儲かる儲からないという判断ではできないと述べました。その理由として、「特に沿岸漁業は単にモノづくり以外のさまざまな機能があります。水を守る、空気を守る、国土を守る、海岸を守る、沿岸を守る。これらは単にモノを作るだけでなく、一次産業が持っている固有の性質、集落維持機能も一次産業にはある。他の産業のように儲かるからやる、儲からないからやめる、輸出さえすれば良いというものではない。安定性をもって継続するのが一次産業。一次産業政策を考えるときには今の基本的な認識がスタートになる」と説明しました。
新型コロナウイルス対策については、「生活が困窮している個人への支援は必須」と訴えました。そのうえで、「10万円を配るのも悪くないが、必要がない人に行くのは本当に良いのかという問題がある。生活が苦しい人にきちんと支援すること」と述べました。事業者への支援については、「去年から今年にかけて、日本の事業者の皆さんは50兆円以上無利子無担保で借りている。最大でも5年経てば返済しないといけない。それに向けて基盤をしっかりしていくのが必要だ」と述べました。またこれまでの政府の新型コロナウイルス対策について、「最もダメなのが感染症は科学的な根拠をもって対策をとらないといけないのに、科学的根拠をとらずに政府が押し付けていた。科学的根拠をもったコロナ対策をもとに政策をしっかりやる。私が総理ならそうする」と力を込めました。
■小川淳也候補
小川候補は新型コロナウイルス対策について、「比較的落ち着いているが、第6波がないとは言えない。完全収束に向けて政治は全力を挙げるべき」と訴えました。また「おそらくワクチンの更なる接種と治療薬の承認・普及、医療提供体制と同時に経済も少しずつ動かさないといけない」と述べました。体質や信条からワクチンを受けることに抵抗がある人がいることに触れ、そうした人にも配慮をして「無償の検査と無償の陰性証明(の導入)をセットにすべきだ」と提案しました。さらに新型コロナウイルスがインフルエンザと同様にどこの病院でも診断でき、薬の処方や予防接種を受けられ、軽症で済む状況にするための最後の詰めが必要だと述べました。
農政については、「日本の農政は農業予算がないことはない。しかし、その多くは公共土木予算になっている。例えば、土地改良とか農道・林道整備とか、おそらく自民党の権力基盤と関わりがある」と述べました。欧州や米国の農家の収入補償について、「欧州の農家は、日本の農家の平均耕作面積と比べると約10倍の土地を持っているが、欧州の収入の約8割は政府からの所得補償。米国は地平の向こうまで水田でどうやって田植えするか聞いた。田植えせずに飛行機でもみをまくと。とてもかなわないと思った。ところが米国ですら日本の100倍(耕作面積)だが、農家の所得補償の割合が5割。豪州は(日本の耕作面積の)1000倍になり、それでようやく収入補償はゼロだ」と説明し、日本の農政は公共土木偏重から農家への直接補償へ移行する必要があると提案しました。
■泉健太候補
泉候補は新型コロナウイルス対策について、「国の責任で宿泊療養を含めた医療体制強化の導入」を訴えました。政府の進めてきた自宅療養について、「ともかく自宅療養は事実上の医療放棄と言われてしまった。本当に不安の中でパルスオキシメーターはあるかもしれないが、電話をすればいいかもしれないが、やはりこの自宅療養はあってはならないこと。しっかりサポート体制をつくっていく」と主張しました。その他にも「ワクチン接種済み者、検査陰性者の行動の自由を拡大すること。いつでも、どこでも、誰でも、安く検査を受けられる体制が重要だ」と述べ、ワクチンを打てないことで心理的不安を抱える人が過ごしやすい環境をつくることの重要性も訴えました。政府の経済対策にある事業者への給付金の上限について250万円では「中規模企業には低すぎる」と述べ、十分な規模でコロナ対策をする必要性にも触れました。また、大学生と意見交換した際に、卒業旅行に行けなかったり、ゼミでの勉強機会や留学の機会が奪われ、高校生や中学生も行事ができず、本来作るはずのキャリアをつくれなかったことにも目を向けてほしいと言われたことに言及し、「思いやりのある政策を打ち出すことができるのが立憲民主党だ」と強調しました。
農業政策については、討論会場の北海道が置かれている状況が非常に厳しいと触れ、「特に日本全国に比べて大規模化している。大規模化ということはそれだけ投資をしている、そして、海外に販売する、あるいは国内で消費いただく前提になったときにコロナがきて、負債規模が全国の農業者より大きいという問題がある。返済計画をなだらかにするのは絶対大事。今までの返済計画をただやっているのでは若い世代も農業を続けられなくなる。それくらい大変な状況になっている。返済計画も持続可能にするのが農業の継続持続には大事だ」と提案しました。