代表選挙に立候補している4人の候補者は23日、福岡市で税制を含めた経済政策、安全保障政策をテーマにした討論会に参加しました。

 討論会では代表選挙管理委員の宮沢由佳参院議員が進行役を務めました。同委員の神谷裕衆院議員は冒頭のあいさつで討論会の意義について「各候補者の意見を聞いていただいて、未来の立憲民主党がどういう方向に進んでいくか、皆さんでお決めいただければという場だ。あわせて立憲民主党にこういう人材がいるということをご確認をいただいて、一緒にこの国の未来をつくっていくという場だ」と話しました。次に、各候補者がテーマに沿った政見を述べました。

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■逢󠄀坂誠二候補

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 街頭演説の前に朝倉市を訪問し、4年前の7月の豪雨災害の現場を見させていただいた。ものすごい被害の状況に改めて心が痛む思いをした。被災された皆さんに改めてお見舞い申し上げると同時に、九州各地をはじめ全国各地で豪雨災害が起きているが、亡くなった方々のご冥福をお祈りする。気象の状況がこれまでと違っているので、そういうものに対応できる、災害に強い公共投資、私たちの暮らしを豊かにする公共投資はしっかりやっていかなければならないということを改めて痛感した。
 経済については、会社がいかに儲かるかということが大事なポイント。日本でずっと言われているのは企業の生産性が必ずしも高くないということで、生産性をしっかり高めていく必要がある。たとえばデジタルを活用したり、新たな技術を使っていくことは必須のこと。しかし、グリーンとかデジタル等、今までにない分野に進出することは重要だが もう一方で何が起こるか。たとえば中小企業が淘汰されるということも考えられる。だから生産性を高めて国家全体がお金が儲かる構造になっていても、逆に地方が疲弊したのでは意味がない。そういう意味では生産性を高める企業活動をやると同時に、地方に目を向けて、たとえば6次産業化をするとか、再生可能エネルギーを中心にし、地域でお金が回るようなことをきちんと考えておく。さらに1次産業を強化するということを合わせ技でやらなければ、単に企業が儲かるだけでは良くないと思っている。
 個々人の皆さんが物を買う力が必ずしも十分ではなく、個人消費が伸びない状況になっている。そこで、エッセンシャルワーカーなど、賃金が増えればお金を使いやすい方々、限界消費性向が高い若者、子育て世代、就職氷河期世代の皆さん、あるいは非正規、パートタイム等でなかなか賃金が上がらない方々の買う力を底上げをしていくことが私は必要だと思う。一般的には最低賃金を引き上げると言われるが、大企業の場合なら一定程度可能かもしれないが、中小企業の場合はその余力がないないという場面もあるので、そうした所に対しては国からの支援を前提にしながら最低賃金を引き上げて、国民全体の物を買う力を引き上げていくことも必要だと思っている。
 今の日本の税制に目を転じてみると、どちらかというと個人が多く負担して、大企業があまり税金を負担していない構造になっている。もう1つはお金が沢山ある方が、税の割合の割合がどちらかというと少な目で、所得の少ない方が税を多く負担している傾向があるので、見直していく必要がある。これは所得の再配分機能を強化するという言い方をするが、消費税、法人税、所得税、あるいは金融所得課税、それと社会保険料を含めて一体的に見直して、税負担を公平にしていくことに取り組んでいきたい。
 私たちは政権を担いたいと思っている。そういう立場からすると、政権が変わったからといって、外交安全保障が180度変わるようなことがあっては、世界の国から日本の国が安心できる国だとは思われない。そういう意味で言うと、外交安全保障は、現在の政府がやっていることを引継ぎつつも、その中で必要なところは微修正を加える。しかし一方で、沖縄の問題については民意とかけ離れているので、ここについては立ち止まって再度交渉し直すことが大事だと思っている。

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■小川淳也候補

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 経済政策は供給面と需要面の両方からアプローチしたい。供給面では当然、ITや教育等を含めた投資減税が考えられる。社会保険料が過重になっているので、軽減を考えていきたい。これから人口減の世の中なので、基本的に物量が拡大していくということは考えにくい。ビジネスも観光もそだが、交流人口を拡大することで需要を活性化させていく。こうした点を供給政策として考えなければならないと思う。
 しかし実は、これから先もっと重要なのは需要政策だと思っている。なぜ私たちは、仮にお金があったとしてもそう簡単には心理的にお金を使えない。将来不安が強いがために、なかなか安心してお金を使える環境にない。なぜ将来不安が強いのかと言えば、これだけ社会の構造が変わっているのに、時代が変わっているのに変われていないところから来ている。日本社会の原型は昭和の時代に作られた。この時代は人口が増え、経済成長が高く、みんなが正社員、毎年給料が上がる、その代わり、生活のほとんどは、結婚も子育ても、教育も医療・介護・福祉の全てが基本的には自己責任を基調とする社会だった。しかし平成に入って、人口は減少に転じ、高齢化は進み、経済は低成長。正社員の門は狭きものとなり、毎年給料が上がることは想定しづらい。それにもかかわらず、依然として人生のステージのほとんどは相変わらず自己責任、自助努力を基調とした社会を放置してきている。そこに根本的な時代状況と社会政策とのずれがあり、そこを埋めていかなければならない。北欧などでは、多くの方が何をしようが、どうなろうと安心なので、貯金をしないそうだ。安心してお金が使える。したがって構造不安、生活不安を取り除き、社会の持続可能性を回復し、将来に安心して見通しを持たせることが、実は需要面からの最大の経済政策だと感じている。
 当面のところ税制に関しては、私たちは減税を訴えて総選挙を戦っているので、消費税にせよ、その他にせよ、コロナ禍における非常時の対応として、減税を全面に掲げる。同時に大規模な財政出動で傷んだ経済や暮らしを立て直す。これを当面の対応としてやっていきたい。しかしそれでこの先何十年やっていけるか。それで次世代にこの社会を自信を持って引き継ぐことができるか。多くの皆さんの答えはノーだと思う。超長期に向かっては、社会の持続可能性を回復していかなければならない。それは年金制度もしかり、医療、介護もあらゆる面から次世代のことを意識して、さまざまな折り合いをつけながら、社会の持続可能性を回復していく。その時に、議論は消費税単体に陥りがちだが、そこに罠がある。むしろ所得税の累進性の回復をどうするか、国際的に引き下げ競争がおこなわれてきた法人税について適正課税を国際社会を上げてどうしていくか、場合によっては相続税は最大の再分配政策になる可能性もある。もちろん消費課税も逃げることなく、正面から議論していく。大事なことは 皆さんが欲しい物を買う時に、お金を払うが国民負担とは言わない。自分たちが欲しい物を買っているからだ。北欧でも税金や社会保険料が確かに高いが、それがきちんと私たちのために使われているから不満ではないと皆さんが言う。そういう安心社会に国民が納得ずくで投資をできる社会、負担構造とはいかなるものか。それを対話を通して徹底的に生み出していきたい。
 その時に鍵になるのが政治への信頼。北欧では、政治家が汚職をするなんて信じられないのだそうだ。日本では政治家が汚職をしないなんて信じられるだろうか。そんな人たちに高い税金や保険料を預ける気になるか。つまり社会改革は政治改革であり、政治改革は政治家改革であり、政治家改革はそれを選ぶ、最終的に有権者の見識と願い、望みまでが問われてくる。それほどまでに根本的な転換が求められる時代だ。
 外交安全保障政策については当面、当然のことだが日米関係を基軸として 安定した現実的な対応を取っていく。しかし長期的に、アメリカとの関係性においても沖縄の問題、地位協定、横田空域、そして思いやり予算、両国の対等性を高めていく努力が必要だ。そして中国――かなり難しいが、粘り強い対話を、そして時に隣人として毅然たる対応を取りながらも友好を旨とした粘り強い対応をおこなっていきたい。

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■泉健太候補

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 地域の皆さまとの対話を大切にしてきたい。今日も街頭演説の前に新天町のお店を何軒か回り、人通りは以前の何割くらいか、売り上げはどうかという意見交換した。また、博多区の高齢者福祉施設を訪問した。立憲民主党は介護、保育、障がい者福祉の現場の待遇改善を訴えている。私も国会議員になる前、デイサービスのスタッフをしていたことがあり、原体験として「結婚退職」という言葉が介護の現場にあった。当時の一般的な話として、介護の給料は低いから、家族は持てない、結婚できないということで、退職・離職ということになっていた。実は今もこれが完全に解消しているとは言えず、他の業種に比べるとこうした現場で働く方々の待遇がまだ低い。今日の意見交換でもそのような声をいただいた。そうした中で、現場の皆さんは、コロナ下の対応、利用者の家族がなかなか会いに来られない中で看取りをおこなったり、日々のお世話をされていることを伺ってきた。現場の声を大切にした立憲民主党でありたいし、現場の声を大事にした経済政策でありたい。
 総選挙では、皆さまに届く分配策なのか、届かない誰かが何か言っているだけの分配策なのかとずっと言ってきた。自民党の高市政務調査会長とテレビ討論をおこなった際に、自民党はどういう分配策を考えているのかを聞くと、働いている方の給料を上げた企業があれば、その企業の法人税を下げると仰った。それを聞いて、私は国民の何割にその恩恵が届くのだろうかと思った。年金生活者、主婦、飲食店経営者などさまざまな方に届かない分配策を自民党はおこなっている。今回の経済対策もそうだ。自民党は低所得者の方に給付金を言っているが、肝心なワーキングプア層、100万円から200万円の収入の方には給付金が届かないという問題が起きようとしている。立憲民主党こそ、こういう問題に対してしっかり声を上げていくべきではないか。現場で誰が苦しんでいるのか、誰が分配を待っているのか、誰が分配によって消費をしていける人たちなのか。そういうことに鑑みれば、私たちが訴えてきた経済政策は非常にまっとうだと思う。お金持ちがいくらお金持ちになっても、使えるお金は限られる。皆さんがお金を使える環境を作っていくということが極めて大事だ。税制では、所得税、法人税はずっと税収が下がり続け、消費税はずっと税収が上がり続けていて、直間比率がクロスしている。税収が上がっている消費税だけを社会保障財源にするということで、われわれはいつの間にか、固定観念を持ってしまっているが、改めてもう一度社会保障財源は消費税だけではないのだと、フラットに日本の税のあり方を考えるべきではないかと思う。
 立憲民主党は、外交や安全保障に強くなければいけないと思っている。経済安全保障――われわれは中国市場を一番大きなウェイトとして抱えている。特に九州の皆さんは、韓国、中国との商取引も多い。こういう所の権益を守りながら、一方ではアメリカとさまざまな人権の制約だとか、センシティブな防衛産業やITに関わることでアメリカが日本に圧力をかけて来ることについて、しっかりとく物を申して、市場を守っていくことも訴えていきたい。

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■西村ちなみ候補

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 税制は再分配をやる上で極めて重要な要素の1つだが、税金だけを見ていては実は再分配の考え方から言えば十分ではないと思っている。私たちは多額の保険料等を払っている。データによっては、税金の総額よりも社会保険料の総額の方が既に上回っているというものもあるので、そこも見直していかなくてはいけない。私は党の社会保障調査会長として、先の通常国会でもいろいろな法案の見直しをしてきたが、保険料についても応能負担――負担能力のある人にもう少しずつ払っていただくことにより、その中でも累進を効かせるという考え方をできる限り導入したいと考えている。介護保険、医療、年金とさまざまあるが、工夫すれば少しずつでもできると思っているので進めていきたい。税金については、金融所得課税、所得税の累進強化などをしっかりと進めたいと考えている。

 経済政策は、雇用政策と一緒のものとして考えていきたい。企業の生産性を上げるのはもちろん重要だが、この間安倍・菅・岸田政権と続く自民党政権がおこなってきたさまざまな政策は、安倍元総理が「企業が世界で一番活躍しやす国」とダボス会議等で表明して以降、やはり企業が一番活躍しやすい国であるように、税制等も変わってきたし、企業などへの支援策も変わってきたところがある。しかし、そのことが本当に日本の経済を強くしたか。あるいは日本の国の中で働いている人たちの生活を豊かにしてきたか。私はなかなかそうとは思わない。
 今世界は、グリーンの方に大きく産業構造をシフトしている。たとえば再生可能エネルギー。九州は太陽光だけでも、九州電力が火力発電所で出力している電力を上回る1000万kWの再生可能エネルギーを既に送電網につないでいるという、再エネの分野ではトップを走る地域だと思う。そういったことをもっともっと世界の潮流に合わせて、活かしていかなければ、すっかり乗り遅れてしまうし、実際世界はそういうふうに流れているのだから、日本もその分野に大胆に踏み込んでいなかくてはならない。しかし政府は、原子力発電所に対する依存をこれからも続けようとしているし、こんなことではますます乗り遅れてしまう。私は、とにかく原子力発電所を早期にゼロにするという方針を政府が明確にして、雇用や地域事情に配慮しながら、再エネの方に踏み込んでいく戦略を立てるべきだ。そのために必要な企業への支援、基礎研究も含めていろいろなことをやる。地域の工務店さんには省エネの分野でやっていただきたいことが沢山ある――断熱のための改修とか。こうしたことを通じて、日本の省エネも、さらにもう一歩進めていくとことが可能になるような経済政策をやっていきたいと考えている。

 農林水産業も経済政策の1つの柱。農業は多面的機能を持っているし、私たちが日ごろ命を繋いでいくために食事、安全安心であるべきとの願いがある。食の安全保障という観点からも経済政策の1つとして、きちんと位置づけてやっていく。
 外交安全保障について、私は日米地位協定の改定――実は岸田政権、自民党政権の元でもちょっとずつやってはいるが――これをもっと、踏み込んでやっていきたいと考えている。
 辺野古の基地移設の問題については、軟弱地盤であるということは、皆さんがご存じの通りだし、県民投票などを通じて、県民の意思は辺野古ではないということだ。アメリカも民主主義の国。日本の政党が辺野古の基地移設中止という方針を明確に打ち立てて総選挙に勝ったら、それをテコにアメリカと強力に交渉を開始することができると確信している。

 続いて、候補者間の討論では、(1)地方主権改革と地域ブロック経済の関係性(2)人口減少・高齢化が進む中で地方でのデマンドタクシー、公共交通等のあり方、国からの支援(3)外国人労働者の待遇、生活・教育支援、入管行政(4)日米地位協定改定の進め方――について質疑がおこなわれました。

 参加者からの質問では(1)若者は与党支持者が多いが、立憲民主党は若者からの支持をどのように得ていくか(2)日本維新の会に政党支持率で上回られていることへの危機感、党の立て直し(3)女性候補者擁立への支援(4)党の若者に向けたプラン――について質問があり、各候補者がそれぞれ答えました。

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 最後に福岡県連代表代行の城井崇衆院議員があいさつし、「先の衆院選挙の結果を踏まえてのかなり強く、そして厳しい思いを持った危機感、そして暮らしや職場、命に寄り添う感性と変えていく政策の方向性、そしてそれを実現していくために野党第一党、改革政党として担う覚悟というものを今日ご参加の皆さまやネットを通じてご覧の皆さまに少しでも感じていただいたならば、これにまさる幸いはない。反転攻勢はここからだと思っている。立派なリーダー候補が4人いる。お任せというふうにはいかないと思っている。まずは投票で皆さまにもご参加いただいて、立憲民主党という器を通じて、日本を良くしていって、国民の役に立つわれわれになるために皆さまのお力をお貸しいただきたい」と述べました。

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