衆院本会議で8日、岸田総理の所信表明演説に対する代表質問が行われ、泉健太代表が登壇。冒頭、「現在47歳。就職氷河期世代として、気候変動世代として、日本の将来を明るくしていきたい。その思いで立ち上がりました」と決意を表明しました。

 立憲民主党について、『国民に寄り添う』『地域に寄り添う』『公助が発揮される政府』さらに『分権・分散型』『自由』『多様性』を掲げる政党であると宣言。その立場から国会では、行政政治を監視し是正していくとともに、課題解決の具体策を提案していく「政策立案政党」であると表明。17項目に及ぶ政策提案を行いました。

■コロナ対策

 今年6月には、コロナ対策のための国会会期延長と33兆円の補正予算編成を提案しても、政府与党が耳を貸さず、この臨時国会でようやく補正予算を出してきたことから、遅すぎではないかと疑問を呈しました。

 オミクロン株の水際対策に関しては、早速政策提案を行いました。「入国検疫は、抗原定量検査でなく、精度の高いPCR検査を行うべき」「全員の隔離期間は10日にすべき」と総理に求めました。これに対して総理は、「抗原定量検査が現時点で最も適している」「(隔離期間は)リスクに応じた対応が適切である」と述べ、提案に消極姿勢を示しました。

■コロナ経済対策

 18歳以下への10万円給付に関して泉代表は、「わざわざ半分現金、半分クーポンの配布になると、経費は膨らみ、市町村職員の手間も非常にかかります。重要な3度目のワクチン接種業務と時期も重なります」と指摘。その上で「18歳以下への10万円給付は、市町村は自らの判断でクーポンではなく現金給付を選択できるようにしませんか」「そして10万円一括支給も認めてはどうですか」と提案しました。これに対しては、総理は「地方自治体の実情に応じて現金での対応も可能とする運用とします。その際、どのような場合に現金給付とすることができるかにつきまして、地方自治体のご意見を伺いつつ、具体的な運用方法を検討してまいります」と答弁しました。ここは最も注目の答弁ですが、「具体的な運用方法」の定め方次第によっては、現金での対応が不可能になってしまいます。「具体的な運用方法」の内容が今後の大きな論点となります。

 また、立憲民主党の後藤祐一議員の指摘で明らかになったクーポンへの分割支給で967億円もの事務費がかかる問題に関しては、「クーポンの事務費分を、生活困窮者向けの給付に上乗せしませんか」「ワーキングプア層へ支給対象を広げませんか」と政策転換を求めました。総理は、提案には直接言及せず、経済対策の中に「再就職や正社員化に向けた学び直しや職業訓練の支援など」があると紹介するにとどめました。

 事業復活支援金について「店舗ごとの支給に変更しませんか」と提案しました。総理は、「売上減少を店舗ごとに見ると、書類が整っておらず、正確性に欠けるため事業者ごとに給付する」と提案に消極姿勢を示しました。

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■経済政策

 泉代表は『人にやさしい持続可能な資本主義』の具体策として「企業におけるESG投資、環境や人権、雇用への配慮を、強力に進めるべきです」と呼びかけました。

 その具体策として泉代表は、企業のカーボンフリー電力化、脱炭素経営への支援、営農型太陽光発電の普及を提起するとともに、コジェネレーションの導入目標と新築住宅の省エネの導入目標を引き上げを提案しました。総理から「クリーンエネルギー分野への大胆な投資を大胆に進めていく」と前向きな答弁を引き出しました。

 また、「勤務間インターバルの普及や過労死防止、職場いじめ防止など『ブラック企業』を具体的に無くしていく政策を強力に遂行すると改めて宣言していただきたい」と総理に迫りました。総理からは「ブラック企業をなくし健康で充実して働くことのできる社会を目指していく」と方向性としては前向きですが具体策を遂行するとは言わない答弁がありました。

 「立憲民主党は、中小企業の味方です」と宣明した泉代表は、中小企業が正社員を増やす際の障壁になっている「社会保険料の会社負担」を取り上げました。「希望すれば正規雇用で働ける社会」を創っていくことこそ、人にやさしい資本主義ではないかと訴え、「正社員を雇用した中小企業の社会保険料を軽減しませんか」と提案しましたが、総理は、すれ違い答弁でまともに答えませんでした。社会保険料軽減と賃上げ税制のどちらが正社員を増やすことにつながるのか、ここも今後の大きた論点です。

 税制に関して泉代表は、岸田総理が総裁選の初期に掲げていた金融所得課税の引き上げは必要なのに総理就任後、「当面触ることは考えていない」と方針転換したことに対して、市場への影響を考慮し「今から段階的に着手してはいかがですか」と提案しました。総理は、金融所得課税の引き上げを分配政策の選択肢の1つと位置付けているが税制改正では措置しないとの考えを示しました。

 また、泉代表は、1986年に最高税率が70%だった所得税が現在は45%であると指摘し、「改めて所得税の累進性を強化し、税収を確保しませんか」と提案しました。総理は、2013年以降の税制改正の効果を見極めながら「経済社会の構造変化も踏まえ引き続き考えていく」と答えました。

 「政策立案型政党」として原油価格の上昇対策として「トリガー条項発動法案」を提出したことを紹介。さらに文書通信交通滞在費についても、(1)日割化(2)収支報告と領収書の議長への提出(3)年間の残額の国庫への返還――の3点セットに加え、直近の解散と当選時の歳費と文書交通費の自主返納を義務付ける「最も先進的な内容」と説明しました。「今国会でも何らかの合意を得ることができるはず」と両法案への総理の決断を求めました。岸田総理は「各党各会派がそれぞれの考えを持ち寄って、しっかりとした議論をしていただき合意を得る努力を重ねていただく必要がある」と答弁しました。

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■各論

 農林水産業に関して泉代表は、農家が来年の作付けに向けて動き出している中で、「水田活用の直接支払い交付金を一方的に見直そうとするのですか。現場の事情を踏まえた対策を講じるべきではないでしょうか」と提案しました。

 震災復興に関連しては、福島県が2040年をめどに一次エネルギー供給の100%相当以上を再生可能エネルギーにする目標の前倒しを提案しました。総理から、「目標を前倒しできるよう支援を強化していく」と積極的な答弁を引き出しました。

 政治行政改革に関連し、選挙演説の動員への日当支払いはやめにしませんか」と提案しました。総理は「各党会派に議論を進めてもらいたい」と述べるにとどめました。

 現行憲法に関して泉代表は、「現行憲法の役割は非常に大きいと評価しています」「日本は将来にわたり、過度の権力集中も、政治権力の強大化も、権力者の暴走も許してはなりません」との決意を示しました。

衆議院本会議 泉健太代表 代表質問.pdf

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