衆院本会議において石破総理のアメリカ訪問報告についての代表質問が行われ、立憲民主党から武正公一週委員議員が登壇しました。以下、予定原稿です。
「石破総理米国訪問に関する報告に対する質疑」
立憲民主党・無所属 武正公一
石破総理の米国訪問に関する報告に対して立憲民主党・無所属を代表して以下ご質問いたします。
<八潮市下水道破裂による道路陥没事故>
冒頭、インフラ災害といわれる八潮市の下水道管破裂による道路陥没事故については、運転手の方の一日も早い救出とともに、深度深き大口径管路の検査方法の見直し、経年劣化は自治体のみの責任とせず国としての責任からの取り組みについても規模等に応じて検討すること、以上ご所見をお聞きします。
石破総理、日米首脳会談お疲れさまでした。会談はおおむね良好に進んだと受け止めます。準備に当たられた関係者の皆様に敬意と感謝を申し上げます。
特に安全保障面で、日米同盟を「開かれたインド太平洋の礎」として、クアッド、日米韓、日米豪、日米比の連携、尖閣諸島への日米安保条約5条の適用、中国への現状変更の試みへの反対の意、北朝鮮の完全な非核化、拉致問題即時解決の支持などが明記されました。これらを評価します。
なお、米ロ首脳による電話会談が行われ、ウクライナ停戦に向けて交渉開始に合意と報じられています。ゼレンスキー大統領は米国ベッセント財務長官と面談しています。国連総会に日本を含めウクライナ停戦決議案の提出が検討されています。領土割譲がウクライナ抜きで米ロの取引材料とならないよう求めます。
<尖閣諸島>
うかがいます。日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認するにあたって、尖閣諸島が日本の領土であることについて、あらためて説明しましたか。我が国の領土であることについて米国の立場は変更ないままでしょうか。
<自由で開かれたインド太平洋・法の支配>
我が国は、「自由で開かれたインド太平洋」の中身として「法の支配」を非常に重視しています。これまでの日米間の文書でも明記されてきました。
なぜ、共同声明では「法の支配」という文言が抜け落ちているのですか。トランプ大統領のガザ住民の強制移動やグリーンランドの所有などの発言を意識してのことですか。トランプ大統領が来日された際の首脳会談、共同声明では必ず「法の支配」という文言を明記することを約束していただけますか。
今月ミュンヘン会議でG7外相会合があります。岩屋外務大臣から我が国政府として「法の支配」を重視することが明確に示されるでしょうか。そしてG7外相会合声明などの文書に明記されるでしょうか。うかがいます。
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<防衛費>
石破総理は、2027年度以降の防衛費増額を言及したのではないでしょうか。
共同声明には、「米国は、日本の防衛予算増加の好ましい傾向により下支えされた、2027年度までに日本を防衛する主たる責任を確固たるものとする能力を構築すること、そして、この重要な基盤の上に、2027年度より後も抜本的に防衛力を強化していくことに対する日本のコミットメントを歓迎した」と書かれています。
「日本の防衛予算増加の」「重要な基盤の上に」「2027年度より後も防衛力を強化していく」「日本のコミットメント」とは、明確な次期5ケ年計画防衛予算の増額を意味するのではないでしょうか。
「言われてやるのではなく、日本が自ら決める」として「対GDP比3%への増額」を約束したのではないでしょうか。
加えて、トランプ大統領が10億ドルの装備品売却を承認したと発言した内容具体的に何ですか。追加で、承認される装備品の言及はありましたか。いかがでしょうか。
<自動車>
また、トランプ大統領は、自動車への関税について現地10日「自動車は大きなテーマだ」と医薬品、半導体とともに関税化を示唆しましたが、これについて今回の会談で何か言及はあったのでしょうか。加えて、我が国政府は、第一期トランプ政権時、TPPを離脱した米国との間で日米貿易協定を締結し、我が国が米国産の牛肉、豚肉について関税引き下げを約束した一方、TPP協定で約束されていた我が国からの自動車・自動車部品の関税撤廃については、「関税の撤廃に関して更に交渉する」とされるに留まり、その後、日米間では交渉開始に向けた動きは見られません。我が国政府は、日米貿易協定の自動車関税に関する交渉を今後どうしていくつもりなのでしょうか。うかがいます。
<アラスカLNG開発>
アラスカのLNG開発については要する経費は440億ドルとされています。
サハリン1、サハリン2はそれぞれ120億ドル以上、200億ドル以上とされています。アラスカでの開発が進んでこなかったのは、サハリンに比べ環境問題に懸念があるためとされています。
民間企業任せでなく、政府としてより積極的な対応が求められると考えますが、その時は、巨額な資金拠出並びに政府の支援や保証を想定していますか。質問します。
<為替>
為替については、共同記者会見で、「日米の財務相間の間で緊密な議論を継続させていく」と石破総理は述べ、早速、ベッセント米国財務長官の表敬を受けました。
首脳会談で為替についてのやり取りはありましたか。また、現下の物価高騰の原因が行き過ぎた円安にあると考えますが、物価目標2%まで金融緩和を続けるとした政府が日本銀行と交わしたアコード(共同声明)の見直しが必要と考えますがいかがでしょうか。うかがいます。
外務省の国際機関への拠出金、分担金については「円安」時の令和4年度で1900億円、令和5年度は1300億円の貨幣交換差減金が支出されました。
また、防衛装備品のFMSでの購入の影響を昨年11月会計検査院は令和5年度の防衛支出が円安により1239億円増えたことを明らかにしました。
令和5年度、外務防衛両省で円安の影響による支出増額は2500億円になります。
円安による支出増額を回避するため拠出金、分担金は補正予算ではなく当初予算に計上すべきであり、FMS支出は後年度負担による複数年度の支払いを避けること、あわせて外為特会の外国為替及び外国通貨の活用を図ってはいかがでしょうか。お尋ねします。
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<日米関係の黄金時代・国際協調>
気候変動対策の国際ルール「パリ協定」及び「WHO」からの離脱について、石破総理はトランプ大統領に意見を述べられたのか、国際協調の重要性についてどのような議論を行ったのか、お答えください。
石破総理が考える「日米関係の黄金時代」とはどのような日米関係なのか、そして、米国を自由貿易、国際協調につなぎとめるため、どう取り組んでいくつもりなのか、総理のお考えを伺います。
<関税の回避>
会談後「米国が輸入する鉄鋼、アルミニウムへの25%関税を例外なくかける」ことがトランプ大統領から発表されました。首脳会談で大統領から発言があったのでしょうか。また、日本にも適用された時の経済的な影響をどう試算しますか。林官房長官は12日の記者会見で「我が国を除外するよう申し入れを行った」とされましたが、いつ誰にどのようにどんな申し入れを行ったのでしょうか。総理から豪州のアルバーニ首相のように、直接トランプ大統領に伝える考えはありますか。お答えください。
<日本製鉄によるUSスチールへの対応>
日本製鉄によるUSスチールへの対応は、会談後の記者会見でトランプ大統領は、「買収ではなく、多額の投資を行うことで合意した」と述べましたが、その後、トランプ大統領は、日本製鉄がUSスチールに対し「過半数を出資することはない」と発言しました。このことを総理は事前に知らされていたのですか、会談でトランプ大統領と議論された内容と一致しますか。
林官房長官は2月10日の記者会見で、「大胆な投資を検討している」と発言しましたが、具体的に何を意味するのか、首脳会談で日本製鉄によるUSスチールの株式取得について過半数株式取得も含め何らかのやり取りがあったのでしょうか。以上うかがいます。
<北朝鮮の非核化>
共同声明には「北朝鮮の完全な非核化に対する確固たるコミットメントを改めて確認した」と明記され、石破総理はトランプ大統領との間で「北朝鮮の非核化方針を共有した」と述べています。
一方、トランプ大統領は、就任後、北朝鮮を「核保有国」と発言しました。
非核化の道筋なども含め、トランプ大統領の「北朝鮮は核保有国」という発言の真意は確認したのでしょうか。「北朝鮮を核保有国と認めることはない」との方針も共有できたのでしょうか。ご質問します。
<拉致問題>
首脳会談では、トランプ大統領から拉致問題の即時解決への協力への支持も表明されました。
首脳会談において、石破総理は、我が国として何ができると説明したのでしょうか。米国の協力を得て、拉致問題の解決に向けどのように取り組んでいくおつもりでしょうか。いかがでしょうか。
<ガザ情勢>
トランプ大統領は、パレスチナ自治政府のガザ地区を「米国が引き継ぎ、所有する」旨を発言し、さらに報道によれば「15日までにハマスが人質を解放しなければ地獄を見ることになる」と発言はエスカレートしています。
首脳会談において、石破総理から、トランプ大統領に対し、「イスラエルとパレスチナ自治政府による2国家解決を日本は支持すること」を伝えたのでしょうか。そして、「ガザを米国が所有する」との発言の真意について確認はされたのでしょうか。総理の後にトランプ大統領と面談したヨルダン国王は、面談時に「ガザ所有に異を唱えた」ことを明らかにしています。また、我が国として、このような方針を支持できないことを表明するべきではないでしょうか。うかがいます。
<核兵器禁止条約>
さらに共同声明では、核を含む拡大抑止の更なる強化については言及していますが、核兵器禁止条約や核軍縮については言及がありません。首脳会談において、核兵器禁止条約、または、我が国のオブザーバー参加について、石破総理から何か説明はされたのでしょうか。
トランプ大統領の訪日が実現した際には、被爆地を訪問いただき、被爆の実相に触れていただくべきと考えますが、総理のお考えを伺います。
<日米地位協定の改定、相次いだ米軍関係者による犯罪>
今回、石破総理の持論である日米地位協定の改定や米軍関係者による犯罪の防止策については言及がありませんでした。
石破総理は、沖縄国際大学に米軍ヘリコプターが墜落する事故が発生した際の防衛庁長官であり、総理就任前から日米地位協定の改定に意欲を示してきました。しかし、総理就任後はトーンダウンしました。
今回の首脳会談ではこの改定に向けた議論を提起したのでしょうか。
また、両政府の合意なければ公開しないとされる日米合同委員会の議事録を30年経過のものは原則公開すべきと考えますがご所見を伺います。
また、米軍関係者による犯罪について、首脳会談では在日アメリカ兵による性犯罪が頻発している実態を伝え、綱紀粛正やパトロールについて未実施のものは速やかに実施することや新たな再発防止策を講ずるよう求めたのですか。おたずねします。
<米中対立と日本>
トランプ大統領による中国への追加関税に対して中国が報復関税を発表するなど、今後も米中対立は更に厳しさを増すことが予想されます。
一方、昨年11月の日中首脳会談、12月の日中外相会談と、石破政権は中国との会談を重ねています。中国との対話を重ねることは評価します。とはいえ、石破政権はトランプ政権下の米中関係にどのように関与し、地域の平和と安定にどのように寄与していこうと考えているのでしょうか。おたずねします。
外交は、首脳同士の信頼関係の構築と考えます。「また会いたいと言ってもらえる関係を」と帰国後総理は述べているようですが、言うべきことを言わずに終わったことで、今後の首脳会談で突如言い出せば「手のひら返し」と受け取られかねません。
表向きは、日米首脳会談は円満に終わったと言われますが、正直、課題が残ったと言わざるを得ません。
日米関係は時間をかけて、政治家、政府、経済、民間を通して重層的に信頼関係を築いてきました。日米関係をウィンウィンのものとし、両国の国民が良好な関係を求めることで、関係は深化し安定し、連携は強固になり、安全保障面での抑止力も強化されます。
日米間の重層的な関係の継続的な構築、ミニラテラルやG7,EU,ASEANなどの枠組みの効果的な活用、国際社会での日本の求められる役割を自覚しながら、短期的な日米関係のみならず、長期的、国際的な国益を鑑みて、戦略的に外交を展開することの重要性を指摘して質問を終わります。