吉川元議員は2月18日、衆院本会議で「所得税法等の一部を改正する法律案」に対する趣旨説明質疑で登壇し、(1)ガソリンの暫定税率の廃止(2)地方の財政力格差是正(3)地方交付税の恒久的な財源補てん(4)非正規地方公務員を正規と同様の給与改定(5)公立病院への財政支援(6)デジタル人材の確保(7)マイナンバーカード交付税割り増し(8)自治体直営サービス提供などの有効性(9)交付税の法定率引き上げ――等を質問。本法案に対する修正案を準備しているとして、修正案提出の際には、総務省へ真摯に検討してほしいと求めました。
吉川議員の予定原稿は以下のとおりです。
地方財政計画、地方税法・地方交付税法等の改正案に対する趣旨説明質疑
立憲民主党・無所属 吉川元
立憲民主党の吉川元です。
立憲民主党・無所属を代表し、令和7年度地方財政計画及び地方税法等一部改正案並びに地方交付税法等一部改正案について、村上総務大臣に質問します。 来年度の地方財政計画は一般財源総額、地方交付税総額共に高水準の伸び率で今年度を上回り、財源不足も縮小され、制度の創設以来初めて臨時財政対策債、いわゆる赤字地方債の発行額がゼロになりました。
一方、物価の高騰が続く現状において、地方財政計画に盛り込まれた自治体施設の光熱費や施設管理の委託料の増加等を踏まえた総額1000億円の物価高対応分は、今年度補正予算の重点支援地方交付金と合わせても不十分ではないでしょうか。
また今後、物価高が想定以上に進んだ場合、どのように対応するのか、お答えください。
物価高は、もちろん家計を直撃しています。政府の燃料価格激変緩和補助金が発動されても、ガソリン等の平均価格は高止まりのままです。立憲民主党は物価高対策の一環として揮発油税・地方揮発油税の「当分の間税率」、いわゆる暫定税率分の廃止を打ち出しています。
これに合わせ、軽油引取税についても、地方税収の減収に対応しつつ、本則に上乗せされた「当分の間税率」を廃止する地方税法等改正案の修正を準備しています。修正案を提出した際、総務省としても真摯に検討していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
地方税や地方交付税など自治体の裁量で使途を決めることができる一般財源の総額は、2025年度から3年間、2024年度の水準を維持するとした一般般財源総額実質同水準ルールが適用されています。2011年度のルール制定以降、交付団体の一般財源総額は一度も減額されず、地方にとって財政運営の予見性が高まりました。しかし、物価高や給与改定費の増加が今後も予想されます。さらには一般行政経費において国の社会保障政策の補助事業費が増え続ける中、地方独自の施策を保障する単独事業の財源が侵食され続けています。
前年度比で一般財源の総額を確保するにとどまらず、物価高、給与改定費、そして地方の単独事業費の伸びを保障する内容でルールの見直しを図るべきではありませんか。
地方独自の税収だけで行政を運営できる不交付団体、例えば東京都では、18歳までの子どもへの月5000円給付、高校授業料無償化の所得制限撤廃、公立学校給食の無償化、18歳までの医療費助成などが先行して実施されています。これらの施策は財政力に乏しい自治体では容易に実施できるものではありません。
財政力の格差が自治体の提供する子ども・子育て支援、教育、福祉事業などの行政サービスの格差に直結しています。東京都の施策に問題はありませんが、この財政力格差に基因する自治体間のサービス格差を放置する限り、東京一極集中の是正や財政力の弱い地方での人口減少に対応できません。国が責任をもって地方が提供するサービスの格差を解消し、公共サービスを充実させていくべきではないでしょうか。
また、地方の財政力格差や税収の偏在是正について今後、どのように対応していくつもりでしょうか。
いわゆる103万円の壁の見直しによる交付税法定率分の減少額約2000億円について、国からの補てん措置が講じられていません。しかし、地方固有の財源である交付税の減収は一時的な税収増で還元すべきではなく、恒久的な財源補てんが講じられるべきではないでしょうか。
また、今後、更なる壁の引上げによって交付税の法定率分が減少した際、国の責任で全額分を代替財源で確保するのでしょうか。お答えください。
来年度の地方財政計画では、地方公務員の人件費が計上されています。この中には非正規の会計年度任用職員の人件費も含まれているはずです。
ただし、正職員の人件費は地方財政計画において給与関係経費として計上されるのに対し、会計年度任用職員の人件費は一般行政経費の単独事業の中に含まれています。そのため、地方財政計画上では措置がされても、実際には会計年度任用職員の給与改定を実施していない自治体が生じているのではないか、例えば、2023年度に正職員の給与改定に準じて会計年度任用職員給与の遡及改定を実施した自治体は全体の56%にとどまっていました。今年度、2024年度は正規と同様の給与改定がされているのでしょか。
地方財政計画で措置されている給与改定を行わない自治体に対し、総務省はどのような対応を行っているのでしょうか。
そもそも、25年度の地方財政計画で措置されている人件費は、すでに66.1万人に達した会計年度任用職員のすべてに対して、給与・期末手当・勤勉手当・退職手当が積算されたものと理解していいのでしょうか。
公立病院の経営状態が、新型コロナウイルス感染症の5類移行後、物価高騰の影響も受け、著しく悪化しています。2023年度には赤字病院の割合が前年度から2倍以上伸びて全体の7割に達し、赤字合計額は前年度の約3.8倍、2500億円に膨れ上がっています。今年度の赤字病院数の割合、赤字合計額はそれぞれどの程度になると想定していますか。
経営の悪化は、医療従事者の処遇にも及び、人勧による賃上げが見送られる、さらには給与削減すら提案されている公立病院も存在しています。
補正予算で病院経営支援パッケージなどが準備され、来年度の地方財政計画では資金繰り支援として病院事業債の創設などが盛り込まれていますが、止血のための応急措置といった印象です。本来は、診療報酬改定で対応すべきですが、それまでの間、さらなる財政支援がなければ、地域の中核医療を担う公立病院の存続を危うくする状況にあると考えますが、大臣の認識をお聞かせください。
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デジタル人材の確保についてお聞きします。来年3月末を移行期限とした自治体情報システムの標準化に際し、期限に間に合わない自治体が増加し、移行後のランニングコストの大幅増も見込まれています。このとき、自治体でもベンダーでもデジタル人材の不足が大きな問題になっています。
来年度、都道府県が市町村支援のためのデジタル人材を常勤職員として確保した際に普通交付税が措置されます。IT技術者は民間企業の7割でも不足していると言われ、都道府県もその例外ではない現状、果たして市町村支援のための人材を都道府県が確保できるのでしょうか。何都道府県で何人の人材を確保できると見込んでいるのか、お答えください。
関連して、マイナンバーカードについて聞きます。今年度までの2年間、マイナンバーカード保有枚数上位3分の1の団体に交付税を割り増しする利活用特別分が措置されてきましたが、来年度は実施されません。この事業、任意取得のはずのマイナンバーカードの交付率を高めるための政策誘導ではないかと昨年、予算委員会の分科会で質問しました。その際、カードの交付率が高いところほど財政需要が高くなるから交付税を割り増しするという答弁でした。2年が経過し、交付率が高い自治体の財政需要は雲散霧消してしまったのでしょうか。明確にお答えください。
これまで行革・効率化の名の下、総務省は自治体の判断と言いながら、指定管理者制度やトップランナー方式の導入により、自治体業務の包括的な民間委託を推進してきました。しかし、民間実施率が97%に達するごみ収集業務では、委託先の民間業者の人件費や燃料費が上がり、委託費が高騰しています。また、災害現場では外部の民間業者では災害ごみの仮置き場の運営が困難だと指摘されるなど、自治体の現業職員が圧倒的に不足し、復旧・復興に支障をきたす事例が浮き彫りになっています。
業務の民間委託が本当に効率的で、住民が必要なサービスを質的にも提供してきたのかどうかを検証し、自治体の直営によるサービス提供や職員配置の有効性を考える時ではないでしょうか。大臣の考えをお聞かせください。
来年度末の臨時財政対策債の累積残高は約42兆円、交付税特別会計借入金残高も約25兆円。これらを含めて、地方の長期債務残高は来年度末で約171兆円という高水準です。税収の伸びは物価上昇や賃上げを背景に地方税、交付税財源を名目値で押し上げてきたことが大きな要因の一つであり、今後も安定的に地方の財源が確保されていく保障はありません。また金利上昇も地方財政に影響を与えます。地方財政の状況は、依然として厳しく、引き続き交付税の法定率引上げを求めていくべきという認識を大臣はお持ちでしょうか。
自治体は地域の暮らしを根底で支え、住民に身近な多くの事業や事務を実施しています。歳出ベースでは国の4割に対し、地方が6割の事務を担っています、しかしながら、歳入ベースでは総額ベースで地方税の割合は4割にとどまったままです。この逆立ちした現象を解消し、地方が安心して独自の事業を展開できるような大胆な税財源の移譲、税体系の構築こそが、分権を促進し、石破内閣が看板に掲げる、いわゆる地方創生を促すカギであると確信します。そのことを強く訴え、立憲民主党・無所属を代表しての質問とします。