衆院法務委員会理事懇談会で24日、今年3月に名古屋入管で亡くなったウィシュマさんの様子が撮影された映像記録の閲覧と法務省への質疑が行われ、終了後に階猛筆頭理事、鎌田さゆり次席理事が記者団の取材に応じました。

 野党は今年の通常国会からビデオの開示を求めてきましたが、政府与党は保安上の理由、死者の名誉棄損、尊厳などを挙げ、開示を拒んできました。今回の開示は24日に裁判の証拠保全手続で遺族側に2回目の開示がなされ全て完了するタイミングで、衆院法務委メンバーが非公開で閲覧することに与野党が合意し、実施されました。2月22日からウィシュマさんが亡くなった3月6日までの6時間26分にわたる監視カメラの録画映像が閲覧の対象となりました。

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 階議員は「率直に言って、職員の皆さんは悪意はないのかもしれないが、やっていることは拷問に他ならないと思った。ウィシュマさんがいくら苦しがっても、救急車も呼ばなければ、お医者さんにも診せようとしない」「とてもではないが正視できない場面も多くあった」と話しました。
 ウィシュマさんが亡くなる直前まで、入管職員が淡々とウィシュマさんに声をかけていたことに、「この組織は常識からあまりにも逸脱しているのではないか」「彼らにとって人が亡くなるのは緊急事態ではなく日常茶飯事なんだろうと感じた」と述べました。

 印象に残った点については、2月24日午前4時から1時間ほどの部分を挙げ、「ウィシュマさんが断末魔の叫びのような声をずっと上げているにもかかわらず、職員の方が2人くらいで来て、背中をさすったりするくらいで、『夜が明けないから4時間くらい待っていてください』みたいなことを言い、声が少し収まったところで出て行ってしまった」と説明。入管は人の命を預かる組織で、「ケアをする専門職のはずなのに、全くそれに見合う仕事をしていない」「そこが1つのターニングポイントで、そこで常識に沿った行動をとり、救急車を呼び、入院させていれば、命は失われなかったのではないか」と話しました。

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 鎌田議員は、ウィシュマさんの体重がみるみる減り、同時に体力が落ち、運動機能が失われていくのがよく分かったとして、「それにもかかわらず、栄養学的な面からのケアが全くなされていない」と話しました。そして、水分摂取、薬の処方に問題があったことに言及しました。

 法務省が取りまとめた報告書との違いについて問われると、階議員は「映像に比べると、少し丸めて、印象を弱めるような書き方がされているのではないか」と話し、報告書では食事を食べたとか、薬を飲んだと記載されていても、「実際は無理やり食べさせたり、飲まさせられたりしている。そもそも上体を起こすこともできないので、食べたり飲んだりは普通できない」と説明。その上で、報告書について「嘘は書いていないけれども、なるべく事実を矮小化しようという意図が透けて見える」と述べました。
 さらに、「やはり今回ビデオを見て非常に良かった。報告書だけでは実態に迫れなかったし、入管が悪意がなくても、ひどいことをしているかも分からなかったと思う、入管の抜本改革の必要性をより強く認識する契機になった」と語りました。