この対談の際に用いた大林ミカ氏の資料に疑義が寄せられため、2024年3月26日より、この対談記事の公開を中止しておりましたが、疑義がないと判断したため、2024年4月15日より、再度、公開します。

 西村智奈美幹事長は3月18日、「持続可能な社会ビジョン創造委員会」の一環として、同委員会委員の委員で、公益財団法人 自然エネルギー財団の事業局長、大林ミカさんと「エネルギー転換に向かう世界 脱炭素に向けた戦略と日本」をテーマに党本部で対談しました。

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 自然エネルギー分野の第一人者として、これまで30年にわたって自然エネルギーを普及させること、脱原子力、化石燃料をやめていくこと、気候危機の問題などに取り組んできた大林さん。対談ではまず、大林さんから自然エネルギーをめぐる世界の現状について、「2000年以降、特に2010年以降エネルギーの状況は大きく変わった。その背景には自然エネルギーのコスト低下(太陽光のコストは9割、風力発電のコストは4割)と、気候危機の緊急度が増していることがある」「2020年からの10年は、新たな年が始まったと捉えている。世界的には、新型コロナの危機と、気候変動の危機は同じ方向で解決していくことが重要だという方針が打ち出されている。『エネルギーの転換、気候危機を解決していくことが、コロナ危機からの経済の脱却に役立つ』と言うことと重なる」などと説明しました。

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 自然エネルギーのコスト低下が急速に進んでいることに驚く西村幹事長。大林さんは太陽光発電の導入量はこの12年で約20倍、風力発電の導入量は約4倍となり、最も安い電源となっているなか、日本だけが相変わらず石炭価格が安く、電源構成の8割が化石燃料だと指摘。自然エネルギーのコスト低下が、2015年のパリ協定で途上国が温室効果ガスの削減に向けた取り組みを約束した1つの大きな理由だとして、「自然エネルギーをやることが新しい投資を生むものになった」と述べました。

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 気候危機の観点からは、「二酸化炭素濃度の高さに加えて、急速に上がってきて、生態系が追い付くことができない。これを収めるためには、二酸化炭素を排出しないエネルギーへ転換していくことが世界のコンセンサスになっている」と説明。

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 各国が野心的な目標を掲げるのに伴い、金融も変化、エネルギー転換投資が2020年はじめに5千億ドルに到達したこと、需要側からも自然エネルギーへの転換に向けた取り組みが進んでいることを紹介し、「日本は自然エネルギーの量も少ないし買うことができない。買うための方策もない。日本で自然エネルギーを買える社会になることが国際的な競争力になる」と指摘しました。

 今回のエネルギー危機を受け、ドイツが3月4日、2035年に100%自然エネルギーにしていくという政策を打ち出したことも紹介。欧州では、安全保障の観点からも自然エネルギーにしていく政策を打ち出していると述べました。

 大林さんはあらためて「私たちがやっていくべきことはエネルギー転換」と主張。原子力に関して、「再稼働をした電源が本当に安いのか」と問いかけ、「廃炉費用などを含まない再稼働コストは今まで非常に高くついてしまっている。安全対策費もあり、建設するのと同じくらいのコストがかかっている。政府には再稼働のコストを出してほしい」「原子力の場合は、コストだけでなく、発電した瞬間に放射線廃棄物が発生する。その処分方法は世界の中でも解決しているところはない。果たしてこれが将来世代に対して負荷を残さないものなのかは考えなければいけない」と提起しました。

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 西村幹事長が日本の取り組み状況をどう捉えているかを尋ねると、大林さんは、「温室効果ガスの排出量を2030年度に2013年度比46%削減」とする目標は一定評価した上で、「今ある既存の化石燃料の発電所や産業をどうやってソフトランディングしながらやっていくかが優先的に考えられているのが残念なところ。再生可能エネルギーが入っていくためには市場全体を見ていかないといけない。海外では『気候変動省』のようなものがあってエネルギーと環境問題を一緒にできているが、日本は各省庁がばらばらにまたがってやっているのが現状だ」と指摘。西村幹事長は、省庁の枠組みを超えた司令塔をつくるなど、政治が意思を持って気候変動に取り組む必要があるとの認識を示しました。

 大林さんはまた、「エネルギーが社会を形作ると考えている。自然エネルギーに根差した社会は、中央集権的な社会ではなく、分散型で多様な人たちが多様な形で参加できる。それが環境や生態系などと一緒になって前に進んでいくドライバーになっていくと思う」と述べ、海外の自然エネルギーの産業には女性が多く関わっていることにも言及しました。

 西村幹事長は、「今あるエネルギーに関する法律は、国の責任などは定めているが、そこに利用者、生活している人の顔が見えないと感じることがある。私たちの生活、日々の営みの問題であり、生活者としての女性の顔がもっとあってもいいのではないか。私たち自身がエネルギーの問題を自分のこととし捉えていくことはとても大事なこと。立憲民主党としてもそうした社会を後押ししていくために、制度や法律を見直していかなければいけない」と力を込めました。

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大林さんが紹介してくれた、絵本『風よ吹け」(※)を手に取る西村幹事長

※ 2人の母親(風力エネルギーを推進するポーランド人と、イギリス人ジャーナリスト)、そして才能ある若いイラン人アーティストの会話をもとに生まれ、再生可能エネルギー、たとえば風の力がどのようにして世界中の人を清潔で健康的な生活をおくることができるようにするのかを説明しています。