【プロフィール】
いたくら京(いたくら・みやこ)
1966年10月19日、神奈川県横須賀市生まれ
成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒業
保険会社勤務の後、いったん専業主婦になるも、一念発起して2004年3月、税理士資格取得。大手会計事務所、財産今あるティング会社勤務などを経て、2005年に税理士事務所を開業。女性税理士の組織 株式会社ウーマン・タックス代表、資産コンサルティング会社である株式会社WTパートナーズ代表を務める。
ウェブサイト: https://itakuramiyako.net/
Twitter: https://twitter.com/miyakoitakura
Facebook: https://www.facebook.com/itakuramiyako.tochigi

当たり前のことが苦しい日本

――政治を志したきっかけは

 父はサラリーマン、母は高校教師の夫婦共働きの両親の背中を見て育ち、「私も大人になったら働き続けよう」と自然と思っていました。
 しかし、転勤族の夫と結婚したことで働き続けることができなくなりました。「働きたいのに働けない」経験をし、ひどく落ち込みました。でも、落ち込んでいても人生は変わらない、自分で行動しなければと、日本全国どこに行っても仕事ができる税理士を目指し資格を取得しました。
 その後、子どもを産み育て、夫の転勤についていきながら働き、税理士事務所を開業。社員・お客様を増やし、当時は男性社会で男性と肩を並べて働いてきましたが、それは簡単なことではありませんでした。「ただ働きたいだけ、ただ家族を大事にしたいだけ」そんな当たり前のことが苦しい、それが今の日本だと思います。
 政府は「子どもを産め」「女性活躍だ」と言われても、そんなスーパーウーマンがどこにいるんだ、だったらしっかり支えてよと思うじゃないですか。1人育てるのに2千万円かかると言われている今の日本で、2人育てるとなると4千万円。働かざるを得ないから働きに出ようとすると保育園が足りない。働く女性はあまりにもつらすぎます。
 自分が欲張りだからいけなのか、自分の選んだ道だから仕方がないと思っていましたが、こういうところを助けるのが政治ではないかと思い始めました。

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働く女性を疲弊させる男女間の役割分担

――女性が出ることで何が変わる。変えたいか

 私は、基本的に思い立ったら吉日で、あれこれ考えないで踏み出しちゃうタイプなので、今回の公募も、家族からは「やるだろうと思っていたよ」と応援してくれて(笑)、「やるからには勝てよ」と言われています。
 そもそも人口構成比が半々なのだから、女性議員が半分いてしかるべきです。日本は、ジェンダー平等の推進が世界に比べて遅れていることで、女性が生きづらい社会になっているのは、ある側面では間違いありません。そこを解決するためには政治の場にもっと多くの女性が必要です。
 うちの夫はすごく理解があって協力的な人ですが、転勤族だから家にいない。18歳の子どもと一緒に過ごしたのは、たぶんトータルで5、6年ぐらいなので、その間ひとりで子育てをしていました。本当に「男は羨ましいぜ」と思ったのは、同じ税理士でも、私は夜の6時、7時に走って家に帰り、お腹をすかせた子どもに食事を作り、お風呂に入れて、「宿題やった?」などと声をかけながら、寝かせなければいけない。中学に入れば毎日お弁当を作る。でも、男の人は帰宅すれば「妻様」がご飯を作ってくれていて、「うちの妻、料理上手いんだよ」みたいな。なんて恵まれているのでしょうかと。本当に男女間の役割分担の考え方が、働く女性を疲弊させていると思います。
 特に私たちの世代は、ほとんどが家庭か仕事かの二択でした。自分の周りを見ても、出世している女性は、「結婚していないか、子どものいない」人が多くいます。今の社会では、女性は家庭を持つと出世が望みにくい現実がある。こういった問題は企業の「善意」や個人の「努力」だけでは解決は望めません。政治主導で、男女が等しく仕事・家事育児ができるような仕組み作りが必要です。

ふつうの人は選挙に出られない

――立候補にあたってのハードルは

 何よりもお金がかかるということ、そして立候補するには仕事を辞めなければならないということです。私自身、社外監査役を務めていた会社が政治活動禁止のため、退職しました。それだけでも年収が減った上に、何百万というお金を負担するとなると、ふつうの人は選挙に出られません。
 お金がある人ならいいですが、選挙にお金がかかるという仕組みによって、本気で出たい人、人の痛みが分かる人たちが選挙に出る機会を阻むことになっては良くないと思っています。
 私は、議員さんのお給料は上げて良いと思っています。日本を動かすのですから、国会にはさまざまな分野で成功した人たちのアイディアや知識などが必要で、そういう人たちが政治家になってみようと思うような待遇でないと、なかなか優秀な若い人は集まりません。例えば、10年ぐらいやってまた自分の世界に戻っていくこともできたら面白いですし、そうなるとちょっといい日本になるのではないかと期待できます。チャレンジすべき人がチャレンジできる制度になるといいですよね。

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不平等な税金の集め方・分配の仕方を正す

――ご自身の経験を踏まえて、特に実現したい政策は

 税金の不平等をなくし、介護・医療・年金制度を立て直すこと。そのためにも、問題の根っこにある少子化対策は必須です。「法人税の累進課税導入」「物価に負けない年金制度」を訴えています。
 約20年間、税理士として働いてきましたが、税金の集め方・分配の仕方に問題があると感じてきました。中小企業の人たちが大変な思いをして納めた税金が、ひとたび国に渡ってしまうと、アベノマスクに象徴されるように、好きなように使われてしまっていることに腹を立てていました。
 税金は「応能負担」といって、所得や能力に応じた負担、つまり所得の多い人は多くの負担をし、少ない人は少ない負担をして、所得の再分配を行い、経済格差を最小限にすることで、より良い社会を形成することが目的です。
 でも、実際は「利益が多い、強い大企業」はあまり税金を負担しておらず、生活者である私たちは多くの税金の負担をしています。
 例えば、年収300万円の人は年間60万円、毎月5万円を社会保険料含めて払っている。
 これだけではありません。消費税、自動車税・固定資産税・酒税・ガソリン税とその数40以上の税金があります。給与の半分近くが税金になっているのではないかといわれるほど。貯蓄をする余裕もなかなか持てません。
 一方、日本の大企業の多くは「内部留保」と言って会社内に多額の貯え(資産)を持っています。
 ここ30年、給与は上がらないのに、社会保険料の負担は2倍になっています。他の主要国では給料はあがって、社会保険料の負担は横ばい。
 日本の社会保険料の負担が増える最大の理由は、人口減少です。
 今のまま人口減少が進めば、年金・医療・介護の制度は立ち行かなくなるでしょう。
 国が信用できないと思うのは、老後に2千万円の資金が必要とする金融庁の報告書の内容が報じられたとき(2019年)、当時の麻生財務大臣が慌てて否定したことです。
 責められるのが嫌だから臭いものには蓋をする国の体質、失敗したことはきちんと認めた上で、このようにやり直しますという姿勢を見せてくれれば少しは信用できますが、「大丈夫、大丈夫。あれは間違いですから」と言うのを聞いたとき、本当に不誠実だと思いました。

強い野党になりたい

――不誠実な政治を、どう変えていきたいですか。

 若い人や、女性向けの政治の勉強会で話すときは、「あきらめても自分に振りかぶってくるから、文句言っていても始まらない。まずはちゃんと投票して、自分が投票した人がちゃんと働いているかを見てほしい」と言っています。昔に比べて、今はインターネットやSNSなどで情報は取りやすくなっていますから、そういうことをしていかないと、結局困るのは自分です。環境問題も、人口減少も、経済財政も、大きな転換が求められている今こそ、政治の転換が必要です。
 今実権を握っている政治家たちは、良い時代を過ごしてこのまま逃げ切りますから。自分さえ良ければいいのかって本当に思いますよね。そのためには、まずは参議院選挙で野党の議席を増やして、議論ができる国会を取り戻すこと。私の子どもは今18歳ですが、この子が私の年齢(55歳)になる頃にはこの国はどうなっているのか。このままでは若い世代に自信をもって引き継げません。
 私はこの夏の参議院選挙でしっかり議席を確保し、近い将来、立憲民主党で二大政党制を実現したいです。
 強い野党がいなければ、議会としてのしっかりとした議論が行われないし、長期政権は腐敗していく。今の自公政権が証明しています。
 私たちが納める税金を本当に私たちのために使う「まっとうな政治」を行うため、強い野党になりたい。そのために、全力で戦っていきます。