立憲民主党は11月24日、旧統一教会被害対策本部・内閣部門(消費者問題)合同会議を党本部内で開催し、旧統一教会被害対策として政府新法概要で提案されている債権者代位権の現行制度及び改正内容について法務省・消費者庁からヒアリングを行いました。それを受け、旧統一教会被害者と弁護士連絡会の方から被害実態について話を聞きました。

 新法案では、民法の「債権者代位権」を参考に、子や配偶者といった信者の扶養家族が、信者本人に代わって寄付を取り消しできるようにする予定です。

■兄が養子に出された天野ゆとりさん

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天野ゆとりさん(プライバシー保護のため首より下のみ撮影)

 天野ゆとりさん(仮名)は、親が合同結婚式で結婚し生まれた祝福2世で、本人や兄弟は既に信仰がない一方、両親は信者であるといいます。今回は(1)兄が教会の別の家庭に養子に出されたこと、(2)1世信者の老後破綻、(3)いわゆるカード摂理――について語りました。

 天野さんは、教会がなければ、両親が出会わず、自身や兄弟の存在もなかったという事実は、信仰がぶれ始めた頃からひどい苦痛だったと語り、今でも不意にとても落ち込むと話しました。子どもの頃に両親から養子に出された兄の存在を知らされており、その頃は兄がいることに驚き、嬉しく思ったが、兄の気持ちを思うほどの想像力はなかったと振り返りました。

 兄弟全員が兄の存在を知った後は、カレンダーに兄の誕生日も印をつけるようになり、兄の育ての親からの連絡は家族みんなの楽しみだったと語り、家族写真を見ては兄弟で誰が兄と一番似ているかを話すこともよくあったと話しました。

 先日の報道で教会が「複数の子どもがいて養子縁組をしてもいいという家庭があった場合は、養子縁組を行ってきた」と回答したことについて、母が妊娠中に教会から声をかけられ、妊婦さんが集められた部屋で「子どもの恵まれないこの祝福家族に誰か」と言われたと語り、強い信仰とタイミングが重なり、与えられた使命と苦渋の決断をして養子に出していると話し、「両親の葛藤をなかったことにするもので、許せない」と訴えました。さらに、両親は兄を片時も忘れたことはなく、教会の教義に「家族を大事に」というものがあり信仰の強い両親にとって「モノ」として扱われたという報道に心を痛めているのはないかと語りました。

 「家族を大事に」「真の幸せ」「世界平和」という教えは素晴らしいものの、教会のやり方がおかしいと指摘。養子縁組に限らず、天野さん本人や兄弟は、教義のもとで精神的に追い詰められたことが何度もあったが、兄弟で支え合い必死に今日まで生きてきたと語り、両親の愛と、教会のおかしい点は分けて考えることができたので、今も両親をサポートしていると話しました。

 両親が献金どころか生活費も危うくなると子どもに無心をすると語り、「家賃が」「ガス代が」と言われたら頑張ってお金を渡していたと話しました。断れば他の兄弟に無心すると思い、貯金を崩したり借金をしてお金を渡していたが、実は兄弟全員が頼まれていて、それぞれの兄弟が同じように考え、相談せず黙っていたため、結果的に何十万円も両親に渡っていたことが分かったときもあったと振り返りました。

 社会人になり親からの無心で、銀行から10万円から20万円の借金を度々繰り返していたといい、ひどいときは給料以上の金額を頼まれたこともあったといいます。さらにその裏で、両親により勝手に天野さん名義の借金が作られていたと語り、新しくカードを作った時に信用審査が通らず何年も後に発覚したと話しました。とんでもない額になっている借金は、自分名義だったため、天野さん本人が債務整理し現在も返済中だと説明しました。

 また、「為に生きる」の観点から、別の祝福家が借金をしてまで天野さんの家族にお金を送っていたと語り、総額は分からないものの返すことができず自己破産したと話しました。その1世の方は自己犠牲の使命感があったのかもしれませんが、2世はどうしているのかと、その事実を知った時、しばらく立ち直れないほどのショックを受けたと語りました。そして、誰かの苦しみの上に幸せは築けず、そうした状態で成り立っていた生活に罪悪感を覚えていると話しました。現在、別の祝福家庭から借りたとされているお金は、本人と兄弟の収入から返済し続けていると説明しました。

 「債権者代位権」については、扶養家族だけが対象であり、天野さんは兄弟のサポートを受けながら両親を扶養する立場で救済対象にはならないと語り、「これは決して特殊な状態ではなく、同じく声を上げている被害2世の多くが扶養から外れている」と指摘しました。

 また、政府新法案の「不利益を回避するためには寄附をすることが必要不可欠であることを告げる」といった勧誘時の禁止行為について、「全てを差し出す」という強い信仰のもと年金も払わず、生活に支障が出るほど尽くしていた両親はこれに当てはまらないと指摘。取り消し可能期間が10年であることについては、自分名義のカードに気づくのが遅くなった経験もあり、10年では足りず、長期もしくは無期限を希望すると語りました。

 最後に、周りを巻き込みたくないと感じ、人生で起こりうるいろいろな経験を自ら諦めることで心を守り、生き延びてきたようなものだと語り、自分名義の借金を完済することしか生きる理由が見つけられなくなった時期もあったと話しました。

 また、身元が分かるリスクを背負いながらの活動には限界があり、被害2世で心が折れそうになっている人も多くいるといい、今一度、声を上げ続けている被害2世の実態に目を向けて「もう一歩二歩、踏み込んだ救済案をお願いします」と語りました。

■弁護士連絡会の木村壮弁護士

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 全国霊感商法対策弁護士連絡会の木村壮弁護士は、取り消しの立証について、振り込み明細などで立証できるのではないかという話もあるが、基本的に現金で受け取り領収書などもないので、非常に立証に困難をきたしており、苦労している人がたくさんいるのが現状だと指摘しました。

 債権者代位権については、「どういうケースを想定して構成を考えられたのか疑問」だと語り、献金は圧倒的多数の専業主婦や、少しパートなどで働いている妻などだと指摘。収入がある夫が専業主婦の妻に対して扶養を請求するのは考えられず、子が収入のない母親に金銭請求をすることは実務上ほぼ無いと話しました。さらに祝福家族では両親ともに収入が非常に少なく、そういった少ない収入を前提とした養育費の請求は、必然的に少なくなると指摘しました。

 自宅(不動産)はあるがお金がないという場合、無資力要件を満たすのか厳しいと指摘し実効性が低く、適用される場面がかなり限定されると指摘しました。2世の方が、自分の問題を自覚し声を上げようと思ったときにはそれなりの年齢になっていることが多く、そういうケースでは請求できる扶養はほぼゼロではないかと話しました。仮に、未成年の段階で問題に気づいたとしても、声を上げることも難しく、さらに法定代理人は両親であり、特別代理人を選任し裁判をやっていくのかといった具体的な手続きが分からないと述べました。

 取り消し期間については、10年を超えて脱会するケースが山ほどあると指摘。しかも仮に10年と決まったら、10年間は隠し続けろという話になってしまい、辞めそうになれば辞めないように強く働きかけることになるとの懸念を示しました。

■恐怖を煽ることから達成感に基づいた寄付に変化していると山井議員

 山井和則衆院議員は、昨日被害者2世が記者会見を開いたことに触れ、その方たちの4人と今日の天野さんを加えた5人の全員が救済法案の対象にはならないと指摘。そもそも脅されたりして不安で当惑しておらず、いわゆるマインドコントロールが完成しているので使命感に基づいて寄付しており要件に入らないと話し、5人とも扶養家族ではないので、そういった意味でも対象にはならないと述べました。また昨日の会見にも出席した教会元2世でVtuberのデビルさんが、「不安を煽らなくても『世界平和への使命感』に駆られ自動的に献金する従順なATMへと進化」といった話をしていると紹介しました。デビルさんは「教団は集金方法も年々変化し、規制がかかる度に必ず抜け道を探り、いかに返金をしないで済むかに特化して献金手段が変化してきた」「過去は恐怖を煽るものだった献金方法も、昨今では『幸せを祈願』する方式へとシフト」といった指摘もしています。

 西村智奈美対策本部は「いま出ている概要ではとても救済ができない」「(政府には)もう一踏ん張りしていただいて、ちょっとでも救済につながる可能性のある法律を」と求め会議を締め括りました。

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冒頭にあいさつする西村対策本部長

※今回のヒアリングは、これまで同様、被害者保護の観点から顔出しは無しとし撮影は首から下のみ、モザイクのかかった写真・映像も不可。音声は変え、中継やライブ配信、録画の配信は不可としています。