【談話】2023(令和5)年度予算の成立にあたって
                         立憲民主党 政務調査会長
                                 長妻 昭


 本日28日、2023(令和5)年度予算が成立した。一般会計総額は過去最大の約114兆円を記録したが、長期化するコロナ禍・物価高騰への対策、子ども・子育て支援など、国民生活上の喫緊の課題への対応は全く不十分な一方で、積算根拠の不明な防衛費の増額だけが先行する歪な構造となっている。

 政府は、物価高騰対策について、2022(令和4)年度予算の予備費を使用して対応することを決定したが、3月22日発出の談話でも指摘をした通り、こちらも「遅すぎる上に、的外れ」な内容に留まった。我々は昨年来、2度にわたり緊急経済対策を提言するなど、国民生活の実情に即した対策の実現を度々求めてきたが、今回の政府の追加物価高騰対策は、その後追いであると同時に、未だに不十分な内容で、評価できるものではない。

 本予算最大の焦点は、今後5年間で総額43兆円規模を確保するとした「数字ありき」の目標に基づく防衛費の増額である。それにもかかわらず、政府はこの約43兆円の内訳を中々明らかにしてこなかった。
 当初説明がなされたのは、総額の約7割に留まる30.6兆円分に過ぎず、残る約13兆円の内訳は公表されないまま予算審議が開始された。その後、我々の度重なる要求に基づき、予算審議の後半に差し掛かってようやく全体の内訳を示すに至ったが、それも兆・億円単位での開示に留まる。重要論点となった反撃能力(敵基地攻撃能力)についても、その具体的な事例や行使の条件などは明らかにされることなく終わった。こうした状況では、そもそも予算の内容・規模の適切性を検証することは困難である。
 財源についても多くの課題が存在している。最大の問題は、いわゆる「防衛増税」である。そもそも「数字ありき」で内容の検証も困難な防衛費増額のために、復興特別所得税を流用するなどという手法は、未だ復興の途上にある被災地の方々の心情を蹂躙するもので、断じて認められない。また、本来年金特別会計に戻すべき、地域医療機能推進機構(JCHO)の積立金の残余分を防衛費財源に充てようとしているが、これは年金財源の流用にほかならず、断じて受け入れられるものではない。
 我々も、日本を取り巻く安全保障環境の変化等に鑑み、真に必要な予算について積み上げた結果として、一定程度防衛費が増額されることは否定しないが、以上の理由により、これを良しとすることはできない。

 こうした防衛費の増額と対照的なのは、子ども・子育て政策に対する姿勢である。岸田総理は子ども関連予算の倍増を掲げているが、国会で質疑を重ねると、倍増の約束が反故にされかねない答弁が続いた。今回の予算でも、防衛費が対前年比で約26%増となった一方、子ども関連予算は2.6%増に留まっており、ここに本気度の差が表れていると言わざるを得ない。
 予算審議が開始されて以降、児童手当の所得制限撤廃・支給対象拡大、保育士の配置基準改善、給食費の無償化など、我々が従来主張し続けてきた「チルドレン・ファースト」の政策に追随するような動きが政府・与党内に見られる。しかし、これらは自公政権の「失われた10年」で停滞してきた取り組みであり、本気で心を入れ替えて子ども・子育て政策に取り組む気概があれば、今回の予算に盛り込むことも可能だったはずである。加えて、これらの政策が今後本当に実現するのかも現時点では全く不透明であり、まだ期待はできない。

 立憲民主党は、引き続き、国会審議等を通じて、政府の問題点をただすとともに、政府・与党を突き動かす政策提案を続けていく。

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