【コメント】LGBT差別解消を法制化し、トランスジェンダーを排除せず包摂する社会の実現を追求します
立憲民主党SOGIに関するPT座長
大河原まさこ
1. LGBT「理解増進」ではなく「差別解消」を
立憲民主党は、昨年6月に、「LGBT差別解消法案」を提出し、性的マイノリティに対する行政機関や事業者など雇用の分野や学校など教育現場における差別を解消する法案の成立を求めてきました。
LGBTなど性的マイノリティは、性的指向・性自認を理由に偏見やハラスメントにさらされ、自死に至るリスクが高いと言われています。ところが、こうしたことにもかかわらず、国会議員や政府関係者による差別言動が頻発しています。今年2月には、同性婚法制化に関する岸田首相の答弁をめぐる荒井勝喜前首相秘書官のあからさまなヘイト発言により、差別禁止の必要性が広く周知されることとなりました。
過去10年ほどの間に、海外では性的マイノリティに対する法整備が進んでおり、国連人権規約委員会は、日本に対し、繰り返し性的指向・性自認等による差別を禁止する法制整備を求めています。日本の法整備はOECD加盟国35か国中34位であり、雇用などにおける差別を禁止する法律をもたないのは、G7では日本だけです。前回の2022年のG7首脳コミュニケでは、性的指向・性自認による差別からの保護を確保することへのコミットメントが確認されています。
政府与党は、差別禁止を内容としない「理解増進」法案を検討していますが、差別が禁止されず放置されたまま性的マイノリティの尊厳を守ることはできません。差別の禁止が法制化されてこそ、セクシュアリティの多様性が人権問題として理解され、社会の理解が増進されるはずです。
2.トランスジェンダーをめぐる「誤解」
性的指向や性自認による差別を禁止すべきという考え方に対し、性的マイノリティに対する差別を禁止する法整備が行われると、公衆浴場やトイレなど男女別施設でのトランスジェンダーを装った犯罪が多くなり、その犯罪を取り締りにくくするのではという誤解が広まっています。こうした言説は特にトランスジェンダー女性の尊厳を傷つけ、その安全を脅かすものです。犯罪は、加害者の性的指向・性自認にかかわらず取り締まられるべきものであり、差別の禁止が犯罪取り締まりを妨げるものではありません。
3. トランスジェンダーの包摂(1) 法的性別変更要件の見直し
現在、トランスジェンダーが法的性別変更を行うための要件として、「現に未成年の子がいないこと」「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」などが定められています。これらの要件は、法的性別変更を望む当事者にとって「高すぎるハードル」と指摘されています。
トランスジェンダーは、性自認と法的性別が合わないことによって、就学・就労・労働・医療など社会生活の様々な場面で困難に直面することがあります。法的性別変更要件を見直し、「高すぎるハードル」を取り除いて、困難解消につなげることが必要です。
4. トランスジェンダーの包摂(2) 男女別施設利用等についての社会環境の調整
トランスジェンダーは就学・就職・労働・医療など社会生活の様々な場面で困難に直面しています。これまで、男女別施設をはじめ社会の様々なインフラがトランスジェンダーの存在を考慮せずに設計・整備されてきました。こうした困難の解決は、長い間、個々の当事者の自助努力にゆだねられてきましたが、近年では、社会環境の調整へ向け、当事者団体がQ&Aを公表したり(※)、経営団体・労働組合がガイドラインを定めたり、企業や学校が施設整備・改良を行うなどの取り組みが広がってきました。
今般、理解の不足や漠然とした不安などを背景に、「トランスジェンダーに対する差別を禁止すると、公衆浴場やトイレなど男女別施設で混乱が生じる」といった主張が広まっています。社会環境の調整がされないことで多くの当事者は、困難を抱え込んでしまうことも少なくありません。男女別施設の利用については、施設の機能・利用形態等に応じ、当事者の意見を聞きながら、社会環境の調整を行うことが必要です。
5. 差別解消・包摂的社会の実現へ
性的指向・性自認の多様性や、それぞれの違いを当然のこととして受け入れ、多様な生き方を認め合う社会を実現することは、一人ひとりがありのままに個性と能力を発揮することができる、活力ある社会の形成に不可欠です。OECD『レインボー白書』は、LGBTなど性的マイノリティの法的包摂度が高いほど、ジェンダー平等の達成度が高く、経済的発展度も高いとしています。
立憲民主党は、あらゆる差別に対し、断固としてたたかいます。すべての人が個人として尊重され、多様性を認め合い互いに支え合う共生社会をめざし、必要な法整備などに取り組みます。