今国会では、政府から提出された「改正入管法」が6月9日、可決・成立しました。この政府提出の閣法は、2021年に批判を受け事実上廃案となった法案が、問題点を残したまま、再提出されたものでした。例えば、日本の難民認定は、外国人の「管理」を担う入管庁が、明確な解釈基準を示さない不透明な手続で、難民条約の要件を不当に狭く解釈するなど恣意的な運用を行ってきました。その結果、日本の難民認定率は欧米諸国と比較してきわめて低く、海外では多くが保護されるクルドなど少数民族の人ですらほとんど保護されてきませんでした。その一方で、政府の「改正法」は、難民申請中は強制送還しないこととしている現行法を、「難民認定申請を2回して認められなかった人については、その後に難民認定しても強制送還できる」としていることから、難民等として保護されるべき人を出身国に送還して命が失われることになりかねないものです。立憲民主党はこうした問題や人権重視・国際基準の認識に立ち、政府提出の閣法に反対しました。
立憲民主党など野党が提出した法案は、難民認定を独立性・専門性を持つ第三者委員会が行うこととして難民認定手続を透明化・適正化し(難民等保護法案)、入管への収容は司法審査にもとづくこととし期間の上限を定める(入管法改正案)など、長期収容問題の根本原因を踏まえ、より適切に解決することを目指すものでした。
⇒ これまでの立憲民主党の入管法改正案をめぐる取り組み
<野党対案の概要>
【難民等保護法案】
(1)難民条約・補完的保護対象者等をUNHCR等の見解を踏まえ定義する。
(2)新設する難民等保護委員会が難民等の認定を行う。
(3)生活に困窮している難民等の申請者への生活維持費の支給等を規定する。
【入管法等改正案】
(1)強制退去処分の取消訴訟を提起可能な期間等まで送還停止効を設ける。
(2)収容の際の司法審査を導入して全件収容主義を撤廃するとともに、収容期間の上限を設定する。
<政府提出・閣法の問題点>
〇日本の難民認定率は他の先進諸国と大きくかけ離れて低く、難民の地位に関する条約の原則、趣旨にも反する対応は、国連などから深刻な懸念が示されている。
〇出入国在留管理庁が在留資格のない外国人について司法審査を経ずに、期間や回数の制限なく拘束することは国際法違反の恣意的拘禁に当たり、人権侵害であるとの批判も受けている。
〇送還が停止されることとなる難民認定申請の回数制限は、保護されるべき難民が生命を脅威にさらされる領域に送還されかねず問題である。
〇退去命令違反に対する罰則の創設は、長期収容の解消につながるか大いに疑問である。