立憲民主党は、人口減少・高齢化時代にあわせ既存の住宅や土地を生かす政策への転換・推進に取り組んできました。
 社会的にも空き家対策の必要性が重視されるようになり、政府は今年の通常国会に、管理強化や活用策を盛り込んだ「空家対策特措法改正案」を提出しました。立憲民主党は原案に賛成し、法案は可決・成立しました。
 ただし、この法案では空き家対策に取り組む自治体の裁量を広げた他、地域のNPO法人や社団法人に自治体が委託できる範囲を広げたため、自治体やNPO法人・社団法人など地方の負担が増大することも懸念されます。このため、国会の附帯決議において(1)空き家対策区域の指定や手順、空き家の処分の命令・勧告などを自治体が措置する際の具体的な判断基準を国が示すこと(2)十分な予算措置や人材育成などのさらなる具体的支援を行うこと(3)狭あい道路の拡幅に努めるなど災害対策との積極的な連携を進めること――などについて、国の対応を求めました。

空き家をめぐる実態
・空き家率は上昇を続けている。2018年の空き家率は13.6%
・直近5年間の空き家率は、約6割の自治体で上昇
・空き家の所有世帯は65歳以上が約6割   今後も上昇の見込み
・人口が増加している首都圏でも約4割の自治体で空き家率が上昇。 都市部は実数が多く、総数を押し上げている

具体的に何が変わるのか?

✅自治体だけで判断ができる「空家等活用促進区域」を創設

◆現状の問題点
 ×中心市街地・観光地など地域の拠点エリアへの空き家の集中⇒防災性低下、景観悪化
 ×都市計画区域や建築基準法による空き家の活用用途が限定⇒居住を誘導する区域の中にある空き家は従来個別に都道府県などの許可を取ることが必要で時間と手間がかかる
 ×建築基準法上の接道や用途の規制に触れるために自治体が空き家の活用に踏み込みこまないケースがあった
 ×約7割(2019年10月時点)の自治体が設置した空家バンクは登録数の少なさやニーズに合った物件の少なさが指摘されている。
◆法改正による変更点
 ◎「空家等活用促進区域」に指定することで自治体の判断で空き家を新たに活用できるようにし、店舗化などが可能になる
◆今後の課題→空家法採決時に附帯決議で政府に取り組みを要請
 △狭い道路が更に狭くなり、災害対策にマイナスになることがないようにする
 △空家の解体を行う際に狭あい道路を拡幅するなど、災害対策と連携する

✅危険な空き家になる前に「管理不全空き家」として行政が介入できるようにする

◆現状の問題点
 ×市区町村が把握した管理不全空き家約50万戸の内解体や修繕された空き家は約14万戸
 ×遠隔地に居住する人が住宅を相続し、活用されず放置される事例が後を絶たない
【空き家対応スキーム】

空家対策特措法 空き家対策(新旧比較表).jpg

◆今後の課題→法案採決時に附帯決議で政府に取り組みを要請
 △トラブルが増加するなど市町村の行政負担が重くならないか懸念。「管理不全空家」の具体的状態を示すこと

✅NPO法人を有効活用し空き家の利用を促進

◆現状の問題点
 ×活用意向はあっても相談先が少ない
 ×市区町村にとっては所有者探索の手間が大きく、マンパワー不足
◆法改正による変更点
 ◎市区町村がNPOなどを空家等管理活用支援法人に指定し物件のマッチングなどを支援。地域で空き家対策に従事するNPO法人や社団法人に公的立場を与え、所有者への情報提供や相談対応といった活動を後押しする。建築関係者が力を発揮できる
◆今後の課題→同法案採決時に附帯決議で政府に取り組みを要請
 △指定が円滑に進むよう、先進事例の紹介や十分な支援と予算措置を行う

✅「特定空き家」の解体を容易化 (現状の問題点)


◆現状の問題点
 ×特定空家の所有者に対して「勧告」以降に進む件数が大幅に少なく、自治体側が所有者とのトラブルを懸念して実施をためらう
 ×特定空家への対応スキームが複雑、時間がかかる
◆法改正による変更点
 ◎特定空家の解体の容易化:災害など緊急時に命令等を経ずに代執行を可能とする制度を創設等
◆今後の課題→同法案採決時に附帯決議で政府に取り組みを要請
 △緊急時の代執行制度について、過度な財産権の制限をしないよう、どのような場合に緊急時の代執行ができるかを具体的に示し、個人の権利侵害を防ぎ自治体の負担を緩和すべき
 △自治体の空き家担当職員の確保や予算の充実のため担当職員の増員、必要な財政支援