学生時代に若い人の投票率向上を目指した団体を立ち上げ、卒業後は「若者と政治をつなぐ」NPOの代表を務めた岡山1区の原田ケンスケ総支部長。「政治家には絶対にならない」と言っていた原田総支部長に政治家を目指すことになったきっかけや現在の活動について話を聞きました(写真上は、岡山市北区の奉還町商店街)。

■若者と政治をつなぐ

 政治に興味を持ち始めたのは中学3年生の時、9.11(アメリカ同時多発テロ事件)があり、その流れからイラク戦争になったことです。戦争は教科書の中だけのことだと思っていましたが、実際に戦争になっていく様子を見て、戦争は政治がやっているのだと、政治の力の大きさを感じました。

 ただ、政治のことはよく分からないままだったので、大学に進学してから実際に政治に触れてみようと思い、同郷の江田五月参院議員(当時)の事務所でインターンを経験しました。

 インターンをする中で、若い人の声が政治に届いていないのではないか、日本の未来があまり良くないのではないかと感じるようになり、在学中に若い人の投票率向上を目指した学生団体を立ち上げました。

 卒業後も就職はせず、「若者と政治をつなぐ」をコンセプトにしたNPOを立ち上げました。インターネットを使った選挙運動が解禁され、選挙権年齢が18歳に引き下げられたこともあり、中学高校での主権者教育の出前授業なども行い約10年間活動をしてきました。

■政治家には絶対にならない

 NPOの時は、政治家には絶対にならないと言っていました。政治に関心がある人全員が政治家になるのは違うと思っていて、政治家になる人もいるし、僕のように中立的な立場で若い人と政治をつなぐ架け橋になる人もいる。中立な立場だからこそ学校などの教育現場でできることもありましたが、逆に自分の言いたいことが言えないもどかしさや、もっと強いメッセージを発信しないと政治や社会が動かないとも感じていました。

 そうした中、2018年にworld economic forum(ダボス会議主催団体)のU33組織の東京代表としてスイスに行かせていただく機会があり、世界中のいろいろな分野で活動する同世代と話をし、自分の国を変えていこうとしている姿を見ました。それに加え、話をしていると「日本は良かった国だよね」「良い国だったよね」と過去形で言われることも多く、「これではだめだ、よしやろう」と政治家になる決心をしました。

■令和の現状に変えていく

 これまで取り組んできた教育や子育てなど、若者に関する分野を議員になってからもやっていきたいと思っています。教育の仕組みや子育ての在り方、若者の働く環境などを令和の現状に変えていく必要があると思っています。

 今は教育、子育てに関わる人たちの余裕がなくなり過ぎていると感じます。学校の先生や保育士の現状はよく聞きますが、その人たちに限らず、学童保育の指導員や放課後等デイサービスの支援員なども同様です。保護者に加えて、さまざまな専門の皆さんが関わることで子どもが育ち、逆に社会の側からもいろいろな子どもと接点を持つことの意義は大きいと思っています。その現場の余力が全くないと感じています。

 岸田政権は各家庭に現金給付をすることしか考えていません。お金はあるに越したことはないですが、現金給付をしても解決できない課題があります。教育、子育てに関係するさまざまな制度や仕組みを手厚くしていく必要があります。

原田ケンスケ

■多様な「場作り」を行政や政治が行う

 「場作り」も政策の一つとして考えています。以前は公民館が拠点となっていましたが、社会変化の中で公民館だけでは回らなくなっています。海外ではユースセンターという高校生くらいまでの若者が自由に遊べる放課後の居場所といったものがあり、日本でも少しずつできていますが、岡山県内にはまだ2つくらいしかありません。

 また、介護保険は介護を社会全体で支えることを目的としてできたはずですが、まだまだ「家庭」と「施設」だけです。介護事業者と幼稚園が連携する幼老複合施設といった取り組みをしているところもありますが「地域」に介護・福祉が広がっていません。

 行政や政治が多様な場をつくることで、それぞれの場に人が集まり、新たなコミュニケーションが生まれます。こうした「場作り」をアップデートしてきたいと思っています。

■いろいろな人と一緒に何かをする

 日々の活動では、いろいろな人と一緒に何かをすることを心がけています。そうすることで表面的なあいさつだけではなく、さまざまな話ができ、より深くお互いを知ることができます。

 例えば、4月から子ども食堂をスタートした地域があるのですが、ゼロから立ち上げる現場に参加させてもらい、携わることができています。もともと、地域のさまざまな業種の人がつながろうということで、介護事業者の方や農家、企業に勤めている人、公民館の人などが飲みながら情報交換や交流をするイベントを行っていたグループがあり、コロナ禍で飲み会イベントはひと区切りしたのですが、もっと世代を超えて子育て世代や子どもを巻き込もうということで、子ども食堂をスタートさせたのです。

 運営する皆さんは20代から60代、70代くらいの方もいて、フラットにやっているのが面白いです。その中では子ども食堂の話だけでなく、地域の話や、災害があった時につながっておく必要があるといった話なども聞くことができるので、政治が何をやらなければならないのかを知ることができます。

■コロナ禍を通して見えてきた課題を解決していく

 コロナ禍の3年間で、これまでの課題がより大きくなり、あまり見えていなかった課題が加速して見えてきています。その中でも格差の問題は次の選挙で問われるものだと思います。先日もご高齢の方からコロナで旅行に行けなかったから、3年分の旅費を使ってクルーズ船に乗る予定だという話を聞く一方で、コロナで仕事がなくなり収入が減ってしまったという方の話も聞きました。社会保障の世代間格差の問題もあります。持続可能なものにしないと、若者も高齢者も10年、20年後に「こんなはずじゃなかった」という話になってしまいます。

 コロナ禍を通して見えてきた課題を早く解決していく必要があります。今の政治を変えていくために、しっかりと頑張っていきます。

【取材エピソード】

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 撮影のため奉還町商店街を移動中、原田総支部長の知人で倉敷を中心に活動している「岡山県内の子ども食堂を応援するminnatoプロジェクト」の方とばったり遭遇。子ども食堂応援エコバッグを購入する原田総支部長。このエコバッグを持って対象店に買い物に行くと自動で活動支援になるというもの。

◎こどもを主体とした地域づくりネットワークおかやま
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