衆院本会議で1月31日、岸田総理の施政方針演説に対する代表質問が行われ、山田勝彦議員が登壇しました。山田議員は、(1)政治とカネ(2)食料・農業・農村基本法(3)離島振興法(4)物価高に負けない賃上げ(5)外国人労働者の受け入れと多文化共生社会(6)辺野古新基地建設工事(7)被爆者問題、核兵器禁止条約――等について質問しました。

 山田議員はまず、能登半島地震の被災者へ哀悼の意とお見舞いを述べ、「被災地支援に与党も野党もない。一日も早く日常が取り戻されるよう、被災者の方々の声を大切にし、必要な予算を確保し、必要な支援策を進める国会となるよう全力を尽くす」と発言しました。

■政治とカネ

 自民党派閥裏金問題をめぐり、総理が29日の予算委員会で収支報告書を訂正した議員を安倍派30人以上、二階派7人と答弁したことについて、現時点での正確な人数および収支報告書に記載がされていないお金があったとする自民党議員も含めた人数を示すよう岸田総理に求めました。岸田総理は「収支報告書の訂正作業が順次行われているところで、今この時点の正確な数字を答えるのは困難」「今後、適切な時期に説明責任を果たす」と答弁しました。

 次に二階前幹事長の5年で約50億円の政策活動費の使途について質問しました。山田議員は「桁違いのお金を一人の議員が使い切れるのか」と疑問視し、「法律上認められている使い道以外で使っていたとすれば、脱税の疑いが指摘される。脱税の疑いはないと断言できるのか」と総理に迫りました。岸田総理は「わが党の政策活動費は党に代わって党勢拡大や政策立案・調査研究を行うために党役職者の職責に応じて支出しているもの。これらの目的に沿って適切に使用されているものと認識をしている」と答えました。

 続いて、2022年6月に広島市で開催された「総理就任を祝う会」について言及しました。会費が飲食なしで1万円、約1100人が出席し、主催団体から総理の政党支部へ約320万円の寄付があったにもかかわらず、政治資金パーティーと報告されていないとして、「闇パーティー、脱法パーティーとの指摘がある」「岸田方式の脱法の疑いがある闇パーティーを今後も続けるとしたら、多くの自民党議員が真似をする」と問題視し、総理に見解をただしました。岸田総理は、「地元の政財界の方が発起人となり結成した任意団体であり、純粋な祝賀会と認識している」「皆さまの厚意で開催してもらった会に対し、それを続けるか否かについて私はお答えする立場にない」と答弁するにとどまりました。

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■食料・農業・農村基本法

 山田議員は、「食料・農業・農村基本法」が25年ぶりに今国会で改正予定であることに触れ、総理の演説からは防衛予算倍増に熱心なことは分かるが、食料安全保障への熱意が感じられず、食料自給率を上げる具体策もないことを指摘。日本の食料自給率の目標値と具体策を示すよう総理に求めました。岸田総理は、食料自給率の目標値は2030年度に45%であると述べたものの、具体策については「同基本法を改正した上で国内外の食料自給の動向などを踏まえつつ食料の安定供給の確保に係る適切な目標の設定と施策体系の見直し進める」と述べるにとどまりました。

 また、自民党が廃止した農家の戸別所得補償制度についても、先進国で自国の農家を保護しない国はないと指摘し、戸別所得補償制度の復活、新規就農支援事業の所得制限撤廃と削減された支援金対象期間を3年から5年に戻すべきと総理に迫りました。岸田総理は、戸別所得補償制度について「主食用米の需要の減少が続く中、収入保険制度等により農業経営の安定を図りつつ野菜などの需要のある作物へ本格的な転換を進め、生産性の向上や輸出促進を支援すること等で農業の所得向上を図っていく」と政府の見解を述べました。新規就農支援事業については、「令和4年度から資金支援を3年間にして継続しつつ、新たに機械施設導入等の初期投資への支援や修了後の技術サポートを含む総合的な支援施策を追加した」「所得が基準を超えても支援対象とすべき切実な事情がある場合は市町村の判断により支援が可能」と答えました。

■離島振興法

 政府の離島振興予算が、公共事業需要の減少を理由に20年前の約1300億円から令和5年度では380億円へ大幅に削減されていることについて、岸田総理に見解を問いました。山田議員は「国防を考えた時、島しょ防衛は大変重要」「島は急激な人口減少により限界集落が多数存在している」と危機感を述べ、岸田総理に「島の人口減対策は必要だと考えているのか。離島振興予算を以前の規模に戻すべき」と訴えました。岸田総理は、「離島活性化交付金を創設し必要な事業への支援を実施している」と述べました。

 また、フランスでは国土連続性交付金により、離島航路は鉄道運賃並みの料金設定としている例を挙げ、日本でも同交付金を新たに導入し、観光客も対象とした離島航路の低料金化を他の野党とも提案しているとし、岸田総理に低料金化を実施するよう求めました。岸田総理は「日常生活に不可欠な足の確保の観点から住民を対象として運賃割引補助を行う一方で、観光客には離島ならではの観光コンテンツ作り等を通じて誘客支援を実施している」と答弁しました。

■被爆者問題

 被爆者問題について、長崎が地元である山田議員は、広島が地元の岸田総理とは思いを共有しているとし、一方で黒い雨訴訟の後、広島では新たな被爆者救済制度が始まり、長崎は対象外とされたことについて、岸田総理に「国の救済制度が被爆地で差別され続けていいのか。広島の新たな救済制度は当時の菅総理の政治判断で始まった。今度は岸田総理の政治判断によって長崎の被爆体験者を被爆者と認めてほしい」と求めました。岸田総理は「被爆者健康手帳を交付することについては、長崎の被爆地域でない地域で原爆放射能の影響を受けたとは言えないとした過去の最高裁判例との整合性など難しい課題がある。引き続き長崎県・長崎市の意見もよく伺いながらどのような対応が可能なのか検討していく」と答えました。

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