食料・農業・農村基本法改正案の衆議院通過にあたって(談話)
立憲民主党「次の内閣」ネクスト農林水産大臣 金子恵美
同 食料・農業・農村基本法検討WT座長(農林水産キャラバン隊長)田名部匡代
今国会の重要広範議案である食料・農業・農村基本法改正案が、本日、衆議院を通過しました。今般の改正は同法制定以来25年ぶり、初めての改正となりますが、政府原案の内容は基本理念、基本的施策ともあいまいで不十分なものでした。立憲民主党は、よりよい改正とすべく、修正案を提出しましたが、政府・与党はこれを拒否、立憲民主党は政府原案に反対しました。
これまでの基本法農政の失敗に対する検証が不十分
基本法制定から25年、さまざまな施策が講じられてきました。しかしながら、食料自給率は低迷し、農業従事者数も減少、農地面積も減少しました。農業・農村の弱体化が進み、国民の食の安全・安心は危機に直面しています。
なぜ、こうなってしまったのか。それは、これまでの農政が農業・農村の実情にきちんと対処できていなかったこと、特に、第2次安倍内閣の下、新自由主義的政策が強力に推進されてきたことによる当然の帰結にほかなりません。
ところが、こうした農政の失敗に対する十分な検証を行われないまま、基本法改正案が提出されました。これは政府の怠慢であり、検証なき農政を漫然と続けていくと、失敗を繰り返します。
基本理念や基本的施策の書きぶりが曖昧で不十分
政府原案をみると、基本理念、基本的施策があいまいな表現となっていたり、不明確となっていたりする箇所が随所にありました。
政府原案では、食料安全保障の定義において、提供される食料の「安全性」と「十分な量」が明記されていません。コストの価格転嫁が叫ばれている中にあって、食料の価格形成について「適正な価格」ではなく、従来のままの「合理的な価格」としています。また、フードバンク等への支援、人権に配慮した原材料への調達、アニマルウェルフェアへの配慮、有機農業の促進などという重要な政策課題について明記されていません。さらに、担い手以外の多様な農業者の役割・位置付けが弱く、食料安全保障上、重要な意義を有する水田の喪失につながる畑地化を明記するという問題があり、国民全体の財産である種子の確保の重要性という視点がありません。
仮に、こうした政府原案のままの基本法改正案が成立した場合、条文が恣意的に解釈され、効果的な施策が実施されにくくなるおそれがあります。
立憲民主党による建設的な修正案に対して与党は拒否
立憲民主党は、こうした政府原案の問題点を抽出し、改正案の内容をよりよいものにするため、基本理念、基本的施策の内容を明確にするなどの建設的な修正案をとりまとめ、提出しました。
ところが、政府・与党は、修正案の項目全てを「規定済み」であるとか「対応不可」といって拒否し、修正案に対し反対しました。一顧だにしない政府・与党に、現状に対する危機意識、施策推進に向けての熱意は感じられません。これでは、改正後の基本法に基づく具体的な施策の内容は、全く期待できないものとなります。
立憲民主党は政府原案に反対 修正案の考え方を附帯決議に反映
このまま、政府原案の基本法改正案を認めてしまいますと、反省のない農政展開を追認し、具体性のない理念・施策を容認することとなり、食料・農業・農村の将来に取り返しのつかない禍根を残すことになってしまいます。
こうしたことから、立憲民主党は責任ある政党として、改正案には反対の立場をとらざるを得ませんでした。
立憲民主党は、次善の策として、附帯決議案のとりまとめに向け、与野党の調整を進めました。その結果、完全とは言えないまでも、立憲民主党提出の修正案の考え方を附帯決議に反映させることができました。
立憲民主党は、基本法見直しに際し、農業関係者や有識者からご意見を伺い、党内で協議を重ね、昨年6月に基本法の見直しに関する提言を取りまとめ、農林水産大臣に提出しました。
また、全国の農村を訪問し、現場を見て、生の声をお聞きし、一緒に政策を作り上げていく取組である「農林水産キャラバン」を全国展開しています。
こうした提言や農林水産キャラバンでの現場の生の声は、立憲民主党提出の修正案にも盛り込まれています。
基本法改正案が衆議院を通過しても、参議院の審議もあり、まだ続きます。立憲民主党は、これからも農家・農村に寄り添い、ともによりよい政策を構築していきます。
以上