参院本会議で5月17日、離婚後共同親権を導入する民法改正案について討論が行われ、牧山ひろえ議員が登壇しました。
牧山議員は、「今回の法改正により、離婚後の親権のあり方が77年ぶりに見直されることになる。法律は、社会や家庭の在り方を規定するもの。80年近くアンタッチャブルだったという事実こそが、身分法の重さを裏付けている」と指摘し、「特にトラブルを取り扱ったり、子どもや一人親など、社会的に弱い立場になりがちな対象を取り扱う際に、対象を切り捨ててはいけない」と訴えました。
本法律案の策定過程の大きな問題として(1)史上初めて、法制審議会家族法制に関する部会で、全会一致でない議決が含まれている要綱案を策定・提出したこと(2)審議会にはDVの被害者等が当事者委員として参加できなかったこと(3)共同親権を取り扱ったパブリックコメントで当事者の声が多数切り捨てられたことを指摘し、牧山議員は「身分関係において、これほど当事者の切り捨てが起こったことは記憶にない」「社会を統合すべき法律が社会を分断しようとしている」と述べました。
牧山議員は、国会審議での問題点として、
(1)本法案が拙速としか評価しえないような「生煮え状態」だったことから、ケーススタディについて、逐一質疑で確認する必要があり、そのために多大な時間が割かれたこと
(2)制度全般の土台となるような大きな論点について、対応策が不十分なまま国会提出されており、そのために議論がその先に進まず、審議の充実を妨げたこと
(3)「DVや虐待の恐れ」があれば単独親権という方向性が打ち出されているが、家庭裁判所がDVや虐待の事実ないし「おそれ」を正確に判定出来るのかという最も大きな疑問点が解消されていないこと
(4)重要事項の決定について、子が適時適切な親権行使を受けられることが重要で、家裁がオーバーフローのため、「適時」の要件を満たせない場合に関して、当局にシビアな認識がないこと
(5)法施行に向けた準備、準備の前提となる実施時のイメージ、スケール感等に全く具体性がなく、「法が成立したら調査を始める」の一点張りで、国民の代表として政府提案の良否を判断しなければならない国会審議の前提が充たされていない
――等を指摘しました。
その上で、牧山議員は次のように訴えました。「子どもたちの命と未来に直結する重要法案が、国会における各党の勢力図という現実を前にしたとき、多くの問題点を抱えたまま、原案のまま成立することになる。それでいいのか。私たちは非常に苦慮した上だが、衆議院での審議の後半、11項目に及ぶ修正項目を与野党に提案し、協議の結果合意に達した。合意した修正案はわれわれの案を全て反映したものとは言えないが、修正項目のエッセンスが最低限盛り込まれたものであり、原案のまま運用されることによって生じる被害を少しでも軽減できると判断した。
衆議院での採決に際しては、私たちはまずスジを通し、この考えを明らかにしつつ、委員会での採決にあたり、私たち自身が提案した修正案には賛成、そして、元々多くの議員が多大な懸念を持っていることを踏まえ、政府原案には反対するに至った。
衆議院での可決後、参議院に送られてくるのは修正案が溶け込んだ、修正民法改正案ということになる。同一の法案には、政党・会派として同じ対応をするのが責任政党としての一つの考えなので、わが党の立場としては、参議院でも賛成となった。
ただし、質疑でもお分かりのように、私たちは、この政府案に諸手をあげて賛成しているわけでは全くない。元々の私たちの修正内容は含まれない政府原案に対する評価は、衆議院の委員会採決で原案に反対したことに示されるように極めて悪いもの。
また、国会議員、そして 国政政党として、法案を少しでもいいものにする努力をするのは当然であり、義務でもある。また筋論に関しても、交渉の相手方すなわち修正協議を行うよう与党側にも働きかけを継続してきた。提案内容としては、衆議院での審議時に作成した修正11項目について、当院では本則の修正を目指した。
しかし、与党の反応は極めて辛く『既に衆議院で修正協議済』であることを理由に全く応じることはなかった。この点は残念と言わざるを得ない。この与党の頑なな態度に当方も方針を転換し、附帯決議を充実する方針に切り替えた」と参議院における修正協議の経緯を明らかにしました。
最後に牧山議員は「子どもたちの笑顔を守るため、柔軟性を保ちつつ、今回成立した新制度に改善の意欲をもってしっかりと関わり続けることが、私たちの責務だ」と強調しました。