衆院決算行政監視委員会で6月17日、岸田総理が出席して2020年度(令2年度)、2021年度(令3年度)、2022年度(令和4年度)決算に関する締めくくり総括質疑が行われました。野田佳彦、青柳陽一郎、井坂信彦、谷田川元、小宮山泰子各議員が質問に立ち、政治とカネをめぐる問題等に対する岸田総理の政治姿勢を厳しく追及しました。

■野田佳彦議員

 野田議員は、今国会での約半年間にわたっての政治改革の議論について冒頭、「確かに政治にお金はかかるが、かけすぎているのが今の弊害だ。お金のかからない政治をどのように実現するかといった『そもそも論』の議論を深められなかったことは残念だ」と述べ、その最大の理由は、自民党の改革案の提出が遅かったことだと批判。その結果、野党が提案した個人献金を奨励するよう税制の優遇措置を取ることや、政治資金規制法違反した議員がいた場合には政党交付金を減らす等、本来本則に入れるべき事項について、時間がないため附則に盛り込むことになったと述べました。

 野田議員はこうした状況に、「国会審議を妨げたという認識を持っている」として、今回自民党が提出した改革案が遅すぎ、小粒過ぎたのは、矮小化させようという総理の意図があったのではないかと指摘。岸田総理による党への指示が、企業団体献金や、政治活動費、政治資金パーティーなどの大玉を外したものだったと述べ、「不正の温床になってきたのが企業団体献金で、一番使途不明なお金が政策活動費。政治資金パーティーも大きな問題になっているのに、議論の俎上に載せるというリーダーシップを発揮しなかった」と問題視しました。

 その上で、今回の政治資金規正法改正案の内容は、政治家の資産作りに悪用しようと思えばできる、政治活動の自由が保障され過ぎて特権になってしまう法律だと指摘。国民は1円たりとも税逃れができない制度である一方、政治家は特権があり過ぎではないかと怒りを持って見ている目に対しての答えになっていないところに問題を感じると述べ、あらためて抜本改正を今後目指す考えはないかと迫りました。岸田総理は、法改正後も政治資金あるいは政治活動について、政治改革の議論を続けていかなければならないとの考えを示しました。

 野田議員はまた、岸田総理が「大臣規範」に反し政治資金パーティーを開いていた問題を自身が繰り返し取り上げてきた理由として、衆院政治倫理審査会での岸田総理の冒頭陳述「政治は特別なものだという特権意識があったとするならば、その特権意識を是正し」という発言に言及。「特権意識を最も持っていて、時の最高権力者にもかかわらず、その特権にあぐらをかいているのが総理大臣の政治資金パーティーだと思ったから」だとして、時の最高権力者にパーティー券購入を求められたら断れない人がほとんどであるなか、1回当たり3500万円もの売上げるパーティーを年7回も開いたことに、「これは特権にあぐらをかいているのはあなた自身だと思ったから。その人が火の玉になって政治改革の先頭に立てると思わなかったから総理大臣のパーティーをしつこく研究して追及したことはご理解いただきたい」と述べました。加えて、総理の就任パーティーを開催した任意団体から総理が代表を務める政治団体に320万円の寄付があったことに「一種の脱法パーティー」だと断じ、こうしたパーティーも開かないよう要請。岸田総理は外務大臣や内閣府の担当大臣の時も同様の祝う会を開いていると指摘して、「これは岸田式。抜け道ではなく迂回路だ。迂回路をみんながやるようになったらどんな規制をやっても意味はない。しっかり気を付けてもらいたい」と注文を付けました。

 最後に、議論のプロセスで最大野党の立憲民主党との党首会談を開かなかったことを問題視。1994年の政治改革関連法の時は、当時の細川総理と自民党の河野総裁が6時間の協議の末成案を出したことにも触れ、「政治資金規正法や公職選挙法は当面のライバルである最大野党と向き合い、そこで一致点を見出して進めるのが政治改革だ。最初からスルーするのは邪道だ。そんな前例を作ってはいけない」と主張。岸田総理は、実務担当者で各党と協議したと強弁しましたが、野田議員は「中身はざる法でプロセスは邪道。こんなものは認めることはできない。国民の信を問うべきだ」と述べ、質問を終えました。

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■青柳陽一郎議員

 青柳議員は、自民党の裏金問題に関連し、組織的・継続的に裏金を作っていたとされる85名のうち、政治倫理審査会で弁明したのは総理を含め7名で他は弁明を拒否、収支報告書の訂正も「不明」とだけ修正したものが多数だと指摘。「国会議員は法律や社会のルールをつくる立法府の一員で、税金の使い道を決める納税者の代表でもある。裏金議員が国会に出席し、予算・立法作業を行っている」「国会の品位や権威にも関わる事態」「何よりも、こうしたことを続けていたら、許していたら社会がねじ曲がる」と述べ総理に見解を求めました。岸田総理は、「政策研究団体の政治資金規正法の規制がそもそも緩かった」「国会議員関係政治団体についても外部監査の対象は支出のみで収入は監査対象外であった」「現金管理が許容されていた」などと述べ、「党の改革を行い、関係者の政治責任を明らかにし、法改正の議論に臨んでいる」として「自民党自身も変わらなければならない、政治全体の信頼回復にも努めなければならない」などと他人事であるかのような発言を繰り返しました。青柳議員は、「国民の信がなければ、政治・政策は前に進められない」と厳しく指摘しました。

 予備費について青柳議員は、2020年から23年までで予備費を30兆円強も積み、23兆円を使い、7兆円が不要額となっているとした上で、予備費は(1)あくまでも例外措置であり、これまでは5000億円程度の計上であった(2)原則、会期中は使用しない(3)年度末に支出を決定し、翌年度に支払うことは禁じ手――だと指摘。さらに基金について、2023年度末時点で、(1)基金数は200(2)残高17.4兆円(3)基金の不必要額は10.3兆円(立憲民主党と衆議院調査室で精査)(4)全く事業を行っていない基金が21――だと指摘。財政民主主義の破壊につながる由々しき事態であり看過できないと述べました。また財政赤字が深刻で国民負担が増加しており、格差と貧困が固定化されているのが現状だとして、税金の使い道を改めることで、子育て、教育、介護、住宅支援などベーシックサービスをより充実させるべきだと主張しました。岸田総理の答弁は、予備費や基金の基本的な説明にとどまりました。

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■井坂信彦議員

 井坂議員は、自民党の幹事長に「毎年10億円もの大金が政策活動費という名前で、領収書のいらない裏金として支給されてきた」ことは、「税金を払っていなければ巨額脱税で逮捕されてもおかしくない」話だと強調。自民・公明・維新が合意した政治資金規正法改正案は、「政策活動費を合法化しようとしている」ものだと批判しました。その上で、収支報告書の保存期間が3年、脱税の時効は7年、政策活動費の領収書の公開は10年後からとしていることについて、「時効で逃げ切れるようにする脱税議員の保護法になっているのではないか」と問題視しました。これに対し岸田総理は、「税の取り扱いについては税務当局が判断することだ」と強弁しました。

 さらに井坂議員は、政策活動費に関する領収書の公開対象についても問題視しました。自民党の幹事長から政策活動費を受け取った各議員については、領収書の公開対象ではないと断罪。裏金議員が異口同音に「政策活動費だと思ったので領収書を保存せず、収支報告書にも記載しなかった」と言い逃れしていることを踏まえ、自・公・維の改正法案では、「裏金問題は何も解決しない」と強調しました。

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■谷田川元議員

 谷田川議員は地方創生の方針を安倍内閣が打ち出した2014年9月から10年を経過するなか、国全体の人口減少や東京圏への一極集中などの流れを変えるに至っておらず、成果が上がっているケースの多くは移住者の増加による変化に留まり、地域間の人口の奪い合いに過ぎないとの見方を示し、原因の掘り下げ・分析こそが必要だと指摘しました。岸田総理は「地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある」と応じ、就職や進学を契機として若年層、特に女性の(東京圏への)流入が続いている点が大きなポイントだと述べ、女性を含め若い世代が地方に魅力を感じられるような働き場・学びの場の創出、子育て環境の整備が重要なポイントなので、総合的な取り組みを進めていくと答弁しました。

 谷田川議員はまた合計特殊出生率が1.20で過去最低となり、東京都は1を下回ったことに言及し、「非常に深刻な問題。特に小中学校の統廃合がこのまま進んで小学校がなくなった頃は人が住まなくなってしまう」事態になるとの危機感を示しました。そうした状況下にあって谷田川議員は岸田総理が「子どもファースト」として打ち出した異次元の少子化対策に注目したと述べるとともに、一方、民主党政権下で「チルドレンファースト」を掲げ、子ども手当と高校無償化を打ち出すなか、民主党政権下では合計特殊出生率が徐々に上がり、2013年には1.43となったと説明。「子どもを産んでも不安がない」という意識に拠るものではないかとの見方を示しました。一方、子育て支援金について岸田総理が「国民の負担ゼロ」と発言している点を問題視し、社会保険料に上乗せされることを明言すべきだと述べ、「日本を救うために少子化を何とかしなければならない」との強い思いのもとで国民に明確に説明し理解を求めるべきだと注文をつけました。

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■小宮山泰子議員

 小宮山議員は「これまでの政治は、人を粗末にしすぎた。生まれた環境によって受けられる教育が左右されてしまい、結果として能力が発揮できない。賃金が上がらないことで、個人消費も伸びない。また、女性の幹部登用が少ないなど、同質集団による同調圧力によって創意工夫が失われている」「徹底して『人』に寄り添うことで、誰もが自分の能力を十分に発揮することのできる、温もりのある環境をつくる」と立憲民主党が昨年とりまとめた「人から始まる経済再生」に言及しました。

 経団連が選択的夫婦別姓について導入に必要な法律の改正を早期に行うよう求める提言をとりまとめ、戸倉会長が「名字の問題、個人の問題は企業にとってのビジネス上のリスク」と語ったことを紹介しました。また、先日公表されたジェンダーギャップ指数に関して、「日本は118位にあがったが、G7では最下位。女性管理職の少なさ、男女の賃金格差、女性議員の少なさ等、日本の取組みが他国に比べて大きく遅れている」と指摘しました。

 小宮山議員は法制審議会が選択的夫婦別姓の導入を求めた答申から既に28年もたっていることを改めて指摘し、岸田総理の認識を問いました。岸田総理は「社会全体の家族の在り方に関わる。国民の間に様々な意見があることから、より幅広い国民の理解を得る必要がある。法制審の答申から28年とのことだが、議論の長さが問題ではない。経済的リスクのみならず、家族の一体感、子どもの利益もあることから、国民の議論が必要」と導入を考えていないことを明らかにしました。

 小宮山議員は「いつまで検討するのか。残念な気持ちでいっぱい。政権交代をしてこの問題を解決していきたい」と述べました。

【政策解説】立憲民主党は選択的夫婦別姓の実現をめざします

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