立憲民主党は、4月2日午後、・環境エネルギーPT(座長・田嶋要ネクスト経済産業大臣・衆院議員)・農林水産部門(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)合同会議を国会内で開催。ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について、政府(農林水産省、資源エネルギー庁、環境省)、全国農業会議所、千葉エコ・エネルギー株式会社、合同会社小田原かなごてファームよりヒアリングを行いました。(司会:神谷裕農林水産副部門長・衆院議員)
■あいさつ
冒頭のあいさつで田嶋座長は、「ここまでくるのに長い道のりだった。今日はそれだけ画期的な場にできたのではないかと思っている。金子部門長から『農地を守る』とのお話があったが、加えて、農業を守り、農業をなりわいとしている皆さんの暮らしを守るという思いが大前提。そのためにも、営農型太陽光発電は可能性が大きい。しかし、あまり知られておらず、誤解も大きい。もっともっと、われわれが対話をしていかなければならない。農水部門と環境エネルギーPTが合同でこういう場を設けたのは今日が初めて。改めて、広げていくために知恵を絞っていきたい。イノベーションがどんどん進んでいる。現場ではいろんな挑戦が広がっている。日本よりも海外でスピードを上げて拡大している。役所の皆さんも頑張っているが、必ずしも援軍が十分ではないという思いである。今日、スタートして、われわれの政策として強力に推進でき、農業をしっかりと応援できるよう、頑張っていきたい」と述べました。
金子部門長は、「ソーラーシェアリングの前提にあるのは、農地を守ること。もちろん、再生可能エネルギーをしっかりと構築しなければならない。本日は、政府、全国農業会議所、千葉エコ・エネルギー株式会社、合同会社小田原かなごてファームにお越しいただいた。田嶋座長から農林水産部門と一緒にエネルギー政策を考えたいと声掛けをいただき、この場を設けた。よろしくお願いする」と述べました。
■農林水産省よりヒアリング
まず、農林水産省より、営農型太陽光発電について、次のような説明がありました。
営農型太陽光発電は、一時転用許可を受け、農地に簡易な構造で、かつ、容易に撤去できる支柱を立てて、上部空間に太陽光を電気に変換する設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う事業で、作物の販売収入に加え、発電電力の時価利用等による農業経営の更なる改善が期待できる取組手法である。
営農型太陽光発電設備を設置するための農地の一時転用許可件数は、令和4年度までに5,351件、その発電設備下部の農地面積は、1209.3ha。
令和4年度末において、営農型太陽光発電設備の下部農地での営農に支障があったものは、927件で、前年度より237件増加している。支障の内容は、単収減少・生育不良(営農者に起因するもの)が68%(635件)で、こうしたケースに対しては、農地転用許可権者が改善措置を講ずるよう指導を行っている。
営農型太陽光発電事業に係る不適切事案への厳格な対応として、従来、局長通知で定められていた許可基準・提出資料に係る規定を法令(農地法施行規則)に明記、制度の目的・趣旨や考え方を記載したガイドラインを作成し、令和6年4月1日に施行している。また、農地転用の許可を受けたものが定期報告を行う仕組みおよび違反転用に係る原状回復等の措置命令を履行しない事業者について公表する仕組みを法定化している(令和6年6月成立、令和7年4月施行)。
令和6年4月に施行された改正再エネ特措法では、関係法令の違反事業者に対し、早期の違反解消を促すため、FIT/FIP交付金を一時停止する措置を新設しており、これを受け、農林水産省は、下部農地での営農が適切に継続されていない等違反転用状態にある営農型太陽光発電事業等の情報を資源エネルギー庁に提供している。
農林水産省は、営農型太陽光発電に取り組みたいと考えている人やその取組を支援する地方自治体・金融機関の参考としていただくため、「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」を公開、また、予算事業により、地域ぐるみの話合いによって、適切な営農と発電を両立する営農型太陽光発電のモデルを策定し、導入実証を行う取組を支援し、専門家による個別相談窓口を設置している。
■資源エネルギー庁よりヒアリング
資源エネルギー庁からは、農林水産省の説明と同様、営農型太陽光発電のうち約2割が太陽光パネルの下部農地での営農に支障が発生しており、こうした不適切事案への厳格な対応を行っているとして、以下のような説明がありました。
関係法令に違反する事業者等に対するFIT/FIP交付金について、資源エネルギー庁は、改正再エネ特措法施行日以降、関係省庁と連携の上、令和6年8月5日、農地法違反(必要な農地転用許可を受けていないものや、収穫量8割以上の営農が継続されていないもの)等の不適切な事由が確認された営農型太陽光発電事業(計342件)に対し、同年11月25日には、農地法違反や盛土規制法違反等の太陽光発電事業(計19件)に対して、それぞれ一時停止措置を講じた。
また、資源エネルギー庁は、再エネを必要とする需要家のコミットメント(長期買取や出資など)の下で、需要家、発電事業者、小売電気事業者が一体となって再エネ導入を進めるUDA(User-Driven Alliance)モデルの拡大が重要であるとして、需要家主導の太陽光発電導入促進補助金により、FIT/FIP制度の自己託送制度によらず、太陽光発電により発電した電気を特定の需要家に長期供給する等の一定の要件を満たす設備の導入を支援している。
■環境省よりヒアリング
環境省からは、営農型太陽光発電の取組事例の紹介がありました。
まず、脱炭素先行地域における取組事例として、岩手県陸前高田市の事例と千葉県匝瑳市の事例の説明がありました。
岩手県陸前高田市の事例は、(1)農地回復が難しい津波被災跡地を有効活用し、ポット式根域制限栽培を採用した果樹(ブドウ)栽培と、太陽光発電事業を組み合わせた「営農“強化”型太陽光発電」を導入し、脱炭素を図る、(2)不足している電気保安人材を確保するため、地域新電力会社や県、管理技術者協会等と連携し、資格取得支援を行うというもの。
千葉県匝瑳市の事例は、(1)営農型太陽光発電による売電収入、バイオ炭販売やそのカーボンクレジット収益等の新たな収入源を確保する農業経営モデルを構築することで、高収益や新規就農者確保、関係人口増加を推進、(2)営農型太陽光発電の再エネを地域新電力「しおさい電力」が需要家へ供給、(3)「市民エネルギーちば」が中心となって運営するソーラーシェアリング・アカデミーを通じ、市内外へ営農型太陽光発電のノウハウ共有等を実施というもの。
次に、重点対策加速化事業による取組事例として、島根県美郷町の事例と長崎県松浦市の事例の説明がありました。
島根県美郷町の事例は、(1)農山村地区の営農法人が取組営農型太陽光発電で再エネ設備の普及を図るとともに、高効率空調設備や電動車を導入することで、化石燃料を使わない「美郷ゼロカーボン農業モデル」を実現する、(2)研修施設の整備や就農支援体制の整備等により、地域での農業の担い手としての移住者の呼び込みを積極的に実施するというもの。長崎県松浦市の事例は、(1)耕作放棄地を含めた農地に営農型太陽光発電を導入し農地の再生を図るとともに、発電した電力を水産加工場等へ供給することで、営農者の所得向上やエネルギー代金の域外への流出を防止する、(2)シンボリックな本庁舎にソーラーカーポートやEV充電器、EV車を導入し、発電電力のモニタ表示により市民の再エネに対する理解を醸成する、(3)再エネ計画の情報発信プロジェクトにより、省エネ、再エネ導入のメリットや支援制度を周知し、導入を促進するというもの。
また、令和7年度予算で50億円を計上し、ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業を、経済産業省と連携して実施することとしている。
■全国農業会議所よりヒアリング
全国農業会議所からは、以下のような説明がありました。
この会議に出ると申し上げたときに、事務局を通じ、「全国農業会議所は、営農型太陽光発電の推進派になったのか」というような話が聞こえてきたが、基本的に是々非々の立場で臨んでいる。持論だが、営農型太陽光発電には、良い営農型太陽光発電と悪い営農型太陽光発電の2種類しかない。農業委員会が現場で判断するときに、あまりにも悪い営農型太陽光発電が枚挙にいとまがないので、ベンチマークできる良い営農型太陽光発電をしっかりやっていく必要がある。私どもが良い営農型太陽光発電と考えているのが、今日出席いただいている千葉エコ・エネルギー株式会社と合同会社小田原かなごてファームの事例。
従来、営農型太陽光発電については、農村振興局長の通知で、現場で判断せよ、ということであったが、年来、法令に位置付けていただきたいと全国の農業委員会から要望した結果、令和6年4月1日に、農地法施行規則に位置付けていただくとともに、詳細なガイドラインを出していただいた。この省令改正とガイドラインは農業委員会系統組織の要望を相当程度受け止めた内容となっている。施行後1年になるが、現場の状況を積み上げ、必要なことがあれば政策提案を出したいと思っている。仄聞している限りでは、法令、ガイドラインに位置付けていただいた成果として、既存の営農型太陽光発電をきちんとやっていない主体が次の申請を出してきたときに、不許可とした事例がある。
営農型太陽光発電で農業を行う主体は、3通り想定される。1つ目は、農地所有者が自ら行う場合、2つ目は、農地を借りた人が行う場合、3つ目は、発電事業者が法人を立ち上げて行う場合。往々にして、発電事業者が行う場合に問題が多い。関東地方のある県で手広く営農型太陽光発電を行っている発電事業者が農業法人を立ち上げているが、県内あちこちにパネルを置き、農業法人自ら行わず、近隣の農家に営農協力金を払って農業をやっているという例があった。これは農地法上問題。農業で収益が上がっているかどうかわからないが、見た目には保全管理がなされ、遊休化はしていないという事例。北関東のある県では、農地として残るパネルの際の管理が粗いという事例がある。パネルを置かなければ遊休化してしまうが、保全管理という低利用な状態がぽつぽつとできてくると、これから「地域計画」で農地情報を使っていこうというときに、太陽光パネルが本当に農業をやっていこうという人にとって邪魔になりかねないという懸念が払拭できていないというのが現状。
一昨年、ある会議で、当方は是々非々、千葉エコ・エネルギー株式会社と合同会社小田原かなごてファームは推進という立場でご一緒して以来、親しくさせていただいている。昨年10月4日、「ソーラーシェアリングサミット2024」に出席した際に資料を提出した。良い営農型太陽光発電と悪い営農型太陽光発電をしっかり区別する必要があるとした上で、農業現場におけるあるべきソーラーシェアリングについてまとめたもので、その内容は以下の5点。(1)今後のソーラーシェアリングの展望としては、営農型太陽光発電を食料安全保障とエネルギー安全保障を両立させるものとしてみていくとの認識。(2)ソーラーシェアリングによる環境負荷の低減、農業機械・施設の電化、施設園芸における電力の供給体制の構築。(3)地域計画への位置付けの明確化。農業委員会は、農地法に基づいて農地の利用に着目して判断するものであって、営農型太陽光発電施設を設置することに対して農業委員会が許可しているわけではないが、地域の方からは農業委員会が許可したから太陽光パネルが置かれているとみられる。地域で営農型太陽光発電が認知されることなく、いきなり農業委員会で農地をめぐっていいか悪いかの判断を求められて、矢面に立たされる。今回、地域計画の協議の場で、農業委員会だけでなくて、市町村、JA、土地改良区、農業者で、営農型太陽光発電施設を設置することについて、一定地域で合意がとれて、認識されて進むということは、昨年のガイドラインのおかげだと思っている。(4)太陽光パネルは、気候変動で気温上昇が激しくなる中での遮光性、冬場のお茶の霜害回避など、農業に積極的な寄与がある。(5)営農型太陽光発電に関する調査・研究が必要。
良い営農型太陽光発電について、現場の農業委員会がしっかりとベンチマークできるような事例を公的な機関で認知するような取組が必要と思っている。
■千葉エコ・エネルギー株式会社よりヒアリング
続いて、千葉エコ・エネルギー株式会社(以下「C社」)から説明がありました。
C社代表取締役は、エネルギー政策の研究者として、千葉大学で教鞭をとっており、C社を設立して13期目。また、さまざまな委員等を務めています。C社は、グループ全体で15㏊の農地で露地野菜を中心に生産しており、後継者のいない農地を引き受け、来年には30ha規模になるとのことです。
C社から、営農型太陽光発電の活用について、次のような説明がありました。
この取組は、農業生産と太陽光発電が農地において「共生」していくものである。「共存」では、それぞれが勝手にやっていくことになるが、あくまでも、相互に作用しながら、よりよい形を作っていけないか、ということをずっと考えている。
営農型太陽光発電とソーラーシェアリングはイコールではない。営農型太陽光発電は、農業経営の改善に資するもので、再生可能エネルギーを地域で賄っていくという面もある。一方、ソーラーシェアリングは、発案された農業技術者の長島彬さんの定義によれば、太陽光発電システムを大きく広げるに当たって様々な土地利用とエネルギーをシェアしていくということ。その中で、1次産業との親和性が高く広がっていることをご本人からもうかがっている。農業側から発しているか、エネルギー側から発しているかが用語の使い分け。
これが世界的にどのように受け入れられているか。日本から始まった事業化された取組であるとの国際的認知はあるが、今、特に、フランス、ドイツ、アメリカでの研究が盛んで、考え方が拡張され、メガソーラーの敷地内で農業をやってもいいではないか、という方向に各国が傾いている。除草剤を撒いて草を殺し続けるよりも、羊を放牧して除草してもらう。レンゲソウなどミツバチが蜜を吸う植物を全面に撒いて生態系を保全する管理方法もあるのではないか。太陽光発電は地面を使うのであれば、農業、自然生態系にかかわるような在り方もあってよいのではないかという考え方が2019年頃から提唱され、広がりつつある。
日影がある環境と農業とのバランスについて、徐々に研究が積み上がってきている。2022年に各国の太陽光パネルの日陰と農業生産の関係性についてデータをとってみたところ、3割程度の遮光であれば、葉物野菜や牧草の収量は減らない。ベリー類や果物では収量が増加するというデータが出てきている。
千葉市の大規模農家にご協力いただき、大型のコンバインが太陽光パネルの下で作業できる空間を確保した圃場で実証実験を行った。品種はもち米の「ふさのもち」。1年作ったが、太陽光パネルの有無で収量に統計上有意な差はなく、同等の品質が確保できたとの結果を得ている。韓国における先行研究では、遮光すると米の収量は減るという結果であった。今回、おそらくは品種特性であろうと分析しているが、遮光しても同じものがとれた。今後、多様な品種での研究が必要であるが、日本独自の成果として学会等で発表している。
農水省、全国農業会議所からも紹介があったが、遮光環境の中で、夏場の高温に適用しうる。千葉市内で夏野菜を栽培しているが、一昨年の7月、千葉市内で39℃超え、1か月雨が降らない中、我々の畑だけが、灌水を続けながら、通常の品質でナスを出荷できた。灌水量も他の農家と比較して4分の1の量であった。
先ほどの陸前高田市の事例であるが、ブドウ棚を作る際に営農型太陽光発電の架台設備を活用することにより、本来1,000万円以上必要であった投資を農業側でしないで済んだ。また、雨除けにもなる。
太陽光発電設備があることにより、葉物野菜に対する霜害、高温防止、鳥獣害の防止に対する貢献などの効果がみられる。
農業生産が太陽光パネル下でできるかどうかではなく、どう活用して農業生産をいい方向にもっていくのか、という時代になってきていると感じている。
なぜ、営農型太陽光発電が広がってこなかったのか。分析は難しい。国際学会は一昨年には韓国、去年はアメリカで開催された。そうした場では、日本は先進地として評価されているが、日本国内ではまだまだ知られていない。そもそも農地においてエネルギーを作る、使うということについて、生産現場で関心がもたれていない。規制をしなければならない事例が目立ってしまい、何がいい取組か、何を普及すべきか、ということが定まっていなかったことがあるかと思う。
何を目指していくか。持論だが、農業生産をしていくにもエネルギーが必要。トラクター、コンバインしかり。千葉ではイチゴ栽培が盛んだが、重油ボイラーを炊かなければならない。これを化石燃料、輸入資源ではなく、農地、農村において得られるエネルギーで賄っていくことができれば、本当の食料自給と言えるのではないか。このエネルギーをどう得ていくか、どう農業に活用していくか、考えていかなければならない。
その上で、全国農業会議所専務理事からあったように、いい事例、望ましい事例を定義していく。水田、畑、果樹園、牧草地、施設園芸など、条件が異なる。水稲も新潟と北海道では全く気象条件が異なる。解決したい農業の課題も違ってくる。これに対して営農型太陽光発電がアプローチできるか、さまざまなモデルを作っていかなければならない。
日本の多様な事例をもって各国が次々と研究投資をしている。アメリカでは年間10億円以上この研究に投じている中、様々なパターンが出てきている。我々としては、この事例を進めていくためのアクションを続けていきたい。
■合同会社小田原かなごてファームよりヒアリング
続いて、合同会社小田原かなごてファーム(以下「Oファーム」という。)から次のような説明がありました。
本日、全国農業会議所がおられるが、私とはある意味対立関係であったと思って、最初に門をたたいた。今、こうした形で交流して、同じ席にいるが、先ほど、田嶋座長が言われたように、5年くらいかかった。現場で営農型太陽光発電をやっている者の目からすると、与野党問わず、営農型太陽光発電に対する懐疑的な見方が強いと思う。私は、神奈川県で一番ソーラーシェアリングをやっている。7か所発電施設を持っているが、7か所とも、耕作放棄地であった。今までは遊休農地のままでしかなかったものが営農型太陽光発電をやることによって、モチベーションが上がって、よし、復活させようとしているのに、どうしてこれが「悪い営農型太陽光発電」なのかと。うちは小さい発電所。営農型太陽光発電は発電事業者ではなくて、農家がやるものだと思っている。日本のように農家一戸の耕地面積がそれほど多くない中では、低圧の発電所を増やしていくことこそが本来の小規模分散型のエネルギーの仕組み。原発事故がおきてからいろんなことがあり、こういうエネルギーの仕組みにしていこう、食料、自給率、新規就農、耕作放棄地の問題を解決しながら、同時に、脱炭素社会を作ろう、自然エネルギーの比率を上げよう、こういうことに地域から貢献できるのが営農型太陽光発電。農水省、環境省、経産省は、営農型太陽光発電を推進すると言っているが、本当にやる気があるのかと、現場の感覚としては率直に思っている。農水省さんがいろんな補助メニューを用意しているというが、地域でなかなか使えない。現場の声もしっかり聴いてもらいたい。小田原市は、行政として一歩踏み込んで、営農型太陽光発電を重要な基幹電源の一つと位置付けるとの方針を示した。かんばっている自治体もある。重点加速化地域に小田原市も選ばれた。営農型の補助金もある。そういう地域のいろんな動きを拾っていただき、全国農業会議所専務理事の言われる「良い営農型太陽光発電」というものを一つ一つ着実に広げていくことが大切だと思っている。
■意見交換
次いで、意見交換を行いました。
参加議員から「ソーラーシェアリングは少ない、上がっていないという気がしている。ソーラーシェアリングでどのくらい農家が儲かるのか、収入の面をしっかりアピールしていくのが重要。儲かる仕組みを作れば、もっとやると思う。山を切り崩してでもソーラーをやろうとする業者がいまだにある。これは、儲かるからだ。自然破壊するより、耕作放棄地に作った方がいい。そちらの方が儲かる枠組みを作れば、事業者が移ってくる。データセンターがどんどん建っているが、RE100(事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的取組)の会社が多い中、データセンターを建てるときにソーラーシェアリングと結びつけるなど、経産省が前向きにやってもらいたい」(宮川伸衆院議員)との発言がありました。
これに対し、C社代表取締役より「今後、5年10年後に出てくる高効率の太陽光パネルを農地1haに設置した場合の発電量を試算すると年間120万kWhとなる。現在は年間100万kWhの発電電力量。難しいのは、この電気にどのような価値を出すか。我々は農業で使用する電気はkWh当たり30~40円で買っているので、自家消費すれば、何千万円という価値になる。これを企業に買ってもらうとすると、現在15~16円なので、1ha当たり1,500万円の電気の売上が出てくる。最後いくら残るかは、どんな融資を使うかに係わるが、20年くらいの期間で平均すると経常利益で毎年200~300万円。1haでサツマイモ作っても売上は300万円いくか行かないか程度。エネルギーの利益だけで、これを上回る可能性があるのが実態。なぜ、取組が進まないのかと言えば、1haの土地への建設費が1億円かかるため。農家が自分で融資を得てやれるか、そんな金を借りられるのなら、ハウスを建てたり、トラクターを買ったりした方がいい、という話になる。何のためにエネルギー事業をやるのか、農業者にとって、収支が見合う、現実的にできる投資なのか。この辺りは考えていかなければならないポイント」との話がありました。
また、経済産業省からは「再エネを進めていくためには、投資の予見性の確保、事業収益の拡大は非常に大事。他方、FIT/FIP制度では、国民負担の抑制とのバランスの中で再エネの投入拡大を進めていく状況。営農型太陽光発電については、知恵と工夫を凝らしていただき、しっかりと営農を進めながら収益の確保をすることはモデルとしては可能と思っている。それを横展開していくことがなによりも大事。先ほど、全国農業会議所専務理事から話があったとおり、知恵を出さずに事業収益を可能とするというような取組、発電事業者が主体となって、農地で発電が主体となるような取組を助長していくということは、経済産業省としては望むところでは全くない。営農と調和した発電を広げていく。その中で農水省、環境省と連携しながら、知恵を使えば収益が出てくるという良いモデルが市町村単位で出てきているので、これを横展開していくことが大事だと思っている」との発言がありました。
参加議員から「農地との共存という意味では、農地の持つ環境保全や景観とどう調和していくのかという点も大事な視点。小田原のような小規模農家が多い中での取組が実現可能であることがよくわかった。その中で、農地が市街地より離れているところでは、ソーラーシェアリングだけでなくて、インフラの支援が必要ではないか。いろいろな農地、農業地域で進めていく中で、インフラ整備への支援についてどのように考えているのか」(佐々木ナオミ衆院議員)との質問がありました。
環境省から「脱炭素先行地域については、1つの提案について最大50億円の交付金で複数年の事業を支援している。そのメニューの中で、匝瑳市や陸前高田市では、営農型太陽光発電、ソーラーシェアリングの取組を肝の1つとしてやっていただいている。交付金の対象としているのは設備の導入。電柱を建てることは支援の対象とはしていない」との説明がありました。
これを受け、参加議員から「住宅地から離れた農地での取組にとってハードルになるのではないか」(佐々木ナオミ衆院議員)との問題提起がありました。
Oファーム社長から「営農型太陽光発電は、政府からの補助金がないと今の形でやっていくのは難しい。特に低圧の場合。補助金がなくなったら終わりの産業に未来はあるのか、という話になりかねない。接続負担金もものすごく高い。通例、農地と住宅地は離れているので、これを繋げるには負担金の問題が出てくる。全体的なインフラは重要であり必要。うちは、FITはほとんどやっていない。オフサイトPPAでやっている。ソーラーシェアリングの電力は価値が高いものとして高い金額で電力供給契約が締結できる環境が成り立てば、再エネの普及はできると思う。現実に1kWhの金額は12円。FITよりは高いが、これで補助金なしでやっていくのは非常にきつい。脱炭素を本当に進めるという観点で、もう少し補助することができればいいと思う」と発言がありました。
「福島では、震災後、事業者が関東からやって来て、営業をかけて、住宅地や農地にソーラーシェアリングや営農型太陽光発電でないメガソーラーを設置している。もともと農業は儲からないのに、営農型太陽光発電をやるとさらに儲からない。1㏊当たり1億円の投資という話だったが、単純計算で年間500万円返済しなければならない。高齢農家が多い中、20年返済というと、皆さん、まずやらない。その隙間に事業者が入ってくる。悪い営農型太陽光発電がどんどん増えて来る可能性が高い。もう1点、農業委員会に営農型太陽光発電の話が行くと、農業委員は耕作放棄地をどうにかしたいという思いであるが、面倒みきれないので事業者に許可を出してしまうという状況。自分は議員になる前、農業委員に、地域の人たちがやらない営農型太陽光発電についてはいったん待った方がいいとアドバイスしていた。本気で営農型太陽光発電を一生懸命やっているのに2割収量が下がったら、メスが入ってしまう。これでは進まない。どういう形で進められるか。補助金のメニューも大々的にやっていかないとだめだと思う。先ほどオフサイトPPAの話があった。FITでやっていたら、10年後20年後にはなくなってしまう。そこを本気で考えないとソーラーシェアリング、営農型太陽光発電は経営できない。1回でも、農業の収量が減ってしまえば、大打撃。その辺も含め、バックアップの対策を考えないと非常に難しい。地域の問題、本気でやってくれる事業者の問題、これを一体的に考えていかないと難しいと思う」(齋藤裕喜衆院議員)との発言がありました。
資源エネルギー庁より「FIT/FIPの買取期間は太陽光であれば20年ということの課題についてご指摘いただいた。FIT/FIPは通常より高い価格を買い取るということで、収益に関する予見性を作り、投資していただく制度。太陽光発電は、長期安定的な発電と考えている。国民負担を前提に支援していくもので、投資回収が終わった後、すぐに太陽光発電の事業が続かなくなるということでは国民負担のもとでの支援、期待に応えられていないことになる。支援したからには、脱炭素電源として、20年は安定的に発電していただくのは当然。20年後であっても、太陽光パネルの耐用期間はもう少し長いので、可能な限りメンテナンスをしていただき、長期の発電を続けていただきたい。他方、FIT/FIP以外の面では、導入補助金を環境省中心で講じていただいている。これは、長期的な発電を期待するが、導入時の資本費の一部を支援するというもの。支援の仕方については、よく考えながら工夫していきたい」との発言がありました。
参加議員から、「先ほど全国農業会議所専務理事から太陽光発電には2種類しかないという話があった。おっしゃるとおり。残念ながら、日本では様々な要因でメガソーラーが広がって地域の嫌われ者になってしまっている。委員会でも再三申し上げて、危機感をもっている。日本と韓国とアメリカが、再エネが一番広がっていない国。火力発電の依存度が非常に高く、原発への大きな政策転換が進んでしまっている。今が正念場ではないかと立憲民主党として感じている。2つ申し上げたい。1つは環境省の取組である脱炭素先行地域に、千葉市も選んでいただいた。千葉市は4年前倒しで来年にはカーボンニュートラルが実現する。営農型太陽光発電の電気も使って、オフサイトPPAもやった結果、1年間で5億円の税金節約となり、ほかの財源に回せることとなった。脱炭素先行地域に選ばれないと交付金は交付されないので、横展開をどうするか。優良な先行地域だけを応援するのではなく、再エネを広げると税収を生み出されるという観点について環境省からコメントいただきたい。2つ目、ビニールハウスは風景に定着しており、目障りだという人はいない。ビニールハウスの屋根での太陽光発電を公共事業でやるべきではないか。日本中のビニールハウスの面積は4万ha。この屋根を太陽光発電に切り替えると日本の総発電量の3.7%の電力を作ることができる。ハウス栽培の屋根であれば、抵抗感は極めて少ないのではないか。露地も暑さが耐えられない状況下、農業を守るソーラーということを宣伝していくと受け入れられやすいのではないか。コメントいただきたい。質が悪いものは徹底的に排除する、質の良いものは徹底的に応援するため、国が先頭に立ってやるべき」(田嶋要衆院議員)との発言がありました。
環境省から「脱炭素先行地域は、2025年度までに少なくとも100地域について道筋をつけ、2030年までにカーボンニュートラルを達成するという取組。基本的に自治体が提案主体となっており、自治体の責任のもとで進めていただくもの。通常で考えればいい取組が手を上げ、我々の方で選んで、取組を進めていただく。これは100だけで終わらせてはいけない。いかに横展開していくか。公金がなくても取り組める要素をつまびらかにして他の自治体に知らしめていく。重点対策加速化事業を148の自治体にやってもらっているが、これに関しても、どのような形で横展開できるか。環境省としてもしっかりとやっていきたい」との発言がありました。これに対し、参加議員から「脱炭素先行地域に選ばれないところでもお金は出てくるのではないか。これを自治体の皆さんに『見える化』してほしい」(田嶋要衆院議員)との発言がありました。農林水産省からは「施設園芸では電気代、重油代が高騰している。それとうまく調和しながらやっていくことが農業と営農型太陽光発電と両立させていくために必要ではないか。30円で買っている電気代が16円となれば、うまくいく。コストがどうペイするのか、よく見ながら進めていきたい」との発言がありました。
全国農業会議所専務理事から「齋藤議員が言われたように、発電事業者がやると、営農を隠れ蓑にした発電事業ありきの営農型太陽光発電となっている。これ排除するには、農家がちゃんとやるということになるが、投資の問題で限界がある。自治体でうまく展開できるのであれば、ぜひ勉強させていただきたい。ビニールハウスの上での太陽光発電はJA、特に全農でアプローチをしている。深掘りする必要があるとの認識をもっている」との発言がありました。
Oファーム社長から「さきほど放棄地から取り組んだとお話したが、戦術のようなもの。営農型太陽光発電に対する見方がいろいろある中、耕地でやると地域の中で反対がおこる。景観については主観だと思う。放棄地はどう考えても景観が悪い。放棄地を再生させるということを全面に出した方が地元の合意を得るためには良い。私は始めて10年になるが、その間、地域の風景が劇的に変わってきている。あと10年経ったらどうなるか。あまりハレーションが起こらないところから徐々に攻めていくというやり方を取った方がいいと思っている。良い営農型太陽光発電は、ちゃんと農業をやること。ちゃんと農業をやるとは何かというと、今の農水省の制度は単収主義。1反当たりの収量の8割は維持してくださいという話。耕作放棄地でやっているから収量の規制がなくなるので良いではないかと言われるが、地元の農業委員会は頑なに耕作放棄地認定を受け付けなかったという例がある。単収主義で本当にいいのか。収量は取れないが価値の高いものを作っていることがあるかもしれない。農薬、肥料を使わない自然栽培、不耕起栽培は環境に負荷をかけない良い農業である。そういう農業を認めた上で、地域合意で地域計画の中で位置付け、良い農業、良い営農型太陽光発電のレパートリーを増やしていけばもっと増えると思う。」
C社代表取締役より「千葉市の脱炭素先行地域については、私どもはコンソーシアムに入って、この春、営農型太陽光発電の設備を竣工している。遊休農地化はしていなかったが、生産が行われていなかった農地を再生利用して引き受けることができるようになった。課題は、エネルギーをいくらで引き取ってもらえるか。行政は基本的に入札で決めるので、価値があるから高く買うというのも容易ではない。ここが壁になってくる。FIT制度では、農地をつぶした太陽光発電と営農型太陽光発電が同じ価値になってしまう。再生可能エネルギーの価値がうまく評価される社会にしていかないと、悪質な事業がのさばって、農地をつぶして管理が簡単なメガソーラーになってしまう。電気を買う人が「農業をまじめにやらない営農型太陽光発電の電気は買わない」と言えば、悪質な事例は消える。いかに基準を作るかが重要となる。ビニールハウスについて、千葉市は農水省のみどり戦略の交付金をいただき、SDGs対応型施設園芸として、ヒートポンプ100%でのイチゴ、トマトの栽培実証を行っている。千葉くらいであれば、重油ボイラーを使わないで施設園芸ができるようになってきた。千葉にいると農産物輸出の話が出てくるが、重油を炊いて作って、飛行機を飛ばして海外に出していたら、環境負荷で今後はねられる。生産段階でのCOs排出を限りなく減らした上で輸送段階を考慮していかないと日本の農産物の輸出競争力はそがれると思う。そういう意味で、施設園芸のエネルギー転換はどのような形でもやっていく必要がある」との発言がありました。
■終わりに
最後に、田嶋座長より「冒頭申し上げたが、農業関係議員が大勢入っていただいてのソーラーシェアリングの会は今回初めて。いろいろとハードルもあるが、ソーラーシェアリングは、日本が発明した国であり、どうしても必要なものだと確信している。今日ご参加の皆さんを中心に叡智を絞って、試練を乗り越え、ぜひ急拡大ができるようお力をお借りできることを心からお願い申し上げる」との発言がありました。
