立憲民主党は、昨年8月に中国共産党と締結した交流覚書に基づき、2025年3月20日から23日まで岡田克也常任顧問を団長とする代表団を中国に派遣しました。今回の訪問では、中央宣伝部長や中央対外連絡部長とのハイレベル会談をはじめ、共青団幹部との若手交流、南京・宜興での地方視察などを通じて、党間対話の制度化、懸案事項の直接提起、経済協力の展望、そして次世代を担う交流の土台づくりに取り組みました。本報告書では、外交課題から地域協力まで多層的な議論と成果を紹介しています。
立憲民主党代表団中国訪問報告
■目 的■
昨年8月に締結した中国共産党との党間交流の覚書に基づき、岡田克也常任顧問を団長とする訪中団を派遣し、中央対外連絡部との交流、同党要人及び若手指導者との会談、地方視察などを行う。
■派遣先■
北京、南京、宜興
■期 間■
3月20日(祝/木)~23日(日)
■団構成■
岡田克也 常任顧問、衆議院議員
伊藤俊輔 青年局長、衆議院議員
石川香織 ネクスト地方創生・消費者・沖縄北方担当大臣、衆議院議員
梅谷守 拉致問題対策本部事務局長代理、衆議院議員
鈴木賢一 国際局兼政務調査会担当部長
■日 程■
3月20日(木)
08:50-12:00 JL21便にて北京首都空港到着
13:00 金杉憲治大使より現地事情説明(於:駐中国日本大使公邸)
16:00 李書磊中国共産党中央宣伝部長と会談(於:人民大会堂)
18:30 趙世通中国共産党中連部部長助理主催夕食会
21:00 訪中団ぶらさがり、駐北京邦人プレスとの懇談会(於:宿舎)
3月21日(金)
07:15 中国日本商会関係者朝食会(於:宿舎)
09:00 徐暁共青団中央書記処常務書記と懇談(於:共青団)
10:30 劉建超中国共産党中連部長と会談(於:中連部)
訪中団記者会見(於:中連部)
17:12 南京南駅着、移動車内で岡田勝駐上海総領事より現地事情説明①
18:30 張宝娟・江蘇省人大常務委員会副主任と会談・食事会(於:宿舎)
3月22日(土)
08:00 朝食会(岡田勝駐上海総領事より現地事情説明②/於:宿舎)
09:50 南京市ヘルスケアコミュニティ内視察
11:30 南京城壁博物館視察
15:30 「国合」環境保全ハイエンド装備品製造基地視察
16:10 「国合」基地関係者との座談会・交流会
18:30 焜琨・国合基地董事総経理主催夕食会(於:宿舎)
3月23日(日)
12:05-15:50 FM895便で羽田空港着(伊藤議員、石川議員、梅谷議員、随行員)
12:30-16:00 MU719便で中部空港着(岡田議員)
■成 果■
今回の訪中により、立憲民主党は、①中国共産党との関係強化(党間交流の継続)、②日本の懸案事項の直接提起(邦人拘束、水産物輸出、防衛費、北朝鮮非核化、台湾問題)、③若手政治家交流の推進(次世代の日中関係構築)、④日本国内での政治的意義の確立、⑤日中経済関係の促進(製造業・環境技術・高齢者福祉など)という5つの成果を得ることができた。中国共産党との党間交流の深化
〇昨年8月に締結した交流協力の覚書に基づき、政党間対話を継続。
〇習近平主席の側近とされる李書磊中央宣伝部部長をはじめ、中央対外連絡部(劉建超部長)、共青団幹部(徐暁常務書記)などの要職者と直接対話。党間交流の制度化への道を開いた。
日本の対中懸案事項について直接提起
〇邦人拘束問題:裁判が非公開で行われている現状に対し、裁判の透明性確保が必要と強く主張。
〇水産物輸出問題:中国側も調査に関与しているのだから、早期の輸出再開を決定すべきと要求。
〇防衛費問題:軍事費の拡大ではなく、高齢化対策や国民生活の向上に財政を活用すべきと提言。
〇北朝鮮の非核化問題:トランプ大統領任せにせず、日中韓の3カ国による交渉の必要性を提案。
〇台湾問題:台湾有事に関し、多くの邦人がおり、企業も投資していることから重大な関心を持っていると主張。
若手政治家交流の推進
〇訪中団に新旧の青年局長ら若手政治家が参加し、中国共青団幹部と交流。
〇共青団(中国共産主義青年団)との対話を通じ、若手政治家同士の継続的な交流の重要性を確認。
日本国内での政治的意義
〇日中関係改善策として「ハイレベルの政治家交流の活発化」の必要性を強調。
〇近年減少していた日中間の政治家同士の直接交流を復活させ、与党とは異なる対話のチャネルを再構築。
日中経済協力の現状と課題
〇製造業:依然として中国市場は重要な拠点であり、日本企業は競争の激化に対応しながら現地生産を進める必要性を確認。
〇環境技術:日本企業の先進技術を活用し、中国市場での環境保護分野における連携の重要性を再認識。
〇文化産業:日本のアニメや映画が高い人気を誇る一方、中国の映画規制が市場に与える影響が課題として浮上。
■3月20日(木)北京
李書磊中国共産党中央宣伝部長と会談(於:人民大会堂)

岡田克也常任顧問を団長とする代表団は3月20日、人民大会堂で習近平主席側近と言われる中国共産党中央宣伝部の李書磊部長と会談した。予定時間を大幅に超える1時間40分にわたり、政治交流、党間交流、国民感情の改善、貿易課題、裁判の透明性、次世代交流などについて、有意義な議論を行った。
岡田常任顧問は冒頭、現在の日中関係の重要な課題として「ハイレベルの政治家同士の交流をより活発にしなければならない」と指摘した。日中関係に尽力してきた政治家が次々と引退していく中で、「いざという時に信頼関係に基づいてしっかり議論できる関係を築いておくことが大事だ」と強調した。さらに、自身が20年以上にわたり毎年中国を訪れ、中国の指導者と意見交換を重ねてきた経験を踏まえ、「中国との関係を政治家として重要なテーマとして捉える若手の人材を育てていくことが非常に大事だ」と述べた。
李部長は、「岡田先生は私たちの古くからの友人であり、長年にわたり中国との友好的な交流を続けてきた」と評価した。また、「昨年の訪中では、立憲民主党を代表してわが党との交流協力に関する覚書に署名し、両党関係の深化と発展に重要な貢献をされた」と述べた。さらに、今回の会談では「両国の実務協力の推進について意見交換を行いたい。人的・文化交流のさらなるプラットフォームやプロジェクトの構築につながればと思う」と呼びかけた。日本大使館から野野村海太郎公使らが同席した。
会談後、岡田常任顧問は、李部長が東京、京都、奈良、北海道など各地を訪れ、「日本に対して非常に良い印象を持っている。重要な方なので、非常に心強い」と述べた。一方で、日本の世論調査で9割の日本人が中国に対して厳しい感情を抱いているという結果に触れ、日中関係の改善に向けて提案を行ったことを明らかにした。邦人拘束の問題では、裁判が非公開で行われている現状に対し、「きちんと説明することが必要だ」と求めた。日本の水産物輸出問題では、「中国側も調査に関与しているのだから、早期の輸出再開を決定してもらいたい」と指摘した。

趙世通中央対外連絡部部長助理主催夕食会

代表団は、中国共産党側の受け入れ機関である中央対外連絡部(中連部)の趙世通部長助理をはじめ、第二局の幹部や日本処の担当者と、党間交流や日中関係の現状および課題について意見を交わした。
■3月21日(金)北京、南京
劉建超中央対外連絡部部長と会談(於:中連部)

代表団は3月21日、中央対外連絡部の劉建超部長と会談し、日中関係、台湾問題、防衛費問題、北朝鮮の非核化などについて議論した。
劉部長は冒頭、昨年8月に党間交流の覚書を締結して以来、立憲民主党議員との3度の議論を振り返り、「これまで築いてきた基盤の上に相互関係をさらに深め、相互理解を促進し、日中関係のさらなる改善と発展を後押ししたい」と述べた。
岡田常任顧問は、劉部長が昨年の会談で「次世代のために安定した日中関係を残したい」と発言したことに深く感銘を受けたと語り、今回の議論への期待を示した。
劉部長が懸念を示した「台湾有事は日本有事だ」とする日本の一部政治家の発言について、「短絡的だと考えている」と述べた。一方で、「台湾には多くの日本人のビジネスマンや観光客が滞在し、多くの日本企業が投資をしている。台湾有事が発生すれば、日本にとっても重大な関心事にならざるを得ない。そうした状況についても理解してもらいたい」と述べた。
防衛費問題については、日本と中国の双方が高齢化の課題に直面する中で、「軍事費を際限なく増やし、互いに緊張を高めるのではなく、国民のために財政を活用することが望ましいのではないか」と劉部長に呼びかけた。北朝鮮の非核化に関しては、「トランプ大統領任せにするのではなく、北朝鮮の非核化について、日中韓の3カ国で北朝鮮と交渉すべきではないか」と提案した。日本大使館から横地晃首席公使らが同席した。

徐暁共青団中央書記処常務書記と懇談(於:共青団)

日中間の課題解決には、若い世代の交流が不可欠との認識で一致した。また、観光やボランティア活動を通じた異文化理解の促進が重要であることを確認した。さらに、経済協力の観点から、日本産米の輸出促進やAI技術分野での協力が、両国の交流を深める可能性があるとの見解でも一致した。日本大使館から横地晃首席公使らが同席した。
中国日本商会関係者(AGC、三菱商事、みずほ銀行、日中経済協会)朝食会
中国はかつて「世界の工場」として成長を遂げたが、現在はリスクも増大している。それでもAI、EV、インフラなど特定分野では成長が続いている。製造業にとって中国は依然として重要な拠点であり、国際競争力を磨く場でもある。日本のアニメや映画は人気があるが、公開本数が制限されており、市場規制が課題である。
張宝娟・江蘇省人大常務委員会副主任主催夕食会

江蘇省は国内第2位の経済規模で日系企業が多数進出している。日本の38都市が友好関係を築いている。人的往来では、江蘇省からの訪日者が前年比130%増加しており、交流の拡大について意見を交した。岡田駐上海総領事らが同席した。
■3月22日(土)南京、宜興
代表団は3月22日、江蘇省南京市および宜興市を訪問し、高齢者福祉、歴史文化保護、環境技術交流に関する視察を実施した。
午前の視察

南京市の高齢者福祉施設「銀城康養君頤東方」を訪問し、先進的な介護・医療サービス、地域の運営モデルについて視察。施設内の高齢者とも交流し、中国の介護事業の現状や課題について理解を深めた。日中両国がともに高齢化社会に直面する中、相互学習の重要性を改めて認識した。その後、南京城壁博物館を訪れ、中華門城壁に登りながら歴史文化の保護に関する取り組みを確認。歴史ある南京の魅力をより多くの日本人に伝えることの意義を認識した。

午後の視察
宜興市では環境保全装備品製造基地「国合基地」を訪問。企業文化展示ホールや研究開発センターなどを視察し、中国の環境技術分野における最新の進展を確認し、環境保護分野での日中協力の可能性について議論した。特に、日本には資源循環利用、エネルギー効率向上といった分野で優れた技術を有する中小企業が多いものの、国内市場が限られている。こうした企業が中国市場で活躍できるよう支援することは、両国にとって有益であるとの認識を共有した。

今後の展望
今回の視察を通じ、高齢者福祉と環境技術という重要分野における日中協力の可能性を改めて確認することができた。高齢化社会への対応においては、両国の経験やノウハウを共有し、より良い福祉サービスの実現が期待される。また、環境技術の分野では、日本の強みを活かし、中国市場と連携することで、持続可能な社会の構築に貢献できることを再認識した。










